【復讐編13】どんな人でも悪人でもそれぞれ思いがあり、考えている
刀が爆発した…と、一瞬錯覚したが、実際は刀の峰から蒸気が爆発的に噴出されていたようだ。
その勢いで斬りつける威力やスピードが上がるカラクリなのであろう。
刃を握っていた近藤の左手をそのまま切断し、胴体を掠めた。
「よっしゃ!!」
灯里ちゃんの声が道場に響き渡る。
初めて近藤の身体にダメージを与えた瞬間であった。
「ぬぉっ…!!」
よろめいたところを追って真横に一閃する。
近藤の右手を刀と共に斬り飛ばした。
丸腰になった近藤が尻もちをつく。
「死ね…!!」
大きく上段に構えた刀をそのまま振り下ろす。
咄嗟にガードしようと触手を作ろうとしたようだがイメージが甘いのかドロドロとした溶けかけの触手が出来上がる。
近藤からすると不幸中の幸いだったのか、ドロドロの液体を振り上げた時の飛沫で視界が見えなくなり目測を見誤った。
わずかに、ほとんど接しているレベルだが近藤には当たらず、刃が道場の床を斬りつけた。
刃のは床を割り、根本まですっぽりと埋まってしまった。
こんなにも斬れるものなのか…
『割れた』と言うよりは『隙間を通した』かのようにすら感じる切れ目に不本意にも見とれてしまった。
幸いにも近藤はこの隙に攻撃する気勢を削がれていたようだが…
今一度、トドメをさそうと構えると、命乞いをするかのように近藤は捲し立てる。
「認めないぞ俺は!汚い手を使いやがって!純粋な刀の勝負では負けていなかった!!」
往生際の悪い…
こちらは元々、試合をしていたわけではない。
まして、汚い不意打ちで母を殺したのはこいつの方だ。
だが…
スッ…
振り上げた刀を下ろすとニヤニヤしながら近藤が立ち上がる。
「物分かりがいいじゃねぇか」
バカめ、とでも思っていそうな近藤が刀を具現化する。
安い挑発なのは百も承知。
遺恨なく決着をつけたいのはこちらとて同じこと。
刀を鞘に納めて集中する。
コイツを倒すのは母の技。
最も得意とした抜刀術。
「次は反則技は使わないでくれよぉ~?」
繰り返し挑発してくるが関係ない。
…参る。
・
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振り抜いた刀は完全に見切られていた。
しかしここで止める気はなかった。
「速くても、来るのが分かっていれば!」
近藤の刀が立ちはだかるが…
あってないようなもの…
私の一撃は近藤の刀ごと胴体を切断していた。
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近藤は身体を両断されたにも関わらずまだ生きている。
それどころか血の一滴すらも出ていない。
「どうだ、人を斬った気分は。」
ニヤニヤしながら近藤が言うが
「お前を人間とは思ってはいない。」
と、刀を鞘に収めながら椿は返した。
「…いや、生きてすらいなかったんだ。既にお前の肉体は死んでいた。」
「傷つくことを言うなぁ」
近藤のニヤニヤが苦笑いに変わった。
「何故、母を殺した?」
動機など関係ないが、それでも椿は知りたかった。
今まで打ち込んできた日々に決着をつけたかった。
近藤の顔から笑みが消えた。
「…彩乃を自分のものにしたかった。剣で勝てたこともなく、男としても見て貰えなかった。」
少し、顔の血色が悪くなってきたように感じる。
「…その時に誘われた。自分のものにしたいのならば魂を奪ったらどうか、と。」
「…どういうことだ?」
椿にも覚えがあった。
あの夜、近藤と一緒にいた女。
『魂を綺麗に磨いておいてね』
何年も経つのにくっきりと思い出せる。
「結局、魂も奪えなかったんだけどな」
近藤は無視して自分語りを続けている。
「どういうことだと聞いている!」
思わず語気が荒くなった。
「お前の魂は彩乃に似ているってよ」
みるみる老け込んでいく近藤は、椿の声は耳に入っていないようだ。
「彩乃、ごめ『ドンッ』
近藤の身体が潰れた。
「こんな子供たちに負けるなんて、やっぱりゴミはゴミなのね。」
道場に声が響くと、どこから現れたのか、まるでテレポートでもしたかのように女が現れた。
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