【復讐編17】年頃の男の子ってのはどんなに言い訳しても見たいものは見たいんだよ
魂は灯里の身体の中に吸い込まれていく。
だがすぐには目覚めない。
伸びてくる蔦の先が鋭利になり颯士へと襲いかかる。
ここで避けると灯里に当たってしまうが、避けないと颯士に突き刺さるだろう。
灯里を引っ張って避けるには颯士は非力すぎた。
辛うじて1つ目の蔦を灯里を引っ張りながら避けたが、続いて襲いかかる2本目、3本目の蔦はもう避けることは出来ないことを悟る。
「(せめて吉村だけでも)」
颯士は灯里に覆い被さり蔦から守ろうとした。
「…っ!」
痛みを覚悟して目を強く閉じた時であった。
「…白龍擊」
覆い被さった颯士に抱きつくかのように背中に手が回っていた。
その手のひらが向けられた方向は襲いかかってくる蔦、ひいては女の方向だった。
具現化された白龍が手のひらから飛び出す
と蔦を破壊しながら突き進む。
「…ただいま」
颯士の下から這い出てきた灯里は無表情のまま女を睨み付けていた。
「椿ちゃん、颯士、ありがとう。」
灯里はゆっくりと、しかし着実に女の元へ歩いて行く。
女の目の前に立つと、灯里は無表情のまま言い放つ。
「アンタは絶対許さないっ!!」
言い終わるか終わらないかの間に、思いっきり振りかぶってグーを叩きつけた。
ガッ…!!
大きな炸裂音と共に女は後方へ押し飛ばされる。
「もう一発…!」
数mは後方へ飛ばされていたはずが、すぐ目の前に灯里がいる。
女は咄嗟に残った片腕でガードするが、ガードの上から再び拳を叩き込む。
「ぐっ…」
またも後方へ押し飛ばされると女は
「気付いていたのね…」
と、絞り出すように言った。
「…颯士のお陰でね。」
灯里は真顔のままで言う。
・
・
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「どういうことなんだ?」
椿は颯士に尋ねた。
「気付きませんか?」
颯士は椿に尋ね返し、そして続けた。
「思い出して見てください。あの人に攻撃をした時のことを。」
①椿の剣術 指キャッチ
②灯里の上段回し蹴り 無効
③白鷺擊(鷲) 避けられる
④椿の抜刀術 避けられる
⑤灯里の拳連打 無効
ここまで書いて椿が口を挟む。
「打撃には強いが、鷲の翼や能力で作った刀の切れ味は警戒している、とかか?」
「惜しいんですけれど…」
⑥白龍擊 腕を吹っ飛ばす
「あの龍を飛ばす技か?あれだって刀に負けない威力がありそうだが。」
「威力の問題ではないみたいなのですよ。」
⑦白い袴で殴る ダメージ有り
「助平アタックだな」
ジトーッとした視線。
椿の非難の目に
「だから下着は見てないですって…」
颯士は困惑しながら返す。
「そりゃあ、履いてないものは見れないだろう」
「…」
颯士とて年頃の男子。
なんだか勿体ないことをしてしまったような気持ちが芽生えたが、ゴホン、と咳払いをして話を戻す。
「その後の椿さんの真剣での攻撃もまったく効果なかったですよね?」
⑧真剣 無効
書き足しながら言う。
「なるほど、そう言うことか!」
椿はようやく納得する。
「つまり、能力で作ったものならば効果がある、と言うことか」
「正解です。今も拳の先に能力でコーティングをして攻撃をしているんですよ。」
灯里の方を見ると、拳が白く包まれており、女を攻め続けている。
「と言うか、分かっていて気絶したフリしてくれていたのかと思っていましたよ。」
ハハッ、と笑って颯士は言う。
「いや、しきりに目配せしてくれていたしな。それにどうせなら颯士君は灯里ちゃんのが見たいだろうと思っていたからな。
わざわざ私のを見たがるとは何か考えがあるのだろうとは思ってはいたよ。」
「どちらも見たいわけじゃないですって…」
呆れた口調で返しながらも、短い付き合いでここまで信頼してくれることをありがたくも思った。
ちなみに颯士はどちらも見たかった。
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