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斜陽のレジスタンス  作者: 藤原守理
第2章「占領下の日本」
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第7話「タスクフォース」

-2031年5月30日-

-小笠原諸島父島洋上空港[14:10]-




 管制塔ビル最上階で戦闘機からの着陸要請や空中警戒機との通信で航空英語が飛び交っている最中、その階下の廊下に1人の男が眉間に皺を寄せていた。








「なにやってんだ…?毎度毎度あいつら…」




 頭には迷彩Ⅱ型作業帽を被って戦闘服の肩章(けんしょう)には日の丸を着けている。この男は日本義勇軍所属の隊員だ。痩せた頬に縁の細いスクウェア状の眼鏡を着用しているためインテリチックな印象を持たせている。

 腕時計を凝視する男の額には時計の針が1つ2つと進むたびにピキッピキッとシワというよりはヒビと言っていものが割れていく。


 そこへ階段を駆け上がる足音が鳴り渡り開閉扉が開くと2人の男女が現れた。




「すいません!!!遅れました!!!」




 2人は現れたと同時にスライディング土下座で男の足元に繰り出した。








栗原(くりはら)三尉!遅れて申し訳ありません!!!」

「津田士長がなぜか海で浮かんでいるのを助けていて遅れました!!!」

「そうです。川本のおかげで助かりました!(川本…てめぇが沈めたんだろうが…)」





 2人は揃って般若になりかけの栗原(くりはら)草介(そうすけ)三等陸尉の目前で土下座で頭を下げながらハキハキと理由を話した。





「…おい、お前ら。たしか教育隊のときに言ったよな…自衛隊には土下座する必要はないって。だから顔上げろ。わかったから」






 栗原の般若顔は理由を聞くなり、にこやかになり穏やかな口調で2人を促した。



((く、栗原一曹…いや今は三尉か!わかるお人だ…))

(川本マジで痛かったからな)

(あれはホントにゴメンって。見たところ栗原三尉、今回も私たちのこと見逃してくれそうだし…いいじゃない)

((ちょろい…))




 この栗原三尉はとても隊内でも有名なお人好しでどのようなしでかしを受けても笑っているため「仏の栗原」と呼ばれていた。教育隊のころから2人は今まで遅刻魔だったようで救難系の話で栗原の同情を誘い、処罰を受けることはなかった。

 ホッとした2人はニヤニヤと顔を上げる。









「津田、川本。もう許さねぇからな。今までのらりくらりやってたこと知ってからなぁ」ニヤッ



 微笑みながら眉間にシワ寄せた栗原が腕を組み仁王立ちしていた。その姿に意表を突かれる2人。



「今度こそはもう許さねぇてめぇら。俺の人が良いところを悪用するとはもう許さん」











 その瞬間、栗原の姿が消えた。



((えっ………?))







((!?))


 次の瞬間、身体の痛みとともに津田と川本は視界がスローモーションになって宙に浮いていた。身体が180度回転したあと頭から廊下にのめり込んだ。




 


(…ぐぇぇっぇ。腰が動かん…何された?)

(かぁはぁぁ。おなかが…おぅっぇ)






「…津田と川本、格闘き章お墨付きのご褒美だ。ありがたく受け取れ」



 そう言って栗原は眼鏡をクイッと上げて部屋に入っていった。


 栗原(くりはら)草介(そうすけ)三等陸尉。御年33歳。元・陸自西部方面普通科連隊、通称”西部連”。身体はレンジャーき章、空挺き章、格闘き章、水路潜入き章を有する軍内有数の狂戦士(バーサーカー)、人格は仏のインテリジェンスウォーリアである。



『仏の顔は三度まで』




 2人が遅刻をごまかそうとした3回目の出来事だった。








 意識が吹っ飛びそうになるも2人は共同で部屋に入った。

 こじんまりとした空間にホワイトボードと茶色い事務用長机があり、7人の隊員がパイプ椅子に腰掛けていた。




「おっ?お2人さんご褒美をもらったそうで」

「羨ましいなぁ俺も隊長の半長靴クラッシュもらいたい…」

「今までごまかしてきたツケが回ってきたのさ」



 評論家のようにコメントを出したのは橋本(はしもと)恭司(きょうじ)二曹、国枝(くにえだ)高和(たかかず)一士、布山(ぬのやま)信吾(しんご)曹長だった。他の席には一色(いっしき)(まもる)海曹長、傷顔の男が黙って佇んでいる。




「…お、遅れ…て…申し…訳ありませ…ん」



 残る痛みにこらえながら津田は答えた。




「いいなぁ、先輩…栗原三尉から激をもらえるなんて裏山けしからんです!」



 身体をクネクネしながら国枝が悶える。



「国枝…コロす…」

「国枝、いい加減その性癖治せ気持ち悪い」



 橋本が顔を引きつって奇妙な踊りをはじめる国枝に諌言した。












「おい、ただでさえ遅れてるんだ。静かにしろ」

「「「はい」」」



 仏の栗原は笑みを浮かべたまま場を正した。津田川本の2人は裏の上官の正体を知っているため尚更襟元を正して冷や汗びっしょりである。




「よし、これから本作戦での我々第4任務部隊(タスクフォース)の処女任務を説明する」






 栗原が部屋の電気を切って暗くなりプロジェクターが起動する。



「今回我々が連合国軍物資の揚陸候補地点を先行偵察することになった。数日前、大型船の寄港が可能である根室港と網走港が連邦軍の爆撃を受けた。港湾設備は全壊。揚陸予定地が潰されてしまった。

本来の作戦では大阪の別動部隊が敵の作戦文書を入手し、それを解析後に北海道の重要港湾に人員と物資を揚陸する予定だった。

そこで上層部が作戦変更を決定し上陸可能な砂浜でLCU(輸送艇1号型)・LCAC(エアクッション艇1号型)を使ってピストン輸送を行うことになった。

これを見てくれ。ここが揚陸先候補の砂浜だ」



 栗原がパソコンを操作して画像を表示させる。




「…あれ?いたって普通の浜じゃないですか?」




 顔の右目に傷跡がある内藤(ないとう)拓海(たくみ)三曹が疑問を示す。




「内藤の言うとおり、見た目は普通だ。しかし、陸軍第1師団司令部によると、ここへ偵察に向かった部隊の消息が相次いで絶たれているとのことだ」





 次の画像に移り変わる。その画像はカメラのブレが激しかったようで不鮮明であるが、林に隠れる緑色の格好をした数人の男の姿が映っていた。



「これは偶然空を飛んでいた陸軍ヘリから撮影された。おそらく、浜周辺の民家に潜む敵部隊が仲間をやったのだろう。連邦軍が我々の裏側に浸透してきているようだ」

「隊長、それってつまり…」

「あぁ、この作戦は『先行偵察任務』も兼ねて『敵部隊の殲滅任務』も含まれている」





 栗原が真剣な顔で言い切る。



「今回の物資揚陸は各地で他国と協力のもと一斉に行う重要な共同作戦である。じっくり敵の規模を把握したいのは山々だが、実行日まで時間がない。よって、荒事専門として編成された我々第4任務部隊の初出動だ。

偵察作戦決行日は明日夕方5時。当日はオーストラリア海軍フリゲート「パース」で現場海域に直行する。

先行偵察班による上陸予定地の安全確認が取れ次第、浜から東に3km陸から1kmの地点からボートに乗って上陸する。

装備について、小火器は23式小銃かHK416ライフルを揃える。内藤は84(カールグスタフ)を、一色はM24狙撃銃を持込め。水泳斥候装備と戦闘装着を着用。あとは個人で好きなものを持ち込んでいい」


 栗原は一言を置いて言う。




「君らはわかっているだろうが、少しでもミスをすれば棺桶に入ることになる。…よって、装備とメンタル面での準備を怠るな」




 そう言い栗原は全員の顔を見渡す。全員さっきと打って変わって真剣な眼差しを栗原に送っている。




「大まかな説明は以上だ。さらに詳しい情報は追って連絡する。…では、作戦に備えてくれ」




 沈黙の中、暗かった部屋に再び電気が灯され皆の心情を照らすかのように明るくなるのだった。


今回も説明だらけになってしまいましたが次回、戦闘シーンに入ります(汗)

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