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【復讐編19】乗り越えられなかった壁を乗り越えると急激に成長する

「椿さんがあの人を斬れるようになればいいんですよ」


颯士はあっさり言ってのけた。


「いや、しかし母は何故、青白い物体を斬れたのか皆目見当もつかないのだよ」


颯士は自信ありげに答えた。


「多分、お母さんは能力者だったんですよ!そして椿さんの一族には能力を発動するための秘伝があると見た!」


「わ、私にそんな力が…?」


満更でもなさそうな椿。だが、


「しかし、そんな方法知らないぞ」


と、すぐに振り出しに戻る。


「恐らく、椿さんのお母さんも、奴らと戦うのは初めてだったはずです。それでも斬ることができたのは、普段から無意識のうちに能力を発動させていたと考えるのが自然ではないかと。」


「つ、つまり…?」


「椿さんの剣術の教えで代々伝わるものとかないのですか?例えば特別な呼吸を使う、とか、心眼で物事の本質を断つ技、とか。」


颯士は名案、とばかりに期待の表情を投げ掛けるが


「うーん、特には…」


と、椿は要領を得ない感じであった。



ボンッ!!!



灯里の方から爆発音にも似た音が聞こえた。


「おぉ、さすが灯里ちゃんだ!やったのではないか!?」


椿は歓声をあげるが、噴煙が晴れてきてボロボロの女の姿が現れた。



「あれだけボロボロなら、もう勝ったも当然じゃないか?」


椿は呑気なことを言うが、颯士は危機感を感じていた。


「…あれはエネルギーを使いすぎじゃないか?」


実際、そうでもしないと大蛇に絞め殺されていたかもしれないが、まともに動けなくなるレベルの消耗である。


そのまま女が灯里を殴り付ける。


「マズい…!!」


さすがに静観はしていられない。


どちらが言い出すでもなく颯士と椿は灯里に向かって走り出していた。



何度目だろうか、女が蹴りつけるところに颯士が身体をねじ込んだ。


背中に女の蹴りが入ったが、痛がってもいられず、そのまま灯里を抱き締めながら転がった。


「颯士クン、私の邪魔をするの…?」


首をガクガク揺らしながら女が言い放つ。


穴が空いた顔がカタカタと震えながら迫ってくる、よもやホラーでしかない。


「能力出ろっ!!!」


注意が颯士に向いた女に、椿が背後から斬りかかったが全く通じない。


椿の攻撃は意に介さず、女は続ける。


「私、そのメスガキのせいでこんなになっちゃった…」


『ひっ…』


颯士の口から恐怖が漏れる。


「だから、あなたの魂をちょうだい…」


完全にホラーである。


灯里を引きずってでも距離を取らねば。


そう思ってはいるのだが、腰が抜けたのか立てない。


ユラリユラリと女は近づいてくる。


「つ、椿さん!!」


助けを求めたいが、もはや伝えたいことを伝え切れるほどの単語が出てこない。


「あし!あし!!」


「(なんだ、ボクサーか何かの話をしているのか?)」


ボクシングに足は重要、なんて話を聞いたことがあるにはあるが…。


椿はフットワーク軽く女の周りを動き回りながら斬りつけたが全く通じない。


むしろ滑稽ですらあった。


颯士も恐怖で文章が出ないからか、単語で断片的に伝える。


「ひざ!ひざ!」


「(なんだ?膝のクッションを使えってことか?)」


椿の動きに上下運動が加わる。


無駄に上下にユラユラ揺れながら女の周りをグルグル回る。


あ、アホなのー!?とは内心思っても言葉が上手く伝えられないから仕方がない。


「ひざ!ひざげり!!」


やっとそれっぽい単語がでたが、椿は女の膝を刀で斬りつけた。

膝斬りではない。

もちろん効果はない。


しかし不謹慎ながら、むしろ不謹慎な状況だからこそ椿のアホな行動がツボに入ってしまう。


女は相当近くまで寄ってきている。


恐怖と面白さが入り交じって


「ふひひ…」


と変な笑いが出てしまう。


「ふひ、膝蹴り!食らわせ!って!って!」


やっと椿に通じたのか、とりあえず椿は言われた通りに膝のクッションで飛び上がってから膝蹴りを食らわせる。


ユラユラと女がふらついて後退りする。


「あ、そうか」


白袴ごしの一撃、これならばダメージも与えられる。


少し距離が稼げた隙に、椿は二人の元に駆け寄る。


二人を抱えて距離を取る姿はさっきのマヌケな姿と違って男前である。


とりあえず安堵して少しだけ落ち着いた颯士が椿にアドバイスをする。


「多分、袴はもう長持ちしないと思います。真面目な話です。大事なのは『斬れるイメージ』です。」


能力はイメージ力が大事。今まで何度も経験してきたことである。

恐らく、椿の母も明確に相手を斬るイメージがあり、無意識に『何でも斬れる』ことを具現化していたのであろう。


「なんでも斬れるイメージ、か…」


呟く椿に、灯里が手を伸ばす。


「椿…ちゃ…」


辛うじて地面に置かれた刀に手が届く。


椿は刀ごとその手を握りしめ、その後、ゆっくりと手を離して立ち上がった。


「任せろ…!」




精神統一…


イメージが大事だと颯士君は言う。


明確に…


あの女を斬るイメージ…


斬れないと思わないことだ。



灯里ちゃん


颯士君


そして、お母さん



皆が見せてくれた。


あの女に触れるビジョン。


そして斬れるビジョン。


いよいよ女が迫ってくる。


ゆっくり、ゆっくりと迫ってくる。


「雑魚はどいてなさいよぉぉぉ!!!」


女が襲いかかってくる。



……


『カチン…』


鍔が鳴り、女の頭が地面へと落ちた。



「…イメージ通り。」




ここまで読んでくださってありがとうございます。


面白かったら「いいね」「ブックマーク」などしていただけたらありがたいです!


今後ともよろしくお願いします!!

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