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光のもとでⅠ 最終章 恋のあとさき  作者: 葉野りるは
サイドストーリー
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53 Side Soju 01話

 唯にまんまとしてやられて、俺は母さんたちと一緒に挨拶周りをする羽目になっていた。

「ねぇ、母さん……」

「なぁに? 蒼樹まで神妙な顔しちゃって。似合わないわよ?」

「そうだそうだ。パーティーなんだからもっと楽しそうな顔しろよ」

「や、ちょっと無理だから……」

 そこかしこから視線を浴びて、普通でいられるほど面の皮が厚いわけじゃない。

「あのさ、話の流れからすると、父さんも母さんもずいぶんと前から藤の会にも会長の誕生パーティーにも顔を出してたことになるよね」

「そうね。私は高校に入ってすぐ藤の会に呼ばれたし……」

「俺は大学入ってからだな」

「「それが何?」」

「それが何、じゃなくてさ……。秋斗先輩とは初対面だったの?」

「あぁ……そのことか」

 なんだ、とでも言うかのように父さんが俺を見た。

「確かにチビっ子だった頃の秋斗くんを俺たちは見てはいる。でも、紹介されたわけでも話をしたわけでもないさ。俺と碧は静の客として招かれていたわけだし」

「でも、相手は小さくても秋斗くん。面識がなくても静の友人として私たちの名前や素性は知っていたみたいね」

 父さんと母さんの声が右から入り左へ抜け、左から入っては右へと抜けていく。

「けれど、間違いなく翠葉のバイタル装置の件で高校を訪れたときが初対面よ」

「……食えない……どっちも食えない。知らないの俺と翠葉だけじゃん」

「……まぁ、そうなるな?」

「なるわね?」

 気になることはもうひとつある。

「翠葉に何かあったら……ていう条件――」

「うん、それが何?」

 どこか楽しそうに訊く母さんに視線を返す。

「本当に離婚してくれなんて言ったの?」

「言った。父さんは言ったぞー!」

 いや、威張らなくていいし……。

「でも、その条件……なんか納得できない。翠葉に害が及ぶのが藤宮に関わっているからだとしても、それを選んだのは翠葉だし……元凶かもしれないけど守ってくれている人たちに向かってそれは――」

「わかってるわよ。でもね、譲れないの。だからこその条件よ」

 たまに母さんの言わんとすることがわからないことがある。そんなときは決まって父さんに視線を投げる。説明して、という視線を。

「つまりさ、俺らは翠葉が傷つくことも望んでなければ、静が離婚する事態なんてものも望んでないのさ」

 まさか……。

「だから、何がなんでも守れ……?」

 訊くと、母さんが満足そうににこりと笑んだ。

 そうか、俺の両親ってこういう人たちだったんだ……。

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