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【魂なき世界12】強さの基準は絶対的なものではなく相性もある

「はい、谷崎の武器」


角材(厳密には木ではないが)を適当に具現化して、灯里は谷崎に投げてよこした。


「もっと刀とか作れるだろ?なんで角材よ?」


文句を言いながらもノロノロと立ち上がり角材で手頃なゾンビを数体叩き飛ばす。


「いや、これでちょっとはヤンキーの仲間らしいかなって…」


「うーん、なんて偏見。」


なんて、呑気に世間話をしながらゾンビを狩っていると、ゾンビ集団がスッと姿を消す。


灯里は一瞬、「終わったか?」と思ったが、そう簡単に終わらせてくれそうになさそうだ。


Yシャツにネクタイ、細身で細目の細男、細山が姿を現す。


「もう一人、能力者がいたのか。こちらも強い魂を感じる。」


細山の独り言が聞こえた灯里は、一気に警戒モードへと戻る。


「もう一人…?」


嫌な予感が灯里の脳裏によぎる。


「…仲間か。」


灯里の反応をみて細山は大体の察しが付いたようだ。


「こちらもいただく…」


灯里の方へ猛然と駆け寄ろうとする細山の顔面に白い角材が飛んでくる。


咄嗟に細山は顔を後ろに下げて避けると、角材が背後にあるゴミ箱にぶつかり、ゴミ箱が倒れた。


「こらこら、未成年にいきなり襲い掛かるとか逮捕モノだよ」


素手になって身軽になった谷崎が、ズイッと細山の前に立ちはだかる。


「谷崎、そいつ多分、綺羅々と、多分颯士も…」


「分かっている。」


谷崎が臨戦態勢に入るが、細山は全く動じない。


「能力者の方じゃなくて大丈夫か?」


煽る気があるわけではないが、細山の言葉が挑発のように聞こえ、谷崎はイラッとした。


「そうよ、私が!」


灯里が出てきそうなところを片手で制しながら、谷崎も言い返す。


「お前ごとき、能力なんて必要ないんだよ。」


言い放つや否や、谷崎の膝蹴りが細山に向かっていく。


はっきり言うと不意打ち気味のタイミングだった。


細山は最小限の動きで後ろに下がり膝をかわすが、そのまま折りたたまれていた膝がジャックナイフのように広がり、つま先がわずかに細山のネクタイを掠める。


細山は顔色一つ変えず、そのまま蛇のようにしなる右腕で谷崎の膝へと伸びる。


それを察した谷崎が、回避も兼ねて振りあがった足でそのまま(かかと)落としを繰り出す。


その踵落としを細山が半身で躱し、谷崎の踵が地面を叩いた時には、細山の右腕の先端は既に谷崎の顔面へと迫っていた。


咄嗟に首を傾けて顔面への攻撃を躱すが、そのまま右腕がしなり、細山の腕が谷崎の首を狩る動きへと移行する。


颯士が倒された技。


一瞬、谷崎の体制が細山の動きとシンクロするかのように、しなる方向へと合わせて体を回転させる。


颯士は腕を掴むことができなかったが、谷崎はそのまま回転の勢いで細山の腕にスピードの乗った重い拳をぶち込んだ。


完全に弾き切ることはできなかったが、細山はわずかに体ごと後方へと押しのけられる。


「ちっ、かってぇな!」


細山の重い一撃に対して思わず悪態がでる。


だが、無言の細山もほんのわずかに表情に驚きが表れる。


そして客観的に見ていた灯里も、一瞬の攻防のレベルの高さに驚きを隠せなかった。


以前、灯里が谷崎と戦った時も灯里の超スピードの攻撃を谷崎は完全に見切っていた。


恐らく一瞬で動きを読むことに谷崎は長けているのだろう。


そしてその動きに一瞬で対応する細山の動きもまた、灯里に冷や汗を流させた。


少なくとも当時の灯里は、谷崎に攻撃を避けられた後は成す術がなく返し技を食らわされていた。


白龍撃と言う奇襲がなければ、谷崎に勝てていたかどうか。


…正直、灯里も自信が持てなかった。


その谷崎と互角にやり合っている細山にも。




ここまで読んでくださってありがとうございます。


面白かったら「いいね」「ブックマーク」などしていただけたらありがたいです!


今後ともよろしくお願いします!!

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