【復讐編16】意外な組み合わせの協力プレイって燃えるよね
「なっ…!?」
まさか袴で不意打ちをされるとは夢にも思っていなかったのであろう。
強靭な繊維で編み込んだ袴が鞭のようにしなり、女に強烈な一撃を叩き込む。
『神棚!!!』
声を張るとバッ、と椿が起き上がり神棚へと向かって走り出す。
ほぼ同時に、よろめいた女の手のひらに向かって右手を伸ばす。
灯里の魂を奪われまいと、女は左手を高く上げる。
辛うじて届かない。
その左手を今一度、袴の鞭で叩こうとするが女は咄嗟に飛び退いて躱す。
くそー、灯里ならブースト使って簡単に灯里の魂を取り返せるのに!
と、身も蓋もないことを考えたりしつつ、バッサバッサと袴を振り回すものの、なかなか当たってくれない。
「後ろに跳べ!」
椿の声が響く。咄嗟にそれにしたがって後ろに跳ぶとスイッチで椿が攻めに入る。
「存外、スケベなんだな颯士君は。」
そういい放つ椿に、作戦ですから!と弁明すると「ふっ」と笑う。
「見られたからには責任取ってもらわねばな!」
そう言いながら腰に携えた真剣を抜き、得意の居合い斬りを放つ。
見てないのに…
と、思ったが弁明を挟む間もない。
居合い斬りは女の脇腹でピタリと止まり、刃が全く通らない。
「やはり駄目か…ならば…」
椿が高速で刀を振り回す。
避けられないほどの滅多斬り。
「こんなに斬りつけて、死んじゃったらどうするの?」
軽口を叩きつつも椿の猛攻は全く通じていない。
「妖しなら殺人にならないだろう?」
「殺せないから殺人にはならないわね!」
皮肉の言い合いの中、椿は隙を窺っていた。
女の左手にある灯里の魂を弾き飛ばす隙を。
「そろそろ飽きてきたわね!」
右手はふっ飛び、左手には灯里の魂を持っている。
少なくとも手は使えない、椿はそう高を括っていた。
女が足を浮かせて地面に踏み込むと、そこから複数の青白い蔦が椿の方へ伸びる。
「躱せるかしら?」
次々と椿に襲いかかる鋭利な蔦をなんとか躱し、刀で受け、足で踏みつけ、そのまま飛び上がる。
そのまま上空から手のひらに向かって刃を振り下ろすが、女はギリギリで躱す。
しかし躱した左手に向かって追撃が放たれる。
「燕返し!!」
切り返した刀の峰が女の手のひらにある魂を掠める。
「惜しかったわね…!」
今一度、女は踏み込みから蔦を産み出そうとするが、椿は燕返しの勢いでそのまま身体を回転させる。
破れた袴から覗かせる脚でそのまま後ろ回し蹴りに移行する。
パコン…
灯里の魂に蹴りが当たる。
「あら…」
女の手のひらから灯里の魂がこぼれる。
女の左手が魂をキャッチしようと伸びるが咄嗟に帯から引き抜いた刀の鞘で魂を弾く。
「颯士くん!!」
「よしきた!!!」
弾き飛ばされた魂をヘッドスライディング気味にキャッチする。
「逃がさないわよ…」
そのまま灯里へ向かって走るが背後から蔦が迫る。
足元に突き刺さる蔦を間一髪躱しながら灯里の元へ到達するものの、蔦の一本が足に巻き付き最後の最後で転ばされてしまう。
地面で鼻を強打するが、今は痛みを気にしている場合ではない。
脚の付け根、膝、足首、指先まで完全に伸ばしきる。
爪先が地面から離れそうなギリギリで魂に手が届く。
そのまま倒れこむように灯里の胸に魂を押し込んだ。
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