失われていく気力・意力・意欲
第1部 第3章 第16話 『失われていく気力・意力・意欲』
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そう思いつつ、2週間程度が経ったある日。
ひょんなことから、何故周囲の人間の反応が180度変わったのかが判明する。
先輩社員の一人が僕を取り巻く状況を教えてくれた。
1.現場からの風当たりがいきなり強くなったのは、労働組合の会合で本社社長が『他の中途採用が辞めるのは構わないが、なにがあっても新卒のユキはやめさせるな。』といったような内容の発言をしたことで、現場からは大批判。攻撃する格好の餌となってしまった。
2.内勤が敵視してくるのは、1のできごとを告げ口したやつがいる。+本社が新卒採用である僕を要所要所特別扱いするため。
僕自身にも身に覚えがあったが、本社に行くだけで他のハイヤーのドライバーを使わせたりして、「恨みを買いそうだな。」と思えることは多少あった。
実際「そんなの電車で行かせろよ。」という陰口も聞いてしまったりもした。そのように、それらが要因となり妬みや、更には被害妄想的に自分のポジションが奪われるかもしれない、という警戒が生まれた結果、恐らく僕を追い出したかったのだろう。
3.労働組合は意味を成しておらず、頼っても意味がない。
実際最初に上司と話した際、労働組合の人間も呼ばれたが、守ってくれるそぶりはなかった。わからないと言いつつ、肩を持ったのは管理職側の方だった。
4.更に、1のことから飛躍して癌患者の先輩社員は、まさかの僕の履歴書のコピーを渡されており、それを周りの現場の人間に見せびらかしていたらしい。
5.1と4に続いて、新卒採用の嘘にまみれた求人情報を僕がいない時に調べては、それを鵜呑みにし周囲と共有して、相当に妬まれていた。
――感無量。
本当に感慨無量である。
この時点で既にもうおなかいっぱいだ。
でも、残念ながらまだまだ続く。
私が書き出したメモを見ると、凡そ中間地点だ。――
期待せずに迎えた12月。
正社員採用?そんなの嘘に決まってたじゃん。知ってた。
次は2月らしい。
毎度おなじみの口頭で突発的に、まるでちょっとしたお使いでも頼むかのように言ってくるので、到底録音などできない。
え?研修が終わる?そんなのも嘘に決まってんだろJK。
そして更に約2週間たった2020年12月の中頃。
「あ!この子ね!履歴書の子でしょ?」と、馬鹿が口を滑らせたことで履歴書を見せて回っていたことが確信に変わった。
実家の住所から志望動機や経歴まで、全部書いてある。
≪とんでもないことである。≫
本当に今は2020年なのだろうか?
それと同時に、本当なのかハッタリなのか判断がつかなかったが、
「この会社には反社と繋がっている人間が数人いる。面倒事を起こしたら覚悟しておけよ?お前の実家の住所までわかってるんだからな。」
と、恫喝された。
だが、散々学生時代、両親。特に母親には心労をかけさせてきた。
だから、恐らくハッタリなのだろうが、それでも万が一のことが起こって欲しくなかった。
突発的な出来事なので録音などしているはずもなく、
こんなことで警察に相談したとして、『物的証拠が無ければ』まず何もしてくれないだろう。
結果として労基署へ行こう、という選択肢も消えてしまった。
労基署自体もやはり当てになるのかわからないし、当時ネットで調べたら会社から報復を食らうことも多いらしく、管理職がスマホのデータを消してくるような会社では、本当に何をされるかわかったものではない。
そんなころ、唐突に福祉課にも1カ月研修に行くように言われる。
あまり詳細には書けないが、身体・知的障害者、つまり特別支援学校の送迎だ。
今はもう12月中旬。しかしお察しの通り、冬休みであり仕事がないのだ。
本当にどこまでも適当な会社である。
なので、1月の2週目から行くことになった。
こっちは、朝7時から17時終わりだった。まあ、それで11時間労働で普通にアウトなのだが。
――ちなみに、この頃は普通に在宅時間が6時間を切っており、しかも手取り15万。本当に何のために生きているのか分からなかったし、
この頃から軽く殺してやりたい、というほどの怒りがあった。
正社員採用も不安定。金銭も不安定。恐らくこの先の管理職云々も当てにならないだろう。
そしてコロナのおかげで逃げ場もない。
実家に泣きつくわけにもいかないし、こんな離れてまで心労をかけるわけにはいかない……。
誰にも相談できないし、全ての先行きが不透明で、それでいて業務時間は長く、面接なども受ける余裕などとてもない。
この時点ですでに精神的には割と追い込まれていた。――
そんな葛藤をしながらも、お客さんの方には気に入られていた。
職場では間違った言葉遣いや礼儀作法を教えてくる無能50代がケチをつけて来ていたが、実際他の中途の中でも僕だけが客から名前を覚えてもらったり、不愛想だと言われている客と談笑していたり、勿論奢ってはいない。客側もまだ若いガキに気を使ってくださっている。そうと分かりつつも、本当に僕の素行が悪いのなら、そういう扱いにはならない筈である。
仕事内容そのものも別に何か間違えたり、トラブルを起こすわけでもなく。
完璧でパーフェクトとは言わないが、まあまあ、最低限はこなしていた筈である。
そしてある日、一度だけ自社の会長を乗せる仕事をした。
この人だけは唯一、僕が就職する前に聞いた「半年から1年現場を知ったら内勤に入ればいいから。」という言葉を言った。
「あなたの部下はそうは思っていないようですよ」と、内心では思いつつ、『じゃあ、あれは人集めの為の採用官の嘘なんじゃなくて、下にまでその指示が届いていないのか』と理解した。
そんなこんなで1月の2週目になった。学校が再開されたので、各路線に添乗することとなった。
私にとっては子供だろうと大人だろうと、客は客なので大した違いはなかったが、やはり身体・知的障害があって自身で移動ができない子もいるため、その点での対応が違うので、そこは覚えた。
しかし、道そのものは既に大分走っていて把握していたので、そういう意味ではとりわけ新しく覚えることは殆どなかった。
そしてもう一つ。福祉には新卒の先輩が何人かおり、その一人が運行管理かなにかの資格の勉強をしていて、入社前の説明ではそういった資格取得も支援してくれる、という建前があったので、ダメもとで聞いてみたが、やはり却下された。
どうも内勤に欲しいのは若い女だけらしい。
そして約1カ月が過ぎ、2月になり再度ハイヤーに戻る。
福祉で「労働条件通知書っていうのがあるから、雇用でもめてるなら一旦見せてもらった方がいい」というアドバイスをもらって、ハイヤーに戻っていの一番に聞くも、
「ウチにはないない」と断言され、「いや、それは法律で決まっているはずだ」と問いただすと、再びスマホのデータを消された。
どんどんと状況が悪化して、こんな話がたった1文で片付いてしまうのだから本当に恐ろしい。
え?正社員採用?嘘だよ。次は来月。勿論研修も+2カ月な!
≪マジで意味わからん。≫
この頃には教官とは到底言えない癌の先輩はかなり体調を崩しており、もはや指導できるようなレベルではなかった。
その為、あろうことか研修中の筈の僕が早朝と夜の仕事の合間に、後から入ってきた中途採用者に道を教える、というわけのわからないことをしていた。
更に、この研修生がわざわざ「僕の教え方が上手い。癌先輩の教え方は下手だ」みたいなことを色んな人に言ってしまったせいで、余計に僕への当たりが強くなった。
そして謎に2月からの給料は32万円になった。
10、11、12、1。分かりやすく書いたが、これがハイヤーに移ってからの月で、4カ月が何を意味する数字なのかは全く分からない。
まあ、意味なんてないのだろう。
そして3月も同じだが、週1くらいで絡んできていた癌先輩が、遂に投薬の影響なのか記憶が完全に錯乱しており、指示したことを指示してないと、認知症老人顔負けの触れ回り、僕と、もう一人は、散々な悪評を流布された。
結果、1人は前の会社のツテを使ってすぐやめた。
癌先輩は元々記憶力が良かったらしく、そういった評価と、僕への妬みで、爪弾きレベルは数段アップ。
終いには、「お前は俺達よりも年下なんだから『俺達を気持ちよくしろ(意味深)』」とまで言われる始末。
散々よいしょしてやっただろうに。
そして、内勤はこれ見よがしにニヤニヤしながら、『ユキ君はコミュニケーション能力が低いから、ハイヤーに居ても仕事を与えられない。だから福祉へ移ったほうがいい』。この馬鹿はほとんど隠すような遠回しな言い方はしなかったので、ほぼほぼそのままのことを言われ、
『事務所を一歩出たらこっちがいくら挨拶してもガン無視するゴミが何を言ってるんだ』と思いつつも、
僕も完全に頑張る気など失せてしまい、福祉に行くことにした。
福祉に行けば、7時から17時+土日祝休みなので、ハイヤーよりは転職しやすいだろう……という考えだ。
それに福祉の方が、『現場』の中途者はまともな会社を定年退職した人が多く、いろんな意味で楽だったからだ。
福祉では、現場はまあまあ普通だった。勿論癖のある人はいるが、妬み云々が現場からはほとんど全くなかったので、『普段は』普通に仕事ができた。
人によっては僕の方が至ってない所だらけだ。
僕はまだ24歳で、相手は自分の3倍近い年齢が多いのだから、当然と言えば当然のことである。
ちなみにハイヤーはバブル世代が主力だ。
しかし、福祉も内勤はバブル世代だ。
そしてバブル世代の社会のゴミカスが集まっているのだから、言わずもがなだろう。
まさに『クズ・オブ・クズ』である。
バカ息子、バカ娘が本当に沢山いた。自慢話は全部パッパ、マッマの親自慢。自分自身の大した話はなんにもない。本当にありがとうございました。
――私は1996年生まれで、学校の教科書も僕の世代から脱ゆとりで改訂されていったはずなので、学校にもよると思うが、殺伐とした幼少期だったこともあり、あまりゆとり世代という感覚はない。
というか、ゆとりど真ん中世代とは相性が悪い。――
ハイヤーでの最後の思い出は、これだ。
それまで温厚そうに見えた一人の先輩からのお言葉だ。
「色々会社に対してや、ここでも色々な事があったと思うし、それに対していろいろと思うところもあると思うんだ?でもな?ユキ君。『立つ鳥跡を濁さず』っていうだろ?意味わかるよな?みんな君の住所知ってるだから。」
最後の最後まで素晴らしい心遣いに、涙を通り越して血の涙が出そうだった。
そんな素晴らしい思い出を胸に、
2021年4月。福祉に移った。
移る際に、労働条件通知書を見せるよう要求したが、ここでもまさかの無し。
正確にはあるが、担当業務の労働条件通知書はない、というわけわからん状態だった。
今度は、福祉に移ったからまた正社員採用が半年伸びる、と言われた。
――もう何でもありである。――
念のために言っておくが、僕は研修にせよ試用期間にせよ、書面はおろか、口頭の返事でも一度たりとも了承などしたことはない。
仕事内容に関しては、前述の通り『現場はまとも』で、運転手よりも添乗員の方が足りていなかったので、添乗ばかりしていた。
後、単純に若いやつにデカい車を運転させたくなかったんだろう。
現場はまともだが内勤は壊滅的で、気に入らない人間をどんどんパワハラで追い込んでやめさせていくので、Excelでグラフや表が作れずに手書きで作成していた。
運航を管理する人間が一時期不在だったらしい、というのも嘘か本当か分からないが耳にした。
更に置いてあるパソコンも安物買いの銭失いを体現するような、逆にコスパの悪い使えないゴミPC。
数回手伝ったりしたが、僕程度の入力速度(大体10分間で800~1,000文字。PC使う人なら普通かやや遅い)についてこれずに、20秒後くらいに入力され、逆に僕が無能扱いされた。
少し見栄を張るなら、私は読むのが遅いので恐らく今のように自分の考えた文章を打っているような時の方が多少は早い。
それでも上限は10分間1,000文字程度だ。
※日本語は、子音+母音で一文字。更にそれが漢字変換されて、縮んでいくので一概に一文字=1キーとは言えないのだが、調べてみると大体、英語で考えても平均スピードのようだ。
ただ、普段内勤に近づくことは基本ないので、今は気にする必要はない。
日頃付き合う中で変な奴は3人。
1人目は、現場を取り仕切ってるBBA。とにかく口が悪く常時パワハラ発言のオンパレードで被害妄想の塊。近年拡大解釈されたジェンダー平等のせいで頻繁に出没し職場環境を引っ掻き回す典型的な50代の有害ババアだ。
ただ、口が悪いのは僕自身も口が悪く、なによりうちの母親も口が悪いので僕にとっては殆どダメージはない。
それでも、ここは職場なのでそういう線引きも出来てなければ、いろんな意味で浅はかだと思うが。
※日本では海外と違ってストレートな表現で口が悪い人間は基本的には、『浅はかな人間』だとか、『稚拙な人間』そういう評価になります。
2人目は、バブル。女々しくて、とにかく陰口を流布するのが大好き。
3人目は、ゆとり。『やってるふり』だけは非常にうまく、無能バブルと非常に相性がいい。年上にはへいこらし、唯一の年下である僕にはやたら強気で嫌な仕事を押し付けたり、悪口を流布したりされた。
一生懸命やってるのにババアからパワハラを受けている、というスタンスの癖に、年下には同じことをやってくるという、ツイフェミみたいなダブスタっぷり。(女性の名誉のためにこいつは男。)
そしてこの3人に共通しているのは、上にへいこら。下に厳しい。こういう連中ってなんでこうも行動パターンが一緒なんですかね?
マニュアルでもあるんですか?
ちなみに3人ともバカ息子、バカ娘。
――語弊の無い様に保険を……。
私が言いたいのは、ゆとり底辺と、バブル底辺の結託はマジで組織破壊レベルでやばい、と言ってるだけです。
やはり多少なりとも苦労している氷河期やZ世代の方が、下限値の平均は、まだ安全圏な人が多いと思います。――
1と2は、ある程度は回避可能。が、3が唯一の懸念点。
というのも、添乗時、僕が地図を開いていなかったことが気に食わなかったらしく、「ユキ君はいつも喋ってばかりで、全然地図を使わなくてやる気がない」と触れ回っていたそうだ。
そもそも、ここまでの時点で主要な道路は覚えているし、たまたま学校の場所が送迎していた会社と近かったので、わざわざ地図を開く必要もなかった。
てか、ナビがあるんだからナビ見ろよ。ナビ。
人には偉そうなことを言っておきながら、自分は下道は間違えるわ、高速も間違えるわ、備品は無くすわ、終いには給油まで1人でできないわ、で本当に無能だった。
まあ、僕にも運転手とくっちゃべっていて『やってるフリをしない協調性の無さ』という見方もあるのかもしれない。
だが、僕に言わせてみれば、入ってきたばかりで既に業務に差し支えないのなら、次はやはり現場と打ち解けることであろう。
楽しいからお喋りしているのではなく、いざとなった時に頼れるように雑談で円滑な関係を築いているだけだ。
僕よりも10歳近くも年上なのに、『営業の9割は雑談』という言葉を知らんのか?
僕らは、人間という感情や異なる価値観を持つ生き物であって、ロボットではないのだから。
勿論、会話したくない人にしつこく話しかけるのはご法度だ。
といったところで、表層的な思考で生きている馬鹿にはそんなの分かるわけもない。
だが、わざわざ頼んでもないのに悪口を流布してくるというのは、人が今やってる仕事を真正面からぶっ壊す行為であり、本当に厄介極まりない業務妨害も同然の行為である。
――ちなみに私は業務中、特に運転中に話しかけられるのは大嫌いだった。――
だが、私にとってはそんなことはどうでもいい。
心配なのはやはり『金』である……。
しかし無慈悲にも4月下旬、25万円に給料が下がっていたのだ。
ちなみに中途は、タクシーからにせよハイヤーからにせよ、ちゃんと保証給が継続されていた。
何故か、僕だけが……以下略。
――いや、本当にね。
もう、この時点でもう中東のテロ集団も裸足で逃げ出すような惨い拷問をしてやりたいと思ってたよね。うん。
当たり前でしょ。――
だが、もはや諦めていて何も言わなかった。一応25万なら最低賃金ギリギリセーフか、1~2万アウトくらいだ。
ぶっちゃけコンビニバイトでも変わらないよね。それやったら経歴命の日本だと次に転職できなくなるけど。
そんなこんなで、現場とは仲良くなりつつも、試採用+会社嫌悪を引きずりつつも、休憩時間に求人を見たりしながら夏になった。
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