【一週間前1】いざと言う時に頼りにしちゃうのが友達
綺羅々の魂奪還作戦決行まで、たった1週間。
颯士はその間、学校には来なかった。
美術室にも、河原にもいない。
ただ、私はそのことについては何も心配していなかった。
谷崎に煽られるまでもなく颯士は現状をどうにかしようと考えているはずだ。
必ず、何か引っさげて戻ってくるはず。
颯士に会えないことが少し寂しくは思うが、次に会う時はレベルアップした姿が見られると思うと楽しみでもある。
私も無碍に過ごしてはいけないな。
颯士のアイデアだけに頼らずに何か新たな力を身に着けなければ。
「颯士に負けてられないな!」
自分に気合を入れ直して、新たな技を考えることにした。
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「マジでどうしよう…」
タイムリミットはたったの1週間。できることは決して多くはない。
あの日、綺羅々の魂を奪われた日からずっと悩んでいたが良いアイデアが全く浮かばなかった。
だって、あの場のあの状況で『できませーん』みたいな雰囲気を出すのはいくらなんでも空気が読めなすぎじゃないか。
とは言っても、1週間であっと驚く力を身に着けるって無理が過ぎる。
大体、あの谷崎って男も、わざとらしく煽ってきて、『成長を促す俺』を演出してくれちゃったりしているけど、ノリだけで無責任なことさせやがって。
大体、綺羅々の魂だって最終的に取り返し損ねたのは谷崎側なのに、全てこっちが悪い、みたいな雰囲気を出して、やはり信用ならない。
あの格闘家にしたって、細山にしたって長年鍛錬を積み重ねてきたからあれだけの力を得たわけで、それを1週間で倒せるようになれ、なんて努力してきた人に対して冒涜が過ぎる。
なんて。
そんな調子が続いて、イライラが募るばかりで何も思い浮かばない。
しかしこのまま何も用意しないで1週間後にバカにされるのは癪だ。
非常に癪だ。
とりあえずは身近なところで、強い人にコツを聞いたりして何か参考になるものはないかと探してみるか。
そんなこんなで、まさか灯里に聞くのは気まず過ぎるし情けなすぎるので、手近なところで他に強い人がいないかと考えてみる。
…雄二か?
腐れ縁で腐れマッチョ、レスリング部主将の真田雄二。
直接戦っているところを見たことはないが、やはりレスリングの大会では目に見えて多くの実績を残しており、強いことは確実だろう。
だが、雰囲気的に『武者修行のために学校休んでいます。』みたいな雰囲気なので学校に行って会う、と言うのは何とも気まずい。
うっかり灯里にでも会おうものなら、『こいつ空気読めないマンかよ』とか思われてしまいそう。
…大人しく雄二の下校を待つことにしよう。
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灯里が帰り、学校に残っているのは部活動をしている生徒だけ、というような時間帯を待って学校へ行った。
そろそろ雄二も部活を終えて出てくることだろう。
そういえば最近、女レス(女子レスリング部)の谷川さんと付き合い始めたとか言ってたっけ。
一緒に帰るところだったら少し申し訳ないが、まぁ毎日顔を合わせているだろうし1日くらいこっちに時間を割いてくれても良いだろう。
むしろ、灯里と谷川さんは少し交流があったように感じる。谷川さんと雄二が合流する前にちょっとだけ話をさせてもらうか。
などなど、頭の中で色々と考えている間に雄二が出てきた。
非常に勝手なイメージで悪いが、女子の着替えは長いイメージがあるので、谷川さんが出てくるまで少し間があるだろう。
その間に雄二と話させてもらおう。
こそこそと近くに寄って手を振ると、雄二もふとこちらに気付く。
こっちにこいこい、と手招きをすると小走りでマッチョが寄ってきた。小走りマッチョ、なんだかシュールだ。
「雄二、すまない。ちょっとお願いがあって…。ここじゃなんだから部室の裏にでも…」
「お、おう、どうした?今日は学校来てなかったよな?」
「俺も色々あってさ、お年頃ってヤツだよ。そんなことはいいから早く。」
ただならぬ雰囲気を察してくれたのか、戸惑いながらも雄二は一緒に来てくれた。
さぁ、色々教えて貰おうか。
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