よくある転生
「ん…んん……、?」
目が覚めると、俺は見知らぬ草原に横たわっていた。
ここはどこだ?たしか俺は___
思い出すのは、特になんでもない日常。だが、横断歩道を渡るところで記憶が途切れている。
まさか
「…」
……いや、兎も角だ。これは噂の異世界転生では!?チート!ハーレム!きっとそうに違いない!
ステータスとか見られるのか?お決まりの流れだろう。確認せねば。意識を集中させる。ステータス、ステータス…出でよ、ステータス!
ピロン
出た!
だが、数字ばかりでよく分からない。これ…高い…のか?低いのか…?高い…はずだよな?
その場でジャンプしてみる。特に高く飛べる訳でもない。走ってみる。すぐ疲れた。早くもない。おかしいな…
攻撃力が上がってるとかか?木に近づき、拳を…
「いっった!!!」
痛い。普通に痛い。なんだこれ。今のところ何も……
その時、犬の唸り声が聞こえた。声の方を見ると、いつの間にか野犬…?狼…?が、数体居る。明らかに臨戦態勢だ。俺を狙ってる。マズイ、これは絶対マズイ!
きっとアレだ、魔法とかが使えるんだ!手に意識を集中させる。おかしい。何も出ない。狼は飛びかからんとする姿勢でにじり寄ってくる。出ろ、頼む、何か出てくれ……!
何も出ない。そんな__
キャイン!
突然。狼が悲鳴を上げた。見ると、少女が立っている。銀色の髪をツインテールにして、マントを羽織っている様に見える。手には、氷で出来た剣。それも、次の瞬間にはダイヤモンドダストの様に消えていた。狼たちが逃げていく
少女が振り返る。不思議な模様の目だ。如何にもファンタジーって感じ。
「あ、ありがとう!それ魔法?すげー!あ、そう俺ケンジ!君は…」
「あっち」
「え?」
「あっち真っ直ぐ行けば、街に出るよ」
「あ、そうなの?ありがと…」
それだけ言って、少女は止める間もなく去っていってしまった。……え?今の仲間になる展開じゃないの??
「……いっちゃった…」
マジで1人取り残された。仕方が無いので言われた方向に歩く。また狼にでも襲われたら、俺じゃ対処できないと分かってしまったから。
暫く歩いて、無事に街に着いた。最初の街と言うには大きくて、活気に溢れている。
ここで1つ、問題が浮かび上がった。
「…何言ってるんだ?」
聞き慣れない言葉ばかりが飛び交う。外国に来たみたいだ。そんな…さっきの少女は言葉が通じたのに?なんでだ?
いや、まだわからない。通じるに賭けるしかない!
「あの、すみません」
「▙▒▚▒▞▛▒▚?▙▒▚▒?……▙▒▚▒▞▛▒!▙▒▚▒▞▛▒▚!」
ぜんっぜん何言ってるか分かんない。詰んだ。そう絶望していた時、1人の男性が近づいてきた。何やら小さなバッジを押し付けられる。
「?あ、ありがとうございます……」
バッジを光に透かして見る。丸いバッジだ。外周がくるんとした矢印で、十字の線が中に入っていて、真ん中には羽の様なモチーフが彫られている。
「おい、兄ちゃん。聞こえるか?」
急に声が耳に飛び込んできた。驚いてそちらを見ると、俺が声をかけた町人の声だった。
声が…聞こえる…!というか分かる…!
「き、聞こえます!」
「そのバッジやるよ。お前みたいな奴の為のもんだからな」
バッジを手渡してくれた町人が言った。その言葉に首を傾げる
「お前転生者だろう。このバッジは翻訳機だ」
「てんせ…え?他にも居るんですか?」
「他にもも何も」
最初に話しかけた町人が笑った
「この世界にゃわんさか居るな」
「ははは」
「えぇ…」
【悲報】転生者、レアでは無い
「転生者の拠点に連れてってやるよ。この街にもあるんだ」
「拠点?」
「あぁ。行けば分かるさ。さ、こっちだ。着いてきな」
「は、はい!」
バッジをくれた町人に案内され、街の中を歩く。バッジは胸元に付けた。町人の話していることが分かる。それだけでなんだか安心する。
暫く歩くと、小さな村役場のような建物に着いた。
「ここだ。じゃあ頑張れよ坊主」
「あ、はい。ありがとうございました」
異世界転生したと思ったら、今のところ特に何の能力もなくて、このバッジが無いと話してることすら分からなくて。けど、やっぱり非日常ってワクワクする…!期待と不安を胸に、俺は扉を…開けた
「ようこそ、転生者委員会へ!」




