第1話:死と出会い
人は死ぬと無に還る。そう信じてきた。
「いや、そうとは限らんさ。君は選ばれた者だ」
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30分前
電車に揺られながら、憂鬱な気持ちをスマホに押し付けていた。否、ゲームをしていた。6時に起き、二度寝し、30分後にたたき起こされ、朝食を掻き込み、着替える。その後自転車に乗り、駅まで走りそこから電車に揺られる。
こんなことをしていれば、憂鬱にもなる。
「次は~、源寺ぃ~、源寺ぃ~」
おっと、降りなくては。着けていたイヤホンをしまい、ケータイをポケットに入れる。踏み切りが上がるのをまち、歩き始める。8時前だが、すでに日差しは強い。そんなことにもイラつきながら歩き進める。
しばらく歩くと、十字路に出る。今上がってきた道と、車の通る道、そして右斜め前に狭い道。目の前には門のようなものがある家がある。いつもここで信号に捕まり、3分待つこととなる。 そう、いつもなら。
赤から青になり、歩き始めたところにトラックが突っ込んできた。目の前には女の子がいた。誰か知らない。
しかし、勝手に手が動いた。背中を押し、俺がトラックと衝突した。
「ああ、死ぬのか」
展開の速さに、戸惑いつつもそう思った。
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目を開けると、俺はイスに座っていた。そして目の前には、女の人がいた。その人の目は俺を見ていた。内心を探るように。
(なんだ、死んでも無に還らんのか、)
「いや、そうとは限らんさ。君は選ばれた者だ。」
勝手に心を読まないで欲しいな。なんだろ、この今にも異世界へ転送されそうな展開は。
「選ばれた者ってなんですか?てか、ここはどこですか?僕は死んだんですよね?」
そんな質問をぶつけた。正直申し訳ないとは思うが、こんな状態だ、答えて欲しいものだ。
「う~ん、そうだな。じゃあ、まずは生死から教えて上げよう。」
ごくり。これ次第で対応が変わるぞ。
「君はまだ生きている。」
「しゃあ、良かっ、、、」
「しかし、この後の選択次第だけどね。」
喜ぼうとしたらそう言われた。ズルいもんだ、もうちょい早く言ってくれても良いものだ。
「まぁ、そんなガッカリしないでよ。そして2つ目にここは私と君だけの会議場。下を見てみな。」
「下、ですか?」そう聞くと彼女は黙って頷いた。
下を見るとそこには、頭の下から血を流した俺の体が倒れていた。
「これは?」
「見た通りのものだよ。ここは事件現場の上空。ちなみに時間は少しずつ動いていて、君の体は死に近づいている。」
「なんとも、反応しづらいことをおっしゃる。」
「そこで3つ目、君は死神に選ばれた。」
なんともそそる展開だ。
「まぁ、詳しく聞いても?」
「ああ、良いだろう。」
そこから彼女は長々と話をしてくれたが、分かりにくい上にややこしかったのでまとめると。
①死神とは死んだ人を送る仕事ではなく、敵から生きてる人を守るもの。「敵に関しては、君が死神になることを決めてくれないと教えられない。」だと。
②選ばれたに関してはなぜか君が瀕死状態になったら強制的に呼ばれたとか。何か俺には力があるのか?少し期待してしまう。
③死神にならないと死ぬ。基本的に死ぬと生まれ変わるか、無に還るかのどちらかだそうだ。魂は0期(初期)、2~9期を迎えた後無に還るそうだ。ちなみに俺は5期だそうだ。ということは俺の前世には5人いるということだろう。
「で、ここからが本題だが、」
「え?、今の前置きなの?、、ながっ、」
「本題とは一言も言ってなかったぞ。まぁ、良い。君は死神になるか?」
なんともひどい。死神にならなければ死ぬらしいが、戦う敵というものも良く分からない。
「じゃあ、質問。死神になれば本当に俺は生きられるのか?」
聞くべき質問だろう。逆にこれ以外に何を聞けば良いのだ?
「ああ、それは間違いない、神に誓おう。」
「う~ん、まあ、まだ生きたいし。死神になるよ。」
「本当に良いのかい?」
「どうせ、このままいれば死ぬんだ。」
「確かにそうだな。よし、じゃあ手を出して。」
そう言ったので、右手を差しだす。そうすると彼女は手を握り、
「我、汝に加護を与える者、死神としての力をその身に宿さん、、、、」
と、長くなりそうなので割愛。そうして聞き良いっていると、体が光りだした。力が呼び起こされるような感覚だ。
彼女は詠唱をやめ、右手を離した。
「君はこれから私の弟子だ。あと、ついでに言っておくと、君の通う学校に先輩というか、死神としての上司もいるから。」
ほーん、死神って何人もいるんだ。すると、彼女は立ち上がり、虚空から刀を取り出した。
「これは、本部から送られてきたものだ。赭刀。まさか、こんなものが君を選ぶとは。実に面白い子を見つけたよ。」
気になることを言っていたが、俺に渡してきた。少し重かったが、そんなことは一瞬で忘れた。
「さて、そろそろ君を返すが、詳しいことは先輩から聞いてね。それと、目を覚ましたら君の右側にその刀と服がおいてあるから、この事を夢だとは思わないこと。」
頭を整理したいところたが、彼女が手を叩くと視界が暗転した。その最中、彼女は聞こえるような聞こえないような声で、
「私の名前はナノ」そう言った気がする。
これが全て始まりだと、俺は自覚していた。
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赭刀:鞘から抜くとともに、使い手の魔力も吸いとる。また、使い手を選び、赭刀とより大きな力をもち魔力を吸いとる上位の刀が存在する。
どうぞ、お付き合いください