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嫌な予感 Bad feeling

 俺と彼女、梓川綾瀬が出会ったのは人通りの多い横断歩道の真ん中だった。

普通ならばこんなところで会話をしていたら車から大きなクラクションの音が

聞こえるだろうが、そんな事は起こりえない。時間が動くことはないからだ。


 じゃあ俺たちがとった行動とは...簡単だ。

こんなところで立ち止まっていても意味がない。とりあえず場所を移す。

生憎、彼女はこの辺には住んでいないらしく自分の家へと案内することになった。


「ねぇ、朔くん。今思ったんだけどさ...これって家の中とか入れるのかな?」

家へと向かう途中疑問を浮かべた。確かに、そうだ。家には入れなければ

元も子もないだろう。


「そうだな...でも行く途中に色々と試せば良いと思うんだ。

止まってしまっているものに触れながら...みたいな...」

俺は曖昧なことを言ったが、彼女は「それも良いね」とすんなりと受け入れた。


 まず、放置されていた自転車に触れた。

だが自転車は動かない。地面からも離れない。まるで岩のようだ。

先程の横断歩道から自分の家までは大した距離ではないが

様々な移動手段は使えない、ということが立証できた。


「梓川さん、自転車はどうやらこの世界では使えないようだ。

自動車も見ての通り道のど真ん中で停止している。この調子だと電車も

動くはずがないから...歩くしかない」俺は残念そうに呟く。


その反応に相対して梓川さんは明るい声で。

「そっかぁ...それは仕方ないけど...これからどうしたら良いんだろう...」


「世界は停止してしまっている。原因は分からない、けど1人じゃない。

絶対他にも...俺たち以外にも動ける人がいるはずだ。その人達に会う。

それが先決じゃないかな...?」適当に思いついたことを述べる。


「それも...そうだね。この世界に私と、君だけじゃ...

どっかの物語みたいだもんね。うん...」彼女は一瞬何かもの悲しげだった。


「あのさ...梓川さんはこの世界について何か知ってるの?」

出会った時からの疑問をいきなりぶつける。


彼女はじばし沈黙したが...。

「ううん?私は何も知らないよ?ただ...何か嫌な予感が続いてるだけ...」

と言った。...嫌な予感か。こんな世界に残されたらそんな気もしてくる。


「さぁ、着いたよ。俺の家だ」

最近引っ越したばかりの新築の家だが...色が無くなっているため、

暗い印象が襲って来るような恐ろしい雰囲気を醸し出している。


「不気味だけど..入ってみようか...」

俺はそう先導し、家のドアに手をかけた。


その時、手をかけた右手に強い衝撃が走った。


右腕の骨に響き渡る強い衝撃が。その瞬間、ドアが勢いよく開く。


「ドアが...開いた...!?」そう梓川さんが声を発した。

世界が停止していようがドアは開くのか。自転車や自動車、道を歩く人々。

多くの物が停止しているのに。何故だ。さっきから不思議の連続だ。


俺は玄関に梓川さんを待たせ、先に中の様子を伺いに行く。


リビングへ行くためのドアを開くと、そこには真っ赤な景色が広がっていた。


 まるで、赤い絵の具で部屋中を塗ったくったような赤い、赤い

真紅の部屋へとリビングは変貌していた。俺はそれを見て気を失う。


...一瞬の出来事だった。

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