4人目のパーティメンバー
ーー現実時間 08:16
ただいまわたしは《NPフィールド》に帰ってきておりまーす。人がいっぱい。まだロトーウルフを倒してない人たちが結構いるんだなあ。
え、なんでNPフィールドかって?
そりゃもちろん、
「有希!こっちこっち!」
幼馴染の有希を迎えに来るため!
メイキングで変えたんだろう髪色はまさかの紫。
そういえば、紫好きだったもんね。
それ以外は現実と同じ、低い背に細い体。真っ白な肌、腰まで届くロングの髪。
うん、有希だね!
「あ…都姫…!おま…たせ…。」
「待ってないよ。逆にお待たせ!とりあえず一番最初の《始まりの草原》はスルーして、《試しの森にいくね。」
「ら…じゃ…。」
VRでも有希のこの喋り方は治らないんだ。
つい2年前まで声が出せない病気にかかってた有希。ようやく治療法が見つかって声が出せるようにはなったけど、長年の声が出せない生活は有希を大人しく内気な性格に変えてしまった。
まぁ、ゲームとなると熱くなる有希のことだから大丈夫でしょ!
「ぷよぷよ…いっぱい。かわい…。」
《始まりの草原》のスライムに和んでる有希が可愛いよ。
あんまり外に出ることがないから、余計に目新しく感じるんだろうな。だけどごめんね。
「有希、先に進むよ?スライムよりもゴブリンの方が経験値いいから。」
「ん。」
こっちを見て頷いた有希に頷き返して《試練の森》へと歩き出す。
試練の森に入ると早速ゴブリンが現れた。
「ゴブッ!」
戦闘態勢に入るゴブリン。しかしその次の瞬間には頭に矢が突き刺さり、霧散した。
「わたし、もうレベル32だからゴブリンは一撃なんだ。ひとまず、結構いいとこまでパワーレベリングしちゃうね?」
「お願い…する…。」
初のVRだから、プレイヤースキルが育たないパワーレベリングは若干不安でもあるけど、自他共に認めるゲーマーな有希なら大丈夫だと思う。わたしたちがフォローもするしね。
1時間ほど狩っていると、ようやく大地と朝陽が合流した。
「よう、有希。こないだ会ったばっかだけどFWOやってたら久々な感じするぜ。FWOでもよろしくな。」
「ん…よろ…しく。」
「ワイははじめましてやな。朝陽や。タンクやっとるから一番世話になると思うわ。よろしゅーな。」
初対面、さらに関西弁の朝陽に警戒心丸出しの有希。わたしの後ろに隠れちゃってるんだけど。
「ほら有希、わたしと大地のパーティメンバーだから。有希の仲間でもあるんだよ?」
内気な有希にはなかなか難しいのかも。ゲームの中ならまだいけるんだけど…そっか、ゲームの中だ。
「有希、ここはゲームだから。わたしと大地もいるし、大丈夫だよ。」
「う…、よろ…し…く。ゆきは…ゆき。」
わたしの後ろにいながらだけど返事をする有希。
「あちゃー、警戒されてもうとるなあ。まぁ、おいおい慣れてったらええと思うわ。」
若干苦笑いしながら朝陽はそう言って背を向け、ゴブリンを探し始めた。
「よし、なら有希をサクッと俺らと同じレベルにしようぜ。」
「わたしたちにも経験値入るから同じにはならないけどね。近づけよう。」
"うっ"って顔をしてる大地をよそに、見つけたゴブリンへ矢を放つ。
お昼を過ぎ、FWO時間で4時になった頃。
「!…エリア…バリア…解除って…言われ…た。」
お昼前まで3人のワンアタックキルで大量にゴブリンを狩り、その後は深部でウルフを狩り続けたわたしたち。ついに有希もレベル20に到達した。
「よし、ならロトーウルフ行くか。さっさとアーチエリアに行って高効率のレベリングやろうぜ。」
「そうやな。まぁレベリングやる前に有希の転職が先やけど。」
「さすが朝陽。わたし忘れちゃってたや。」
「ロトーウルフ…ボス…?」
そっか、わたしたちは知ってても有希は知らないよね。
「そうだよ。ロトーウルフは最初のボス。初見の時はなかなか強かったけど、今じゃそんなに強くないと思うよ。」
「ん。なら…先に…転職。回復…できたら…役に…たてるよ。」
「回復なくても余裕だと思うけど…、そうだね、先に転職しちゃおっか。」
有希の発言を受けて、NPフィールドに戻るわたしたち4人。
道中、ウルフやゴブリンを狩るプレイヤーがいっぱい居た。最前線にいたから、こんなにプレイヤーがいるって知らなかったなあ。
NPフィールドに着いたわたしたちは、ひとまず別行動として動き始めた。
仕事の休憩中に書き進め、投稿です。
ついに3人目の幼馴染、有希が登場しました。
定番な感じのクーデレですが、私の中では有希のキャラはこれしかありませんでした。
後悔も反省もしていません。




