【リゾートバイト編4】人によって露骨に態度を変えるのは良くないが変えないのも考えもの
労働の程よい疲れと満腹感、お風呂でしっかり体も温まり、昨晩はすっきり気持ち良く眠れた。
最初はナーバスな気分だったが、この待遇なら案外悪くない。
さて、今日もお仕事頑張るぞ!
「しゃっせー!!」
元気な声を出したからか、早速お客が寄ってくる。
気持ち良い仕事始め、幸先いいぜ。
と思いきや、寄ってきたのは白い帽子にワンピース、なんだか見覚えが…
「ちょっと颯士クン!酷いじゃないの!」
お客じゃなかった。オーナーの娘だった。
一生懸命働いているアルバイトに向かって酷いとは酷い。
何を怒っているのだろう、ヒステリーって怖い。
「え?ちゃんと働いていますけど…」
そう言うと、オーナーの娘は顔を真っ赤にして抗議してきた。
「そうじゃなくて!昨日約束すっぽかしたじゃない!」
約束、なんだったっけな…
こちらの顔に疑問符が張り付いていたことを察したのか、さらに顔を真っ赤にしてオーナーの娘が言う。
「昨日!夕方から遊ぼうって、ホテルのロビーで待ち合わせしていたじゃない!!ずっと待っていたんだから!!」
あぁ、そういえばそんなこと言っていたな。
白々しい後付けで言い出したのかと思っていたけど違ったのか。
「あ、えっと、それで、娘…さん?はずっとロビーで待っていたと…?」
恐る恐る聞くと、さらにヒステリーが加速する。
「何その、名前も忘れちゃってる感じ!麗華です!早瀬麗華!!」
そういえば名前も聞いていた。そうでした、麗華さんだ。オーナーの娘は麗華さん。
「えっと、それで、麗華さんは俺に何の用で…?」
いくら視察にしてもちょっとしつこすぎる。他にもアルバイターはいるでしょうが。
「いや、だから、美少女が!夏に!一緒に遊ぼうって誘ってるんでしょうが!普通喜んでくるでしょう!!」
何故かとても怒っている。これは謝っておいたほうがよさそうだ。
「あ、はい、ごめんなさい。」
「とりあえず謝っておこう感が凄い!!」
さすがオーナーの娘さん、人間観察力に優れている。
とりあえず謝ったのがすぐバレてしまった。
「すみません、綺麗な人が自分を誘うとは思えなくてつい。」
言い訳に言い訳を重ねてしまって、すぐにまた怒られるのかと思ったのだが
「え、あ、そういうことなら仕方ないわね…」
と、先ほどとは違う意味で赤くなって許してくれた。
よくわからない人だ。
「今日こそ絶対来なさいよ!夕方!ロビー!来る!オッケー!?」
何故かカタコトになりながら捲し立ててきたので
「お、オッケー」
とだけ返しておいた。
そもそも昨日はオッケーしてなかった気がするのを思い出しつつ。
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バイトの時間が終わると、とりあえずオーナーの娘が待つというロビーに行った。
「おっ、待っていたよ~!」
朝とは打って変わって上機嫌なオーナーの娘が手を振りながらやってくる。
「お仕事お疲れ様!さぁて、何して遊ぶ??」
全く、これだからお金持ちは困る。
こちとら朝から労働をして疲れているんだ。
まずは働いてすっかり空かせたお腹を満たすのが先に決まっているだろう。
「ご飯先に食べたいです。」
「あ、そうだよね、お腹すいているよね、どこで食べる?」
「まかないでバイキングあるんでちょっと食べてきます。」
「え?」
オーナーの娘は何故かそこで立ち止まっているが、バイキングとて戦争なのだ。場合によっては人気のお肉などは品切れになる可能性もある。
ついてこれないならばバイキングと言う名の戦場から去ってもらうしかない。
大体、オーナーの娘ならこんなの食べ飽きているだろ。
そんなことより肉だ、牛のやつ!
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さすがに初日より感動はないが、それでもこれだけ贅沢に食べられるならば文句なし、むしろ満足。
満たされた胃袋をさすりながら戻ると、ロビーでオーナーの娘が待っていた。
「もうご飯食べたんですか?」
食べに行ったようには見えないが。
「い、いらないわよ!」
また怒っている。
こちらも自由時間にオーナーの娘に付き合って拘束時間発生しているのだから文句言いたいくらいなのに。
「あ、えーっと、じゃあ遊びます…か…?」
「当たり前でしょ!」
こんなに怒っているのに当たり前なのか。
「じゃあ、エスコートしてよ!」
えぇー、誘っといてノープランなの?この人…
オーナーの娘だからってわがまま過ぎない?
「え、あ、じゃあお風呂に…?」
「段階を踏めー!!!」
何故かめちゃくちゃ怒られた。
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