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ゲンジュウ!  作者: ポンタロー
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エピローグ

エピローグ


 ここは特区にある高級マンションの一室。外道の部屋である。

 今、その部屋には外道、ルーン、天夏、ライリンの四人が勢揃いしていた。まあ、全員外道の部屋で暮らしているので当然といえば当然だが。

 外道とドラゴンの戦いにより半ば壊滅状態だった居住エリアだが、天夏のスク水動画を見た豪傑の獅子奮迅の活躍により、何とか大騒ぎになることなく復興を開始した。余談だが、ドラゴンやベルゼブブの死体は、ライリンが新KKR脱退届けと、ユユのための書面(ライリンの、自身の敗北を認める及び、《トック》がブリタニー王国と同盟を結んだことを証明するもの)と共に、テレポートクリスタルを使ってシルヴァリオンに送り返した。

 ちなみに、結局ライリンはシルヴァリオンには戻らず、外道の部屋に居候することとなった。ライリン曰く「恋人なんだから当然じゃ♡」ということらしい。一国の王女がそんなに簡単に居候なんかしていいのか、という意見が居候反対派のルーン及び天夏から出たのだが、ライリンはあっさりと「楽勝じゃ♪」の一言で片付けた。

その時のやりとりがこちら。


(「ライリン、お姫様なんだからシルヴァリオンに帰らなくちゃダメ」

 あの騒動以降、外道にべったりとくっついて我が物顔で居座る(ルーン視点)ライリンに、外道がいない時を見計らって、あからさまにムッとした表情のルーンが言った。

「そうやそうや。部屋だって狭いんやから、アンタを居座らせる余裕なんてないわ」

 ルーンの言葉に天夏が便乗した。こちらもライリンが外道の部屋に来て以降、ムスッとした顔をすることが多い。

「なんじゃ、二人して。外道がいいと言うておるんじゃからよいではないか。それに、部屋にはまだ余裕があるじゃろ。こう見えても、わらわは自分のことは自分でできる良い王女じゃぞ」

「「うっ!」」

 ライリンの言う通りだった。意外なことに、この王女様は家事全般(掃除機や洗濯機、その他諸々の電化製品の使い方は、教えたらあっという間に覚えた)及び身の回りの世話は全て一通りこなすことができた。特に料理の腕は秀逸で、日本料理に似たその手料理を食べた外道、ルーン、天夏の三人は思わず感嘆の息を漏らしたほどだ。

 やや分が悪くなったルーンと天夏だったが、それに怯まず何とか続ける。

「で、でも、お姫様なんだから、帰らないと皆心配する」

「そ、そうやそうや。お姫様なら公務だってあるやろ。ちゃんと周りのことも考えんと」

 二人の言葉を受けたライリンの目が、キランと光った。

「つまり、我が国に迷惑をかけず、ここにいても問題がないことを証明できれば、いてもいいわけじゃな?」

「「うっ!」」

 ルーンと天夏の二人が言葉に詰まる。

「まあ……」

「そうだけど……」

「いいじゃろう。ちょっと待っておれ」

 二人の言質を取ったライリンが、着ているプリーツスカート(こちらの世界で買った)のポケットからコールクリスタルを取り出した。

 そして、慣れた手つきでクリスタルを操作する。しばらくすると、クリスタルから一人の女性の声が響いた。

『ライリン? ど、どうしたの? 何かあったの? はっ! さてはまた暴れすぎて他所様に迷惑かけたんじゃないでしょうね』

 クリスタルから響く女性は明らかに怯えていた。

「案ずるな、母上。何の問題も起こしておらん。今回は報告することがあってかけたのじゃ」

『な、何よ。また請求書? 勘弁してよ。我が国の国庫を空にする気?』

「違う違う。実はわらわ、こっちの世界で恋人ができての。こっちに住むことにした」

『へっ? 恋人? アンタに?』

「うむ!」

『相手は誰? 猛獣? はっ! まさか、異世界の人間を脅して、無理やり手篭めにしたんじゃないでしょうね?』

「違うわ! ちゃんと向こうの方から告白してくれたのじゃ」

『告白? アンタに?』

「うむ!」

『目が悪いのかしら? それとも頭? いや、異世界では女の好みも違うだろうから……』

「は~は~う~え~、聞こえておるぞ」

『ご、ごめんなさい。じゃあ、ずっとそっちにいるの?』

「うむ。一緒に住むことにした」

『やった……じゃない。そ、そう、まあ、そういうことなら仕方ないわね』

「うむ。さすが母上、話が早くて助かる。公務の方じゃが……」

『ああ、心配しなくていいわ。私が全部やっておくから。というか、むしろアンタがいない方が……じゃなかった、大丈夫よ、私に任せなさい』

「うむ、頼むぞ。近いうちに、恋人を連れてそちらに挨拶にい……」

『ああ、別に挨拶にはこなくていいわよ。アンタの選んだ相手だもの。きっと大丈夫でしょ。ああ、孫の顔も見せにこなくていいわ。そっちで楽しく過ごしなさい。じゃあ、私は忙しいからこれで。今日を祝日にしなきゃ……じゃなかった、仕事があるから。オホホホホガチャ!』

 そう言って、コールは切れた。

 コールを終えたライリンは、ゆっくりとルーン及び天夏に目を向ける。

「ふむ。わらわと共に学んだ日本語が大分様になっておるの。やはり、わらわと話す時はずっと日本語で喋れと強要した甲斐があったわ。さて二人とも、ちゃんと今の会話は聞こえていたと思うが、他に何か異論でも?」

「「…………」」

 その言葉に、ルーンと天夏は何も言うことができなかった。)


 というわけで現在に至る。

 ちなみに現在、ルーン、天夏、ライリンの三人は、外道を取り囲むようにして正座している。三人とも、何故呼ばれたのか分からず思案顔をしていた。

「さて、今日集まってもらったのは他でもない」

 三人の真ん中に立った外道が、さも偉そうに腕を組んで言い放つ。

「先日、ユユとやらに言っておいたから大丈夫だとは思うが、ひょっとしたらこれからも新KKRとやらが、ルーンを狙ってシルヴァリオンから刺客を送ってくるかもしれん」

 意外なことに真面目な話題だった。正座した三人が、皆揃って意外そうな顔をする。

「もちろん俺は、俺の可愛い可愛いペットであるルーンを渡す気などサラサラない。ということで、当然、刺客の相手は俺がする」

 その言葉に、ルーンは僅かに頬を染め、他の二人は苦虫を噛み潰したような顔になった。

「ちなみにライリンの話によると、新KKRからやってくる刺客は、まず間違いなく女性だそうだ。どうやら、向こうでは男よりも女の方が圧倒的に強いらしい」

 外道が真剣な表情で続ける。

「というわけで、これからルーンを狙ってきた刺客は、とっ捕まえて、俺の女にすることにした」

「「「はっ?」」」

 その言葉を聞いたルーン、天夏、ライリンの目が点になった。

しかし、外道はそのまま話を続行。

「まあ方法としては、とりあえず俺の圧倒的な強さを刺客に見せ付けた上で、その強さを見た刺客が、素直に俺の言うことに従えばそれで良し。ごねるようなら、銃口を突きつけて無理やり俺の女になれと要求する」

 すでに外道は、完全に妄想の世界へと旅立っており、正座している三人のことなど見てもいない。

「とりあえず巨乳キャラがいないから、次は巨乳キャラの捕獲を目指そうと思う。今いるのは美乳二人に、微乳一人だからな。やはりここは、巨乳の存在が必要ふかけ「こんちわー、げどうっちいるー?」」

 ちょうどその時、玄関のドアが開き、紫電音奈が両手にトランクケースを持って入ってきた。

「んっ、音奈? 何故ここに?」

「いやー、最近負けすぎちゃってさー。今月の家賃払えなくて追い出されちゃった。少しくらい待ってくれたっていいのにさ。あそこの大家さん、ケチなんだよね」

「ほう。で、何故ここに来る?」

「えっ、前に言ったじゃん。家賃払えなくなったら、ここに転がり込むって」

「ああ、あの時張った伏線か。まあいい。しかし、よく入ってこれたな」

「フロントの人に、げどうっちの知り合いですって言って、胸の谷間チラッと見せたら、喜んで鍵開けてくれたよ」

「あ、あのエロ親父め」

「あっ! アンタは、この前の……」

 ずっと睨みつけるように音奈を見ていた天夏が、思い出したように叫んだ。

「どもども~。その節はお世話になりました~」

「な、何で、アンタが兄ちゃんと知り合いなん?」

「そりゃ、あの時はげどうっちにたのまイッタ!」

 笑顔のまま答えていた音奈に、外道のノールック肘打ちが突き刺さる。

「な、何すんの、げどうっち……」

「いや、お前の腹に蠅が止まってたもんでな。つい……」

「つ、ついで済む威力じゃない……」

 音奈が涙目で膝をつく。

「何やら随分と親しそうじゃが、ソトミチ、わらわにも紹介してくれんか?」

 おでこにでっかい怒マークを浮かべたライリンが、顔に笑顔を貼り付けたまま言った。

「ああ、こいつは紫電音奈。俺の奴隷だ」

「ど、奴隷じゃと?」

「ああ。こいつ、下手なくせして無類のギャンブル狂でな。金が払えないってんで、俺の奴隷にしたのさ」

「ほ、ほう。それはそれは……」

 ライリンが何かを堪えるようにして、声を絞り出す。

「奴隷じゃない!」

 そこに先ほどのダメージから回復した音奈が割って入った。

 しかし、外道は全く動じず……

「ああ、間違えた。性奴隷だ」

 と、訂正する。

「せ、性奴隷……」

 それを聞いたライリンがわなわなと震えた。

「ソトミチ、性奴隷って何?」

 しばらく黙っていたルーンが尋ねる。

「性奴隷ってのは、主人に快楽を提供するためだけに生きることを許された存在だ。まあ、簡単に言うとやりマ……」

「性奴隷でもない!」

 そこにまたも音奈がカットイン。

「私はげどうっちの友達。行くとこなくて、しばらく置いてもらおうと思っただけだから。ホントにそんだけだから」

 大きいジェスチャーで必死に事情を説明する音奈だったが、すでに外道を除く三人の視線は、限りなく冷たいものとなっていた。

「でも、家賃は体で払うんだろ?」

「ちっがー……」

「もし違うなら、俺にはお前をここに置く理由がなくなるわけだが」

「…………」

 そこで音奈が沈黙。すでに沈黙していた、ルーン、天夏、ライリンの三人に加えて、この場にいる五人の内、四人がすでに何も言葉を発することができなくなっていた。

「まあ、来ちまったもんはしょうがない。お前は俺の性奴隷(またの名をお手軽性欲○理器)として、ここに置くことにしよう。あれっ? てことは、すでに巨乳キャラと年上キャラを同時に手に入れたことになるわけか? いや、参ったな~。何か一気にモテ期が来ちまったよ。これで、ようやく俺もリア充の仲間入りか~。ここまでホント長かったよな~。おっと、いかんいかん。現状で満足していては、これ以上の成長は望めん。こうなったら俺は、世界一人数の多いハーレムルートの主人公を目指すことにしよう」

 それを聞いた、ルーン、天夏、ライリン、音奈の四人がゆっくりと立ち上がった。天夏は指をボキボキと鳴らし、ライリンは口の中で小さく魔法を詠唱。音奈は持ってきたトランクケースを持ち上げ、ルーンはクルクルパの仕草で自前のポコハンを取り出す。

 だが、そんなことには全く気づかぬ外道。自分の計画に完全に酔いしれ、一人で喋り続けている。

「とりあえず、次はヤンデレを捕獲するか。あの手のタイプも俺のハーレムに加えておきたいしな。おい、みんなつぎボキ、ドガ、ゴキ、ポコ!」

 そして、外道が言い切るよりも早く、怒りに燃える四人の会心の一撃が、その顔面に炸裂した。


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