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天凪祓  作者: ZoRvATH


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社会人生活の始まり

第1部 第3章 『2度目の絶望』

第14話 『社会人生活の始まり』


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


2020年3月上旬。


遂に東京都江戸川区南小岩に引っ越した。


社宅ルーレットで場所が決まった。南小岩・一之江・船橋の三カ所から割り振られ、他の同期は固まっていたのに、南小岩は一室だけで僕だけだった。


社宅といっても昔ながらの団地の棟ではなく、会社で借り上げている部屋というか、そういう所だ。


両親が引っ越しを手伝ってくれ、フラワーロードという商店街の出口の交差点で、母親が涙ながらに車で地元に帰った光景は今も目に焼き付いている。


ここまで挫折を繰り返してきたが、ようやく自立することができたのだ。


俗にいう底辺職ではあるが、今までが今までなのだから仕方がない。


僕は僕なりに自分自身のことを頑張ってきたつもりだが、それが社会的に評価される頑張りではなかったのは分かっている。


底辺職でも『それを受け入れて頑張る。』そう決めた。


そして、ここで『タクシー』と『ハイヤー』について解説しておくことにする。


『タクシー』は恐らく読者の大半の方はご存じであろう。『料金を払って目的地まで乗せてもらえる公共の車』である。


日本のタクシーは海外に比べてぼったくりレベルに高い、というのは事実だが、業務内容は海外と大差ない。


続いて『ハイヤー』。こっちは僕はアニメの影響などもあり元々知っていたが、意外と日本人でも知らない人やタクシーと混同している人がちらほらいる。また、海外には基本存在しない。


そういう理由で説明を挟んでいる。


ハイヤーとは、『日本独自の予約制の高級車サービス』である。タクシーと似ているが、街で手を挙げて止めることはできず、事前予約が必要。


主に企業役員、政治家、海外からのVIPなどが利用し、黒塗りの高級車クラウンやレクサスなどが一般的である。


つまりハイヤーは、日本における『ドライバー付き専用車サービス』であり、欧米の『chauffeur service』や『black car service』に近い存在だ。


この会社では、タクシーかハイヤーを選べたので、僕はハイヤーを選んだ。


何故か?そもそも東京なんて知らないし、興味がないし、土地勘も何もない。おまけに道も複雑で狭い。


東京で知っている道?東名高速道路から入ってきて、レインボーブリッジを目指して首都高を走り、そのうち首都高速湾岸線に入ってディズニーランドに行く。その間東京タワーが見える。湾岸だと北の方にスカイツリーが見える。


そして日本人なら忘れてはいけない。≪皇居が真ん中にある。≫


以上。


ぶっちゃけ東京駅の位置も、東京タワーや皇居が何区なのかも知らなかった。


唯一『葛飾区亀有』は知っている。こちら『葛飾区亀有』公園前派出所とタイトルで地名を言っているからな。


小岩?南小岩?どこだそこは。知らん。


バラエティー番組は愚か、アニメ以外でテレビを見ないので地名そのものがほとんど分からない。


港区、品川区、銀座、渋谷、新宿、池袋、浅草、六本木、表参道、お台場。そのくらいだ。


ちなみに『お台場』とは、江戸時代末期。ペリー来航をきっかけに外国船の襲来を脅威に感じるようになった徳川幕府が、江戸を守るために築いた砲台を安直に「台場」と呼ぶようになったのがその呼び名の始まりである。


そして幕府直轄の地や由来のものには「御」を付けて呼ぶ習慣があったことから、「台場」の頭に「お」を付けて「お台場」と呼ぶようになった。ちなみに御茶ノ水などもこちらは漢字が残っているが同じ理由らしい。


そんな場所で歩道にいる人間を探しながら運転するなど自殺行為である。


僕はそのような分野において、そこまで器用ではないということを自覚している。


それに、会社説明ではカーナビを使っていいと言っていたし、専門学校で接遇関連の資格も取っているので、そういう言葉遣いや所作などは寧ろハイヤーの方が多少は役に立つであろう、という考えもあった。


一応入社前の説明では今後の展望は次の通りである。


まず、『タクシー』と『ハイヤー』の部門に分かれている。


研修期間は最短3カ月、最長6カ月で、まず最初の3カ月で二種免を取り、その後、タクシーとハイヤーにそれぞれ分かれて3カ月研修を行う、という話だ。


その後6カ月~1年ドライバーをし、現場を知った後内勤に移る。


ずっとドライバーをするわけではないから安心してほしい。


給料は研修中は19万2千円。研修が終わったら32万円というものだった。


また、3年間在籍すると500株の自社株がもらえる、というのを全て口頭で説明を受けた。


とはいえ、コロナが蔓延し、3月末に1週間程度の入社前研修はしたが、入社式はなくなり、結局本格的な研修が始まったのは5月の下旬からだった。


それまでの間、とりあえず僕は自転車でウロウロすることにした。


まずは、近くの中川と荒川に架かる橋から見えるスカイツリーに、思い付きで行くことにした。


橋から見えるし、スマホで見ると片道8kmなのでママチャリではあるが、まあ、行けるだろう。


片道大体1時間20分くらいで行けた。


言い忘れていたが、高校時代、真冬に家出して夜の19時に家を出て、翌朝5時頃に72km離れた地点まで移動した実績があった。それも都会の平坦な道ではなく田舎の半山道だ。なので全然余裕だ。


田舎と違って平坦な道で、結構分かりやすく行けた。中には入らなかったが、こんなもんなんだなーと思った。


というのも、東京はほんの一区画が栄えていて、そこ以外はよく分からない3~8階建ての、半世紀くらい前に建てられた建物……というような場所が非常に多い。


こち亀の印象で東京に行ったら、そこまで古くはないが、かといっていろんなアニメに出てくるほど高層ビルやマンションばかりでもない、ということは分かった。


続いて、東京ディズニーランドに行った。


こちらは12kmで、片道約3時間だ。特に行きは向かい風が強く全然進めなくて本当にそのくらいかかった。


「Tokyo Disneyland IS CURRENTLY CLOSED ―― 東京ディズニーランドは現在休園しております」と、舞浜駅からランドに行く途中の橋に鎖でバリケードを作り、その中央に看板が立っていた。


でも、モノレールは走っており、運転席?のディズニーのスタッフの衣装だろうか?白い制服を着たお姉さんは、明らかに僕しかいないのに手を振ってくれていた。


そして、ディズニーランドへ車で行く人はみんな目にする『TOKYO DISNEY RESORT』と書かれた小さな滝のようなモニュメントのところでおにぎりを食べて帰った。


東京に行って一番残念だったのは、折角南小岩という比較的近い所に住んだのに、肝心の東京ディズニーランドの年間パスポートが廃止されてしまったことだ。


――また、私はこの頃辺りから写真を撮るのが好きになり、先ほどの休園中のディズニーの写真や、今では考えられない浅草の仲見世のほとんどの店でシャッターが閉まっており、シャッター街のごとくになっていた、というある意味レアな写真を撮った。――


そして念願のすずさんと会った。僕が唯一直接会ったネトフレだ。


ゲームこそ一緒にプレイはしていないが、チャットはちょくちょくしているし、電話も数か月に一度はしている。


コロナ禍なので屋外の皇居に行くことにした。他には『油そば春日亭』、『天下一品』、『とんこつラーメン 博多風龍』に行ったりもした。


――春日亭には散々通っているときにスタンプカードを作らなかったのでどれくらい行ったのかは定かではないが、恐らく『とんこつラーメン 博多風龍』と並んでかなり通った。


私のおすすめは特盛を頼んで、まずは一口。しっかり混ぜて一口。にんにくをたっぷりと入れて3口。最後にマヨネーズを中間くらいで一周半かけてよく混ぜて平らげる……。


『う~ん。デブの味ッ♪』


※卵を付けたい人は、普通盛りくらいで普通にいただいた方がいいと個人的に思う。


ちなみに一番最初に春日亭に行ったのは、この時ではなく、そこから約1年前の2019年に就活で東京に来た時だった。正直一番最初はそこまででもなかった。


私の中で春日亭が覚醒したのは、私が『味変』を覚えてからだ。そして味変を愉しむには特盛以下では足りないのだ。


私はほとんど一貫して『春日亭 秋葉原店』で食べていた。一度だけ池袋にある本店で食べたが、それは随分と後の話である。――


また、同期は南小岩に居なかったが、先輩社員が隣室におり、ひょんなことから話すようになり、研修が始まるよりも先に先輩と仲良くなっていた。


そんな感じで東京へ引っ越してから約2カ月半が経過した、2020年5月下旬から研修が再開された。


給料は4月から支払われており、前述の通り19万2千円だ。


2020年における東京都の最低賃金(時給)は『1,013円』。


192,000円だと、192,000÷1,013=189.53……で、一カ月に約190時間働ける。


そして土日休み(祝日出勤)のため、毎月20~23日勤務になる。20日は2月のみなので22日を中央値とし、190時間を22日で割ると、一日あたり8.64時間になる。


研修期間中は朝8時から、昼一時間休憩で、17時退社のため、労働時間は8時間である。


その為、この賃金で問題ない。


ちなみに、『総支給額』が192,000円であり、税金や社会保障料など諸々引かれると、約15万円が手元に残る。これがいわゆる『手取り額』と言われるものだ。


東京で1カ月一人暮らしするのに、水道光熱費(1.5)+食費(3)+通信費(1)+生活必需品(1)を合わせて、6.5万円だ。


そこに社宅の家賃が2万円入って、8.5万円。但し、家賃は半年後には補助が切れて7.5万円になる。


贅沢しなければ、毎月5~6万円は貯蓄できる。


手持ちが全くないので、とりあえず15万円を貯めて家に置いておきたい。有事の際に使うためのものだ。


その次は、口座に30万円、50万円と貯めていけたらいい。


同期はほとんどが東京都民、あるいは千葉県民、埼玉県民だ。


そこから2カ月で、『東京タクシーセンターの地理試験』と『第二種運転免許』を取得する為に、勉強を始めた。


前述の通りそもそも東京23区すら言えない。区分けがどのあたりなのかも全然分かっていない。


そんな奴が下道の主要道路や交差点名まで覚えなくてはならないのだ。


底辺職の空気に合わせる為、職場では比較的ヘラヘラして周りに合わせていたが、2カ月間家に帰ってからは毎晩4時間程度勉強し、週末も実家で勉強していた。


暗記。暗記。暗記。暗記。!!


何しろ私は単純な暗記が致命的に苦手なのだ。


そんな中、下の階に住んでいる鬱で休職していた先輩社員が、わざわざ研修が始まってから夜中の3時ごろに大声で絶叫する、という奇行を繰り返していて、ほとんど毎晩起こされていた。


1カ月くらい続き、下の階と同期のお隣さんに相談するも、「本気で床を蹴ってみれば?いいと思うよ」と真面目に言われたので、最終的に本気で加減無しの蹴りを入れたりもしたが、全く通じず……。


仕方ないので、それは会社に言って静かにしてもらった。


ちなみに何となく叫びのタイミングがFF14のIDのタイミングに似てるなーと思っていたら、本当にFF14をやって叫んでいたらしい。


僕は蒼天の数か月前から、すずさんとは別の古いネトフレに誘われて初めて、War Thunderと並んで唯一プレイしている2タイトルのうちの一つになっていた。


ここ2年くらいはプレイしていないが、今はロングフォールのミームが流行っているらしい。


今でも出勤時はほとんどFF14の音楽を聴いている。『RISE』が大好きだ。祖堅さんイイ、すごくイイ…!


まあ、僕は蒼天補正がかなり強い。


さて……。


そんな感じで7月になった。


まず、東京タクシーセンターの地理試験である。『今まで新卒は全員一発合格している。』というクソみたいなプレッシャーをかけられていたこともあり、ある意味旅行業務取扱管理者試験の時よりも変なプレッシャーがあった。


普段ヘラヘラを装っていた僕も流石に当日は緊張していた。


コロナなので、2人ペアで1時間枠ずつ試験を受けに行ったが、ペアになった男がマジで最悪。


試験前に僕に「ユキ君勉強した?」と聞いてきて、「毎日3~4時間くらいはやってたよ。」というと……。


「マジで!!?あんなの勉強する人いるんだwww」


「普通あのくらい分かるでしょwww」


ちなみにこの馬鹿は文京区出身で、僕が東京に行って一番最初に出会った『バカ息子一号』だ。


そりゃ、文京区で生まれ育ってんならそうだろうよ!!


と内心ぶん殴ってやりたい気分だったが、流石に殴る訳にはいかないので無視した。


結果的には試験は普通に受かった。そして二種免の方も取得できた。


その辺りから変な同期に絡まれだすことになる。


所謂『意識高い系』とでも言うのだろうか?いろんな奴に話しかけてあしらわれた結果、最終的に僕に行きついたらしい。


「他の奴等は全然だめだ。僕達でこの会社を変えていこうな!」


と、訳の分からない事を言っていた。


非常に迷惑である。


ここをどこか一流企業と勘違いしているのだろうか?普通に底辺職なんだが?


そんな素晴らしい自尊心をお持ちな孤高なお方なのであれば、なんでこんなゴミ溜めみたいな場所に居るのか意味が分からない。


7月も下旬だが、だんだんと不穏な空気になり始める。


教官は新卒の先輩社員が務めているのだが、なんというか、茶番である。


教官を束ねている人物が僕の7歳くらい年上で、他の人からは慕われていたのだが、僕はこの人の思考が変に読め過ぎてしまって、形容しがたい嫌悪感を抱いていた。


簡潔に言うと、僕の隣人が先輩であることを知らず、その上話のネタ的にも近い教官側の先輩とばかり話していたため、『ゴマすり』だと判断され。実際自分自身が休憩時間常に管理職と話してゴマすりをしていたので、あからさまに警戒されたのだ。


しかし、自分はそれをうまく隠して、対応してやっている。


みたいな思考をしていないと出てこない、その場その場の釘を刺すような、重箱の隅をつつくような、彼の言動に気持ち悪さを感じていた。


さらに、僕と同い年の新卒先輩社員に、教官という立場を利用して薄い本のごとく手を出した、という噂が先輩社員間で流れているのを聞いてしまい。


余計に気持ち悪いな、と思ってしまった。


それでも、そんなことは口にも態度にも出さず、茶番に合わせてやっていた。


一番イラっとしたのは、研修で間違った二重敬語だらけの敬語を教えていて、採点時、僕ばかりここぞとばかりに指摘され、軽い人格否定的な嫌味も言われまくったが、特に歯向かったりはしなかった。


僕にとって仕事は『ただお金を稼ぐため。』であり、『今この瞬間も給料が発生している。』という思考の僕は、別にそんなことで一々腹を立てたりはしなかった。


この教官はタクシーの教官なのでもうじきおさらばするのだ。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


次回!第1部 第3章 第15話

『腐ったやつら』 DON'T MISS IT!!!

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