後日譚
リラ=ロクス=ソルス
国中に祝福された結婚式の中で、国王アンゴールが生前退位を宣言。姉姫アイテールを親王とし、アルドールを国王とする勅書が発令された。リラは王妃としての業務をこなす一方、王立瘴気研究所の初代所長に就任。信頼のおける知己を共同研究員として招聘し、聖女の浄化と霊銀の効力を併用する方法を確立した。より少ない資源で瘴疽を癒す新薬が開発され、以降、人々が瘴気の恐怖に脅かされることはなくなった。
アルドール=シレクス=ロクス=ソルス
結婚式当日に戴冠も行われるという前代未聞の一日を経て、ロクス・ソルス史上最年少の王となる。自ら魔物討伐に乗り出す勇敢な姿勢から「剣王」と称され、民の信頼と尊敬を勝ち得て善政を敷いた。対外的にもステラ・ミラ聖王国、テラ・メリタ共和国の両国に対して大陸史上類を見ない良好さを保ったが、「自らの最大の功績は何か」という問いには「素晴らしい女性と出会い、愛を育んだこと」と答えたという。
ベルム=ノドゥス
アルドールが国王となった後もしばらく剣術指南役および護衛を務めていたが、腰痛が悪化。本人はまだやれると主張したが、王命により外務大臣の補佐役となる。豪放な性格と威勢の良さ、そして旅先で得た人脈によって外交を支え、後年、正式に外務大臣に任命された。
モディ=ノドゥス
無事に男児を出産した後も騎士団には復帰せず、実家の商会業務の一部委託を受けるという形で開業。気風の良さと半ば強引な交渉術によって安定した経営を行なった。商売仲間の間では彼女の恐妻ぶりがよく話題になるも、その深い愛情を知る者達はみな、夫のベルムを羨ましがったという。
無事に産まれた息子はフォルティスと名付けられ、幼少から類まれな剣の才を発揮。十歳で剣王から一本をとる。後に、遊歴の途中で立ち寄ったアクア・ヴィテの異変にいち早く気付き、「魔人」の存在を確認。数年の歳月をかけた旅路の果てに討伐を果たす。その功績から、後の世に「剣聖」として名を残した。
トリステス=ミニス=テルアリス
王室直轄の組織である暗部の長官となる。高い手腕を発揮して大陸中に情報網を張りめぐらせ、ステラ・ミラの没落貴族達による暗殺計画や、フォルミード商会の過激派による暴動作戦などを未然に防ぐ。功績に対する褒賞として何を希望するか問われた際、「親王殿下の結婚式が見たい」と答えて国王を困らせた。
ラエティティア
ロクス・ソルス王立瘴気研究所の客員研究員となり、リラと共に研究に没頭する日々を送る。新薬の開発に成功した段階で正式にロクス・ソルスの国籍を取得。何かと理由をつけては王宮に顔を出し、親友との時間を満喫した。マエロルをはじめ交際を申し込んでくる男は多かったが、全員がことごとく玉砕している。
ナトゥラ=オーウォ
テラ・メリタ共和国の商会をまとめあげ、オーウォ商会の商圏をさらに拡大。リラの招聘に応じてロクス・ソルス王立瘴気研究所との連携を進める。隙あらばリラを奪おうと様々に策略を巡らすも、その度に二人の熱愛ぶりを見せつけられる結果に終わり、傷心のまま独身を貫いた。
テスタ=カヌス
ステラ・ミラで将軍の地位にあるギオと旧知の仲であったことから、両騎士団の協力関係の確立に大きく貢献。その功績を評価した両国の王から故国に帰還する道も示されたが、自らの剣はアルドール国王に捧げたとして固辞した。それを聞いた刀匠グラディウスから剣を贈られた際には、少年のように喜んだ。
ヴィア
恋人ウィルトゥスとの結婚後、新たな法王として選出された。各地に聖堂を設け、複数人の聖女を常駐させるなどの様々な改革に着手。聖騎士団は既存の僧兵団と組み合わせる形とし、軍部とは完全に切り離した。なお、新生聖騎士団の初代団長には、桃熊聖騎士団の団長だったムスケルを任命した。
ネニア=レメディウム
ロクス・ソルス王立瘴気研究所が設立されてすぐ、魔晶石の安定供給のために魔物狩り組織との提携を提言。王国騎士団との連携を推し進め、相互に利を得られる体制を確立させた。また、オーウォ商会と共同して、微細な霊銀を回収、再利用する経路を構築し、霊銀の流通安定にも一役を買った。
プドル=ウォルプタス
新たな法王の命によって執務室自体が取り壊されると、あらゆる場所から財宝が続々と発見された。その総額は、各地に地方聖堂を建設し、聖女と聖騎士を複数名ずつ配置する準備を整えてもなお余るほどだったという。特別に強固な牢に繋がれていたが、何者かが食事に仕込んだ毒によって非業の死を遂げた。
インユリア
裁判にかけられるも、過去の聖女としての働きによって情状酌量を受け、地方聖堂に配属される。しばらくは真面目に励んでいたが、次第に権力者や資産家との淫蕩な生活に身をやつし始める。ほどなく、関係する女達が結託し、彼女を糾弾。逮捕を免れようと逃げた先の山中で魔物に襲われ、無残な最期を迎えた。
ファルサ=ストゥルティ
裁判において過去の数々の暴挙も取り沙汰され、全てを失って投獄される。ストゥルティ家自体も取り潰しとなり、血に連なる者は皆、路頭に迷って悲惨な結末を迎えた。後年、ストゥルティ家には莫大な隠し財産があったという噂が流れ、それを信じた者達の手引きで脱獄。その後の彼女の行方を知る者はいない。
あとがき
最後まで読んでくださった方、ブックマークをしてくださった方、評価を入れてくださった方、この作品に触れてくださった全ての方に深く感謝申し上げます。ありがとうございました。