僕は生まれつき、“記憶が持てない特殊な病気で産まれてきたのだけど?”
“僕は生まれつき、“記憶が持てない特殊な病気で産まれてきた。”
だから、何を信じて生きて行けばいいのか27歳になった今も
よく分からないんだ!
ただ、僕は街でよく声をかけられるんだよ。
『俺が君の親父だよ!』
『いやいや違う! ボクがキミのお父さんだ!』
『務くん、最近連絡くれないじゃない? 彼女の私は凄く寂しいわ!』
『ワタシは貴方のお母さんよ。』
『あの豪邸の息子か? オレが本当の兄貴だ! 遺産はオレとオマエで
半分づつだな!』
『お前の爺さんは、資産家で遺産を全部! 務に譲るらしいじゃないか?』
・・・なんとなく分かっている事は?
僕の名前は、“務と言うらしい。”
それと僕の爺ちゃんは、資産家で大金持ちだという事。
その遺産は、僕に全額入る事になっているらしいんだ。
ただ僕は爺ちゃんの顔を見た事も会った事もないと思い込でいる!
実際は僕は爺ちゃんと会って、爺ちゃんは僕を可愛がってくれていた
のかもわかもしれないけど? “僕は全く何にも憶えていない!”
そんな人の遺産が本当に僕に入ってくるのだろうか、、、?
それに何故なのか? 僕が一人で街を歩けば、誰かが必ず声をかけてくる!
しかも? 僕の全く知らない人ばかりだ!
それに一番気になっているのは、、、?
“僕の父親だと言う人や母親だと言う人、僕の兄や姉、弟や妹がたくさん
いるみたいで、なんなら? 僕を赤ちゃんの頃から知ってるという人まで
現れるんだ!”
皆、僕の遺産の事を知ってるのか?
“金目当てで近寄ってくる人ばかりなんだよ!”
ただ僕は生まれつき、記憶が持てない特殊な病気で産まれてきたから!
目には映っていても記憶として残らないらしい。
だから数分で会ったばかりの人も忘れてしまうんだよ。
“短期記憶と長期記憶”があるらしいんだが、僕はどちらでもない!
【鏡に映っているような感じで見えているから、何にも憶えてないんだ。】
だから必ずと言っていいほど、“会話にならないんだよ。”
そもそも僕の目の前に居る人は、“誰”とずっと思っている。
なんの思い出もなく、記憶にも残らない!
*
・・・でもある日、ある女性に出逢い初めて僕は記憶を持った!
『ねえ? 今日の空は凄くいい天気だね!』
『そうだね。』
『“私の名前は、リイコだよ。”』
『リイちゃんか、必ず忘れずに憶えていると誓うよ!』
『わたしの事、忘れないで!』
『うん、絶対に忘れない。』
・・・なんかこの日の僕はいつもと違っていたのが自分でも分かって
いたんだ!
頭がスッキリしていて、僕の目の前に居る女性をどんな事があっても、
忘れたくないと強く想ったからだ!
そうしたら? “奇跡が起きたらしい!”
僕は何時間経っても、彼女の事を憶えていたんだ!
【これは! 奇跡だよ! 奇跡が起きたんだ!】
・・・それから数日たってまた彼女に会った時、僕は彼女の事をちゃんと
忘れずに憶えていたんだ!
『やあ! リイちゃん、元気だった?』
『えぇ!? わたしの事、憶えてくれていたの?』
『うん、凄いでしょ? 噓みたいだ!』
『“あなたは記憶が持てないと聞いていたから、ビックリだわ!”』
『僕自身が、一番! ビックリしてるよ。』
『これからどんどん、記憶が持てるようになればいいわね!』
『そうだね、僕もそうなれば嬉しいよ。』
『わたしもあなたの力になるわ!』
『じゃあ、お願いしようかな。』
『これからは、なんでもいってね!』
・・・僕はこの日を境に、今までの記憶が蘇ってきたんだ!
ずっと僕の記憶は無いものだと思っていたんだけど? 頭の奥底に眠って
いただけで、全ての僕の記憶を想い出す事となったんだ!
そして僕は記憶をすべて思い出した痕、“精神が崩壊してしまったんだ。”
僕はこの街で多くの人達を殺していたらしい。
でも僕自身も、何度もこの街の人達に殺されかけていた事も思い出す。
僕の名前は、杉田務、27歳、資産家の爺ちゃんが居たのも事実らしい!
でも? 僕がその爺ちゃんを殺したんだ。
じゃあ何故? 僕は警察に捕まらずこの街をフラフラと今でもデキているのか?
それは爺ちゃんが生きていた時に、“僕が人殺しでも決して罪にならないと
いう法律を作ったからなんだよ。”
“爺ちゃんって? 本当に凄い人だったんだな!”
しかも? 僕は記憶を持てないし、記憶を持てない僕が今後人殺しはできない
だろうという判断が下されたらしいんだ。
ただいつも僕は警察の監視下にあって、防犯カメラもいつも僕を捉えて
いる事も記憶が戻って分かった事だ!
僕は最初から“記憶が持てなかった訳じゃない!”
僕が自分の家族を皆殺しにしたから、その時精神が最初に崩壊して僕は
記憶が持てなくなった。
泣き叫ぶ母親やまだ幼かった妹にまで、僕は手を下したんだ!
“汚い汚れた手は、もう普通の生活には戻れない!”
だから僕は記憶を持てなくなってしまったのだろう。
・・・そして彼女の事も、もう思い出せなくなってしまった。
僕は精神病棟で隔離されて今はそこで過ごしているよ。
僕専用の機械に雁字搦めに縛られて、ただ息をしながら生きているのか?
死んでいるのか?
“僕の目には、ただ見えているモノが映ってるだけ。”
それ以上、何もない! もう記憶なんて持てなくていいんだ!
僕にはもう必要のないモノだから。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。