氷菓の過去 2
その日の翌日から氷菓は学校に来ず、一週間が過ぎていた。
俺達は帰りの挨拶が済み、騒がしさが増した教室で話していた。
『氷菓の事が心配だ』
『僕も、心配だよ。もう、一週間も学校に来てないからな』
『よし、氷菓の家に行こう!』
『まあ、心配だからな』
その時、種子が俺達の所に来た。
『お兄ちゃん…帰ろ?』
『種子、俺達は今から氷菓の所に行って来るんだけど、一緒に来るか?』
種子は頷き
『うん氷菓、最近学校来てないから…少し心配だから、一緒に行きたい。私なんかが行っても何も出来ないと思うけど一緒に行っていい?』
『ああ、いいよ、種子』
『じゃあ行くか』
俺達は氷菓の家に行く事にした。
そして、氷菓の家に着き、
俺はインターホンを鳴らした。
ピンポーン
『はい、どちら様ですか?』
氷菓の母親だった。
『氷菓の事が心配で来たのですが』
『ああ、あなた達ね、入って鍵空いてるから』
『ありがとうございます』
と、俺達は家に入っていった。
『氷菓は自分の部屋にいるわ』
氷菓の母親は、丁寧に教えてくれた。
俺達は氷菓の部屋の前に行き、剣がドアをノックした。
『おーい氷菓ー』
少し遅れて返事が返ってきた。
『誰?』
『僕だ』
『ケン?』
『ああ、業と種子もいるぞ』
『うん、今開けるね』
と、氷菓はドアを開けて出てきた。
『いいよ、入って』
と、言われ俺達は部屋に入った。
氷菓はベッドに腰をかけ、剣は椅子に座り、俺と種子は座布団の上に座った。
『どうしたの?』
『氷菓、大丈夫か?』
『うん、私は大丈夫』
『なんで学校に来ないんだ?』
『うん、明日から行こうと思ってた』
種子は、心配そうに
『氷菓…もう大丈夫なの?』
氷菓は種子に対し、強がって見せた。
『大丈夫だよ、私はいつでも元気だよ』
『うん、なら…よかった』
翌日になり、氷菓もちゃんと学校に来た。
そして、今日は、授業中に決闘が出来る時間がある日だった。
初等部では月に1回しかその授業が無い。中等部からは週1になり、自由に決闘が出来るようになるが初等部では許可されていないので、貴重な時間である。
氷菓の番が回って来た。
氷菓は暗い顔をしていた。
そして、立会いの先生が決闘の開始を告げた。
『決闘開始!』
相手の男子生徒と氷菓に体力ゲージが設定された。
みんなの歓声が上がった。
だが、氷菓は動かなかった。いつもなら、氷菓は氷の剣を使い、速攻しているのだが、様子がおかしかった。
男子生徒は困惑しながらも、
『そっちが来ないならこっちからいくぞ!衝撃波!』
氷菓の方に衝撃波が、向かっていったが、氷菓はその場から動かず、吹っ飛んでいった。
体力ゲージが3割減ったが、氷菓は何もしようとしなかった。
『氷菓!どうしたんだ!』
その言葉に氷菓が呟いたのが聞こえた。
『もう、戦えないもし戦えばまた、あんな事が起こる…』
男子生徒はさらに困惑していたが、
『早く攻撃してこいよ!衝撃波!』
さらに衝撃波が氷菓を襲ったが氷菓は吹っ飛んだだけで、何もしなかった。
『氷の無敵なる勝利者の名はどうしたんだ!折角、お前と戦えるのに!俺と本気で勝負しろ!』
氷菓はただ、やられた後に立ち上がるだけで何もしなかった。
『本気を出せよ!ふざけんなよ!衝撃波!』
氷菓の体力ゲージはゼロとなり、男子生徒のパーフェクト勝ちとなった。
そして、氷菓は俺達の所に戻ってきた。
『どうしたんだ?氷菓』
『うん、なんでも無い』
と、泣きそうな声で言った。
そして氷菓は自分の席に座ったとたん、泣き出した。
『ううっあんな事はもう起こしたく無いのにどうしてこんな授業があるの?もう、嫌だよぅ』
『まだ気にしていたのか…』
氷菓は泣き続けていた。
それから、2週間が経った。
氷菓は学校に来ていたが、元気が無かった。
そして、学校が休みの日にあの公園に呼び出され、種子と公園に向ったら剣と氷菓がいた。
『来たみたいだな』
『うん、来たみたいだね』
氷菓はとても嬉しそうにしていた。
『どうしたんだ?いきなり呼び出して』
『ちょっと見せたい物があってね』
『見せたい物って何…?』
『まあ、見ていてくれ2人で考えたんだ』
『じゃあ』
と、氷菓は弓を手に持った。
『弓?』
そして氷菓は
『氷の矢』
氷の矢を放ち、先にある木に付けた的の真ん中を射抜いた。
『どう?』
『すごくいいんじゃ無いか?』
『うん、すごい…私の葉の使い手よりすごい』
『これは僕と氷菓で考えたんだ。まあ、弓が上手く作れ無かったからわざわざ買ったんだが』
『すごいなこんな事を考えるとはな』
『氷菓には元々すごい集中力があるんだ。弓矢ならその集中力を最大限に生かす事が出来る。それで狙う事に意識を集中させれば、感情に動かされる事が無いと言うことを思いついたんだ』
『これが、氷菓に合った武器と言うことか』
『まあ、そうだな』
『もう、申請はしたのか?』
『ああ、もう、申請は済んでいる』
刃物など、武器となる物は市役所に申請すれば、持ち歩く事が可能になるのだ。申請せずに持ち歩くと、銃刀法違反で捕まってしまう。申請する人には様々な人がいる。元々戦闘用の能力を持たない人が護身用として持つ人、自分の能力を生かす為に持つ人などがいる。氷菓は後者だろう。
『全部ケンのおかげだよ。ケンがいなかったら私弓なんて使って無かったもん』
『いや、そんな事は無い使えるようになったのは氷菓なんだからな』
氷菓はいつもの調子に戻ってきていた。
そしてさらに、2週間が経ち、また、決闘の授業が始まった。
氷菓の番が来た。
『大丈夫、私ならやれる』
と、弓を手にした。
『オレの力見せてやるぜ!絶対王者だった、氷の絶対なる勝利者!』
立会いの先生が開始を告げた。
『では、準備はいいですね?決闘開始!』
両者に体力ゲージが設定され、歓声が上がった。
そして先手を仕掛けたのは相手だった。
『行くぜ!鳥の力 鷹!』
相手の姿が変化し、鷹となり、飛び上がった。
そのまま、急降下し、氷菓に突撃して行ったが、氷菓は氷の剣の二刀流の時のような素早い身のこなしで素早くかわし、距離をとり
『氷の矢』
氷の矢を放ったが、見切られかわされてしまった。
『あんなに練習したのになんで?私は本当は弱いって事?氷の剣を使わないと勝てないって事?でも私はもう、使わないって決めたのだからこの弓でみんなの想いが篭ったこの弓で!』
氷菓はくじけず、相手の方に集中した。
また、さっきのように突撃して来た。
『今度こそ絶対に当てる集中…集中…』
相手が3メートル先まで迫って来たその時
『今なら!氷の矢!』
その弓は相手に命中した。
『くぅ』
と、相手は地に落ちた。
体力ゲージが2割減った。
そして氷菓はそのまま
『氷の矢』
さらに相手に命中し、2割減らし、さらに放ち、体力ゲージの残りがギリギリとなっていた。あと少しの所で飛び上がり、空中で旋回した。氷菓を惑わす為の作戦だろう。
『これじゃあ狙え無いだろう』
『でも、私は!ここで当てる!』
『無理だな!今回は新しい戦法でかっこ良く勝ちたいだろうが俺が仕留めてやる!』
『それでも!私は、当てるんだ!私に弓を使うように勧めてくれた剣や、ゴウちゃんと、種子の為に!』
氷菓は氷の矢を作り出し構えた。
『当てる…今なら!氷の矢』
氷の矢は真っ直ぐと飛んで行き、空中を旋回している相手に命中した。
『うぐっここまでか…』
相手はそのまま地に落ち、元に戻った。
相手の体力ゲージがゼロになり、氷菓はパーフェクト勝ちをした。
『やったーやったよ!ケン!ゴウちゃん!』と、氷菓は跳び上がり、とてもよろこんでいた。
『氷菓に弓を使わせて正解だったな』
『そうだな。だが、やっぱり氷の剣を使った方がずっと強いと思った。そのうちに氷の剣を使う時があると思う』
『ああ、そうだな』
あれから後は負ける時もあったが、勝つ方が多かった。だが少しずつ、弓の精度が上がって来ていた。