【テスト勉強編前編】◯◯したら記憶力上がるよ系のアクションは、最低限普通に勉強してないと意味がない
堕悪帝国との戦いから一週間後。
颯士と灯里は焦燥しきっていた。
「全然…わからない…」
『春葬会』、『堕悪帝国』と潰して回った形になった二人は、『そっち』の界隈ではちょっとした有名人になっていた。
どちらもちょっとした社会の裏側の組織ではあるので、マスコミみたいな表の組織にバレるとかそう言ったことは今のところない。
だが、大っぴらに能力を使いすぎてしまったことで能力に興味を持ったのか、二人を探している人がいるとの噂も度々耳にした。
だが今の二人にとってそれは大した問題ではなかった。
そんなことよりも、目の前に迫る危機、そう
『定期テスト』である。
普段の二人は決して成績は悪くはない。
だが、最近はやれ必殺技の研究だの組織を潰すだのと勉強をないがしろにしすぎていた。
その結果、すっかり勉強が遅れてしまい、次のテストの準備が全くできていない状態に。
どんなに腕ッ節が強くても、テストに勝つことはできない。
そんな当たり前のことを痛感した二人は、テスト一週間前にして、ようやく危機感が芽生えたところであった。
薄暗い美術室、二人は深刻な顔をしている。
「このままじゃマズいわ」
灯里の額から一筋の汗が流れる。
「次のテストで前回より成績が下だったら…」
それを聞く颯士、ゴクリと息を飲む。
「スマホ禁止令が出てしまう…」
それは女子高生にとっては由々しき事態であった。
友達とのグループチャットや話題の共有はコミュニケーションには必須と言える。
それができないばかりに、暗黒の3年間を過ごす人もいるとかいないとか…
しかし、近年ではスマホと学力の相関関係も研究されており、ある一定時間以上スマホを使うと勉強をしても成績が上がらないなどと言うデータもあるとかないとか…
親心、子心、それぞれに思うところがあるのだろうが、一番うまい落としどころはしっかり結果を出して納得させることだろう。
「…とりあえず誰かに勉強ならうとかどうかな?」
颯士の提案に、灯里は
「…少しアテはあるわ。」
と、返す。
「世界史なら、智子が得意だから…(学年4位)」
「なるほど、ならば飯田さんに頼もう」
二人はすぐに智子に連絡をした。
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「…てなわけで執事の起源はフランスから来ていて、その歴史は中世まで遡り…」
(こ、これは…)
颯士は灯里に目で合図を送る。
コクンッ…
灯里も頷き返す。
二人は今、気持ちが通じあっていた。
『勉強用に得た知識ではなく、完全に趣味から得た知識だ…!』
本来、学問とは興味の探求の先にあるべきもの、とは思うのだがこと試験勉強においては事情が変わってくる。
恐らく試験に、『執事の歴史はでない』
興味の探求から得た知識、それは間違いなく深く尊いものではあるのだが、テスト直前に学び始めるには、悪い言い方をすると『無駄が多すぎる』
智子が持っている知識を10とすると、テスト範囲に関係のある内容はせいぜい2か3といったところだろう。
「さらに日本にも執事はちゃんと存在していて…」
(世界の話ですらなくなった…!)
このままでは勉強時間がなくなってしまう、危機感を覚えた颯士は灯里に目配せした。
わかった、と言わんばかりに灯里が口を開く。
「あ、ありがとう、もう大丈夫!」
「え、でもまだ途中…」
話し足りなそうな智子に無理矢理お礼を言い、二人は離脱した。
「しかしどうしよう、何か良い手はないか…」
綺羅々様にやられそうになった時より絶望した顔をしている。
「こんな話を聞いたことはないか…?」
颯士はゆっくりと口を開く。
「青いペンで書くと記憶力が上がる、とか、ガムを噛みながら勉強すると定着率が上がるとか…」
ゴクリッ…灯里が思わず息を飲む。
「とりあえず、コンビニ行こうか…」
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二人はガムと青ペンをコンビニにあるだけ買ってきた。
「それでは、始めようか…」
灯里が頷き、黙々と二人は勉強に入った。
「「クッチャクッチャ…クッチャクッチャ…」」
「「クッチャクッチャ…クッチャクッチャ…」」
「なんかさ(クッチャクッチャ)」
「なに?(クッチャクッチャズズッ)」
ヨダレが思わずこぼれそうになる颯士にちょっと引きつつ…
「集中、できなくない?(クッチャクッチャ)」
「うん、まぁ…(クッチャクッチャ)」
ペッ…
紙に吐き出す颯士に、何となく『うわぁ…』ってなりつつ。
100年の恋もちょっとした動作で冷めたりするので気を付けよう。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
テスト期間中の方は、テスト終わってから続きは読みましょうね。
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