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1.隊長任命


 ――これは、罪を犯した魔法使いたちの黙示録である。


 二百年前。

 この世界には、大魔女と呼ばれる七人の魔女がいた。

 

 人々は彼女たちを信仰し、そして恐れた。

 やがて訪れたのは、美しく、あまりにも残酷な処刑。

 その伝説は今なお、大魔女たちが明確な悪であった証として大陸中に語り継がれている。


 そして現代――大魔法都市エーテル。


 国立騎士団本部の会議室で、一人の青年が青ざめた顔で資料を睨みつけていた。


「ベルンハルト。名誉なことだろう? 

 夢の師団の隊長になれるんだぞ」


 声をかけられた青年――ベルンハルト・エチルエーテルは、手の中の資料を今にも握り潰しそうな勢いで震わせていた。


「確かに、部隊一つを任されるのは名誉です。ですが、それは守護部隊の隊長になった場合の話でしょう」


 ベルンハルトは目の前の長身の男を睨み、一度資料に視線を落としてから、露骨に顔をしかめた。


 「第二十師団を押しつけられるのは、不名誉にも程があります。」


「ははは! まあ、それはそうだな!」


 目の前の男――アーノルドは、豪快に笑った。


「でも、やってみるに越したことはないぞ。

俺だって第十九師団を任された時は、いつ死ぬかわからんと思っていたが、こうして今もぴんぴんしてる。」


 明るく笑うアーノルドとは対照的に、ベルンハルトの表情は晴れない。


 第二十師団。

 それは騎士団の中でも、最も死に近い師団だった。

 危険な任務ばかりを押しつけられ、隊員が欠けても補充はままならない。

 誰も入りたがらない、使い捨て同然の部隊。


 「それが嫌なんですよ……。なんでわざわざ、そんな“いつ死ぬかわからない部隊”に配属されなきゃならないんですか。」


「それはまあ、この前の害魔獣遠征で全滅したからだな!」


 「最悪すぎる……。

どうしてそんな平然としていられるんですか……。」


 ベルンハルトが力なく呟くと、アーノルドは少しだけ困ったように肩をすくめた。


「特撰部隊に所属している以上、いつ命を落としてもおかしくはない。

 騎士として死ぬのは、ある意味で名誉でもあるからな」


 そう言うアーノルドは、第十九師団を率いる隊長だった。

 ベルンハルトより遥かに強く、遥かに場数を踏んだ男だ。

 頑強な身体、底知れない魔術、揺るがない精神力。

 ベルンハルトから見ても、完成された騎士そのものだった。


 「まあ、とにかく今は隊員集めからだ。これ、頑張って作っておいたんだからな。」


 アーノルドはそう言って、ベルンハルトに大量の紙束を押しつけた。


 一番上には、でかでかとこう書かれている。


 ――特撰部隊 第二十師団 新規隊員募集。


 「……恥ずかしすぎるんですが。」


 「会議室は面接に使っていいぞ!頑張れ。」


 「……俺、まだやるって言ってませんよ?」


 「俺だって、可愛い直属の部下が死地に向かうのは嫌だ。だが――」


 アーノルドが、そこで一度言葉を切る。


「これはジョン氏からの直接命令だ」


 その名を聞いた瞬間、ベルンハルトの表情が強張った。


 手の中の資料が、さらに深く歪む。


 ジョン。

 何年も会っていない父の名だった。


 士官学校にいた頃は、考える暇もなかった。

 自分には“ない”エーテルと向き合い、苦しみ続けるだけで精一杯だったからだ。


「お父上の命令だ、ベルンハルト・エチルエーテル。

俺も良い人材がいれば回してやる。

 すまないが、これから次の害魔獣遠征の会議があるんだ。」


 アーノルドはそう言って踵を返す。


 重たい木の扉が、ばたんと閉まった。

 静まり返った会議室に、その音だけがやけに大きく響いた。


 ベルンハルトはひとり残される。

 手の中には、隊員募集の紙束。


 死にたくなければ、誰かを集めるしかない。

 全滅した部隊を、もう一度立て直すために。

はじめまして、塞水さいみーと申します。

 この度は「魔法使い達の黙示録」をお読み頂き本当にありがとうございます…!

 こんなに真面目に物語を描くのは初めてで、とても緊張しながら投稿させて貰っております。

 これからは、日曜日、水曜日に更新させて頂く予定です。

 何卒よろしくお願いいたします。

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