しょうちゃんへ
しょうちゃん、ネオンの赤より赤い空があるって、知ってるか。
おばさんは三十を過ぎるまで知らなかった。
しょうちゃんは初め、ケイコという名だった。しょうちゃんのおばあちゃんが、しょうちゃんの名前を推したんだ。
おばあちゃんのことも、おじいちゃんのことも、
しょうちゃんは忘れてしまうだろう。
ぱちりと開いたまなこに掠めた人のかおを、水のように受け止めて、風のように流して、そうしてその手足がひとになったんだ。
でもきっと、思い出せなくても思う日が来る。
過ぎ去った日のなかに、たくさんのかおがあったことを。
しょうちゃん。
空が赤いのは、
ネオンよりもずっと赤く胸に迫るのは、
さよならの意味を、君が知ったからだ。
いまはそばにいない。
でも確かにあったぬくもりが、君に別れを告げている。
さよなら、ばいばい、じゃあね、またね
君のこころのふるさとになって、空が教える。
君を見ていたひとがいると。
どこまでも追いかける夕日のように、君のしあわせを願っていると。