【リゾートバイト編5】この手の青春は若いうちが華!
結局、オーナーの娘の提案で花火をしようということになった。
ホテルの売店で花火を買い、海岸へ行くと、意外にも人気は少なかった。
「めっちゃ綺麗じゃん!」
月明りが海に反射して輝いているのをみて、オーナーの娘が歓声を上げる。
こうして普通に喜んでいる姿は本当に美少女なのだがなぁ。
「よし、じゃあとりあえず花火やろ!」
オーナーの娘がロウソクを立てて火をつけるものの、風が強くてすぐに消えてしまう。
「ちょいと貸してください」
風の方向を考えて、花火が貼ってあった台紙を折り曲げて風よけにする。
「あー、なるほどね、やるじゃん」
オーナーの娘が珍しく褒めてくれた。
「割とこれ、やりません?風よけ」
「いやー、あまり手持ち花火ってしたことなくて」
なるほど、庶民の遊びに慣れてないパターンってやつだな。
「娘さんは…」
「麗華だってば。」
被せるように言う。頬を膨らませて言うものだから、訂正する。
「あ、すみません、麗華さんはあまり庶民の遊びとかしないんですか?」
「庶民って。私が庶民じゃなければ誰が庶民なのよ」
ケラケラ笑いながら言う。
リゾート地のオーナーの娘は庶民ではないと思うがなぁ。
花火の光で照らされた麗華さんの顔は、庶民離れして綺麗に見えた。
「静かにしていると、お嬢様っぽいんですけどね」
「あ、言ったなー!」
コラー!と追いかけてくる麗華さんから逃げる夜の海も、何となく楽しく感じる。
案外、麗華さんの足は速く、波打ち際で捕まってしまう。
ガシッと腕を掴まれて
「このやろー!」
と、夜の海に押し出されそうになった。
反射的に麗華さんの腕を掴んでしまうと、そのまま勢いで一緒に海に飛び込んでしまった。
「ぷはー!あはは!びっしょびしょ!!」
水面から顔を上げた麗華は楽しそうに笑う。
「そのままタクシーとか乗ったらよくあるホラーみたいですね。白いワンピースで濡れている女、みたいな」
「もっとデリカシーあること言えんのかー!」
こらー、と笑いながら水をかけてくるので、こちらも笑いながら海から砂浜へと逃げて行った。
こんなに笑ったのっていつぶりだろう。そういえば大笑いって長いことしていなかったな。
追いかけてきた麗華に手を掴まれ、そのまま砂浜に足を取られる。
ドサッ…
咄嗟に、麗華が顔から砂浜に倒れないよう腕でガードするがそのまま一緒に倒れこんでしまった。
抱き合うような形、密着する体。
妙に速く聞こえる心臓の鼓動は、自分のものか相手のものか。
一瞬の間なのか、30秒くらいは過ぎたのか、時間の感覚が分からなくなる。
多分、自分はこの手の経験は乏しい方で、勘違いかもしれないけれど…
声を発してしまうと、この時間は終わる。
それをお互いに理解しているように感じる。
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麗華さんが上半身を少し浮かせた。
恐らく、この時間が終わってしまうのだろう。
少しだけ、名残惜しい気がする。
そのまま立ち上がるかと思ったが、10センチほど体が離れたところで体の上昇は止まった。
そのまま麗華さんは目を閉じて、唇を近づけてきた。
この激しい心臓の鼓動は、自分のものだったんだな。
そんなことがぼんやりと頭に浮かんでいた。
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