おれがしんだ日 【二日目】
おれが死んだ翌日、さっそくニュースに事故が取り上げられていた。電化製品って触らなくても意外と点けられるものなんだな。ニュースでは、トラックの運転手と、おれの証明写真が取り上げられていた。
あの写真のおれの顔、やっぱり何度見ても気持ちが悪い。もっといい写真にしとけばよかった。
「おれ、本当に死んだんだなぁ」
まるで他人事のように呟く。誰にも聞こえないのだから、もはや遠慮することなんてない。そもそもおれのことなんて誰も見てなかったんだろうけどな。学校にいたころでも、周りの奴らは、おれじゃなくておれの周りや背後しか見てなかったわけだし。
あれ。それじゃあ、おれ、ずっと前から死んでたんじゃねぇの。おれの記憶は、いったいどこまでが生きてたころで、どこからが死んでからなのか、分かりゃしねぇ。本当、つまんないものだったよなぁ、おれの人生。
ふと、手元を見ると、もはやおれの手は完全に透けて、煤けた畳が見えた。消えるとすれば、まずは手足から、らしい。おれの足は、既に膝まで消えてしまっている。このペースだと、もって二日といったところだろうか。もったいぶらずに今消えてもいいのに。
消えるまでの間は何をしよう。何もせずに待つのも構わないが、それだと何だかつまらない。他の奴らに悪戯しようにも、触れられないのだから出来ない。
そこまで考えて、急に孤独が襲ってきた。今まで、感じたことのない漠然とした不安と焦燥感だ。いったい、何が寂しいというのだろう。おれという人間は、別に寂しがり屋でもなんでもなかったはずだ。それに、おれの存在を誰かに覚えていてもらいたいなんて考えたことがない。
だって、おれは一人だったじゃないか。
いつだって、どこだって。
おれ自身も、一人を望んでいたじゃないか。
煩わしい人間関係に、うんざりだ、って。
だから、おれを呼ぶ声も、おれを誘う手も、おれに近寄る足も
全部、遠ざけた。
勘弁してくれって、耳をふさいだ。
瞳を閉じた。
しゃがみこんだ。
それなのに。
なんだ、これ。