第6話
あれから寿美子とは時折連絡はしていたが、なかなか実行はできなかった。
やはり、こんなやりかたではすぐに警察に捕まってしまうのではないかと不安になる。
しかし、やるしかないと自分に言い聞かせ、明日こそやると決意していても、その日になると決意が揺らいでしまい結局はそのまま何もできずに帰ってきてしまうのだ。
寿美子はたまに病室に来てはご主人のお見舞いに来ている。
しかし、私と寿美子は病院であっても会釈をするだけでいる。
ほかの病院関係者に私と寿美子が親密だと知れないようにだが、余計に寿美子からの無言のプレッシャーになっている。
ある日、夜勤をしているとき、ナースステーションで私一人になる機会があったのだ。
普段はなんだかんだでだれかがいたり、ばたばたとナースが出入りするのだが、この日は
夜勤のナースたちは私以外で払った状態になり、おそらく15分は誰もナースステーションに戻ってこないだろう。
私はいつでも点滴に異物を混入させることができるように、器具はそばに用意してあった。
今やるしかない!
私は、安西のご主人が使っている点滴の在庫が入っている容器の前に立った。
その箱には23個のパックがあった。
私は、その中から一つのパックを手に取りパックに痕跡が残らないように慎重に異物を注入した。
ついにやってしまった。
はじめての作業で時間がかかってしまい、5個のパックにしか注入できなかったが、初めての作業にしては上出来だろう。
パックはもう私が見てもどれが異物入りなのかわからない。
これが安西のご主人の点滴にいつ当たるか、それとも当たらないのかは誰にも予想できない。
この日私は寿美子にメールを打った。
たった一言『お荷物はお届けしておきました』と・・・・・。