【魂なき世界14】もしかして喧嘩って誰か止めないとなかなか終われないような
颯士、綺羅々、谷崎…みんなこいつにやられてしまった。
もう私がこいつを止めるしかない…!
心の中で使命感が燃え上がる。
「勝てないと思うと勝てない!だから私は勝てる!!」
声に出すことで自分に言い聞かせる。
攻めあぐねてはいるが、こんな時こそ冷静に策を練るんだ。
颯士のように的確な作戦が立てられるかは分からないが、今こそ頭を使う時だ。
「…確かに。戦いに気が入らない者に勝ちはない。」
意外にも、細山は肯定してきた。
「でしょ、だから私は負けない!」
ニヤリ、と不敵に笑って見せると表情一つ変えずに細山も言う。
「こちらとて負けてやるつもりはない。」
そう言いながら、こちらとの距離を詰めようと細山が歩いてくる。
「それじゃ、いくよ!」
攻撃圏内に相手のタイミングで入らせるよりは、自分のタイミングで詰め寄った方が良い。
そう判断してブーストで加速して詰め寄り、得意の右ハイキック…
ではなく、左ミドルキックを放った。
深く考えていたわけではない、だが結果としてこれは有効だった。
細山の得意の右腕の鞭は、対角線にぶつかる時に一番威力を発揮する。
だが、細山の右腕の側である左脚、しかも抑え込むように腕の上からのミドルキックは細山にとっても対応がしづらかった。
谷崎のおかげだ。
鞭のような腕は右でしか使っていない。
むしろ、左手は攻撃には使わずに戦っていたように感じる。
思うに、これは相手をなめているとかではなく、左手は防御に集中、右手は攻撃に集中と、役割を分けるのが細山のスタイルなのであろう。
最初に私が戦っていたら、そのことに気付けなかったかもしれない。
谷崎は戦いながらも私に相手の動きを見せていたのだ。
なんとか左手を伸ばして蹴りを防御してきたが、それはこちらも想定内であった。
「どっ…せいっ!!!」
途中から左脚に能力を集中、ブーストを全開にして無理矢理ガードを押し切った。
はじき飛ばされた細山は、それでも倒れない。
かくなる上は…
「『コンビネーションアタック』だ!!」
「…。」
1人でコンビネーションとは頭が悪い子なのか、と言いたそうな目を向けられている気がするが無視をする。
頭の中でボロい布をイメージ。
「(ちょっと大きめで…)」
そのまま布を錬成し、フードのようにすっぽりと我が身を包む。
「防御を重視したのか?しかしそんな布で…」
不可解に思ってくれているところ悪いけど、これからが本番だ。
「じゃあ、いくよ…!『幻影』!!」
7体分の幻影を一気に錬成する。
厳密には、身に纏ったボロ布が人の形になるように錬成したもの。
それを能力で蒸気のようなものを作り噴出させ、短い時間だが浮かせたり少しだけ動かすことを可能にした。
自由自在ではなく、攻撃技でもないが、それでもこの幻影の間を巧みに移動することで相手を惑わすことができる。
「無駄なことを…」
細山は動きを完全に止め、こちらの攻めてくるタイミングを窺っている。
幻影から幻影へ、超高速移動することで姿を眩ますことはできるが…
「食らえっ!!」
細山の背後に展開した幻影から飛び出して細山に殴り掛かる。
「どう隠れようと攻撃の瞬間に分かるだろう。」
振り向きざまに拳を左手で受け止めた細山は、そのまましなる右腕で灯里の腕を破壊しようとする。
「かかったわね…!」
ニヤリ、不敵な笑みを見せてやった。
細山の背後には、他の幻影に隠れていた谷崎がいた。
「そっちもだまし討ちしたんだ、文句はないよ…なっ…!!」
今度こそ渾身の力を込めた谷崎の拳が、細山の顔面を捉えた。
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