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14 中の人が好き?

 まだ舐められた余韻が心身ともに残っていた。舐められた場所が熱いのだ。心もバクバクして熱いのだ。

 まるでヤケドしたかのようだ。リオンの舌によって。


 それにしても、あんな場所で、あんなことをするなんて……。

 リオンって案外大胆なのかしら。


「リオン、そ、その、ありがとう」

「いえいえ。それよりも大丈夫だった? まだベタついたりしていない?」

「あ、ちょっと口元がベタついて--」

「リオン、今の言葉は嘘よ。ワタシにはわかる。だってオカリナの口元にはシチューかかってなかったもの」

「……ちっ」

「はい見破ったー!」


 ミーファ、許さないわよ。土下座からの足舐め、期待しておくことね。


 こうして私たちの騒がしいブランチは過ぎていった。



--



 私たちはあのあと音楽教室へやってきた。

 今日はオカリナの授業はないため、私は傍観者だ。


 ミーファは打楽器奏者のため打楽器専門の教室へ、シドくんは弦楽器奏者のため、これまたその専門の教室へ入っていった。


 私はもちろん、リオンと同じ吹奏楽専門の教室だ。


「さて、今日はトランペットをしっかりと教えるからね。みんなしっかりと聞いててね」


 リオンが講師らしく子どもたちに言い聞かせる。

 子どもたちはリオンの言葉を真剣に聞いていた。


 しかしそのときである。


「先生はトランペットがすきなの? それともオカリナのことが好きなの?」


 一人の子どもが尋ねたのだ。教室の床に置かれた私を指差しながら。


 なんという危険な質問を……。


 リオンは質問を受けてしどろもどろになっている。


「先生、知ってるんだよー! そのオカリナに全財産をつぎ込んだんだよね!」

「ど、どうしてそれを……」

「ミーファ先生に聞いたの!」


 ミーファ、やってくれたわね。リオンが困惑してるじゃない。


 さて、私が助けたほうがいいかしら。でも声を出したら子どもたちにオモチャにされるかもしれないのよね。うーん。どうしようかしら……。


「皆さん、リオン先生をいじめてはいけません」

「だ、誰?」

「私はオカリナの精霊です」


 謎のオカリナの精霊の声が聞こえて教室がざわざわしだした。

 謎の声、それはもちろん私です。私は声を出してリオンを助けるしかないと思っていました。

 ということで、もうあとには引けない。やりきるわ。オカリナの精霊を。


「うわあ! オカリナの精霊さんだ!」

「すごいすごい! 精霊の声が聞こえたよ!」


 子どもたちはテンションが上がってきたようだ。


「皆さん、リオン先生はオカリナもトランペットも、ほかの楽器も等しく愛しているのですよ。だからリオン先生にどっちが好きなのかという、そんな意地悪な質問をしてはいけません」

「うん、わかった! リオン先生には言わない!」


 ほっ、理解してくれる純粋な子どもたちでよかった。これでリオンは助けられたかしらね。


 私がリオンを見ると、安堵の表情を見せていた。やはり内心ヒヤヒヤだったんだろう。お疲れ様、リオン。私が助けたわよ。


「じゃあオカリナの精霊さんはリオン先生のこと好きなのー?」

「絶対好きだよ! だってリオン先生イケメンだし、今もリオン先生を守ろうとしてたし!」


 子どもって純粋な生き物ですね。

 リオン先生がダメなら次は私に好きかどうかを尋ねてきました。


 でも、この質問に対する答えはすでに決まっている。

 あとはそれを口にするだけ。私の本当の気持ちを。

 出会ってまだわずかだけど、出会ってからの時間とこの答えは関係ない。そう、関係ないの。


「私はリオン先生のこと、大好きですよ」


 そして私は、想いを口にした。


「ほら、やっぱり好きだったんだー!」

「どんなところが好きなの?」


 子どもたちの質問は止まらない。


「やさしいところが好きかな」

「リオン先生やさしいもんねー!」


 こうして音楽教室はまたたく間に恋愛教室へと変貌を遂げた。


 そして最後に子どもが質問した。


「リオン先生はオカリナの精霊さんのことは好きなのですか?」


 それはオカリナの中の人が好きなのかという、私が聞きたくても聞けなかった質問だった。

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