第2話
私が働くことになるユニット…
通称”さくらユニット”の入居者を、鈴木さんは一人一人丁寧に紹介してくれた。
一人一人に丁寧に挨拶をしていくと、丁寧に挨拶を返してくれる
入居者のお年寄りたちに、緊張も少しだけほぐれた。
そうこうしている間に、時間は10時。
必要最低限の水分を摂ってもらう為に、この時間はお茶やジュースなど
お年寄りそれぞれに好みはもちろん、体調によって適したものを用意するのだ。
私は鈴木さんと一緒に飲み物を用意すると、
「今日は初日ということもあるし、
まずはY本さんとコミュニケーションを取りながら
ゆっくりお茶を飲むのを介助してみて。
慌てなくていいから、ゆっくりお願いしますね」
という鈴木さんの指示のもと、
Y本さんにお茶を飲むのを介助することになった。
「Y本さん、温かいお茶が入りましたよ」
「おろ?」
私が声をかけると、Y本さんは不思議そうな顔をしていたが、
早速飲んでみましょうと続けて声をかけると、
これからお茶を飲むことを分かってくれたようだった。
微笑むY本さんの口にコップを近付け、ゆっくり飲んでもらう。
熱いお茶ではやけどしてしまうので温度はぬるめだ。
「おいしいですか?」
「うん」
「うまいべや」
Y本さんの返事に私が思わず微笑みかけると、
Y本さんもえへへ、と笑ってくれる。
私の、初めての介助。
緊張もとけたお陰で思わず尻尾を振りながら介助している私に、
私の仕事を見守ってくれている鈴木さんもまた微笑んでくれた。