惡の字はものによっては入力できないので敢えなく却下されることがある
ちょうど今日の特訓が終わった時のことであった。
見計らったかのようなタイミングで着信がはいる。
ゆさゆさとビデオ通話の奥で猫耳が揺れている。
「奴らが集まる情報をキャッチしたにゃ~」
灯里は特訓で流した汗をタオルで拭きながら答える。
「やっとか。待ちわびたわ」
この1ヶ月と少し、堕悪帝国とやらの集会情報をずっと待っていた。
待っている間に特訓ばかりをしていたお陰か白鷺撃(鷲)のイメージ速度と命中精度は相当なものとなっていた。
鷹匠(鷲だけど)になれるんじゃないかと錯覚するほどだ。
「奴らは集会のことを『パーティー』と呼んでるにゃ。このパーティーでは街中で人を襲ったり、引ったくりや強盗まがいのことを好き勝手にやるにゃ。」
「ガチの犯罪集団じゃん」
眉をひそめて灯里が言う。
「奴らはこのルートで『パーティー』に向かうと思うニャ」
画面にマップが表示され、予測されるルートに赤い線がルートに沿って引かれる。
「山道から大通りを抜けて街を暴走するつもりだろうにゃ」
分かりやすくて非常に結構なことなのだが、1つ気になることがある。
横からヒョイと顔を出した颯士がさらっと代弁してくれる。
「綺羅々様、ここまでしてくれて、もしかして暇なの?」
「失礼にゃ!人がせっかく手伝ってやってるのに!!」
元々、あんたが制服の買い取りとか始めたせいでしょうが、とは思ったが、彼女なりにちょっとは悪いことをしたと思うところがあるのかもしれない。
「早く戦うところが見たいにゃ~♪」
…やはりそんなことはないかもしれない。
・
・
・
迎え撃つために待ち伏せているのは大通りに入る前の人目が少ない山道。
ろくに整備もされていない、こんな山道をを通ってくるくらいだし、大軍でくるイメージがつかなかった。
せいぜい多くて10人くらいかな?と予想していたのだが…。
待ち伏せをしていた二人の耳に、徐々にバイクの音が聞こえてきて、いよいよ戦いの時が来たか!特訓から解放だ!
と思って意気込んでいると、
増えていくバイクの音
増えること自体が止まる気配がない
え?何台いるのこれ?広域連合?
隣の山までライトが見える。
ヤバいヤバい…と、とにかくイメージしないと、鷹だっけ、鳶だっけ?
「吉村!」
テンパる私を颯士が一喝した。
コイツ、こんなんだったっけ?
けれど、違和感で一瞬焦りが収まった。
「作戦変更だ、こんな大軍だと鷲を飛ばしても間に合わないし、あっちも小回りが利かないだろう。白龍撃で一気に数を減らそう。」
案外、追い詰められると頼もしいタイプなのかもしれない。
「不意打ちで倒しても奴等に思い知らせることができない、しっかり宣言してから倒そう。後悔を植え付けてやるんだ。」
案外ダークなこと言うもんだね、制服狩られたのがよっぽど腹に据えたのかな?
しかしお陰で少し落ち着いた。落ち着いてやればできる!
大軍の先頭集団の登場に合わせて道の真ん中に飛び出す。
奴らがブレーキをしなかった時も想定して壁を出す準備もしていたが相手も警戒して止まったようだ。
「何飛び出してんだ!轢かれてぇのか!!交通安全とか習ってねぇのかおい!」
確かに、悪者相手とは言え車道に飛び出して良い道理はないのだが、犯罪者共に言われたくはない。
こちらもガツンと一発ぶちかましてやる!
よし――
と、その時、何かの影がライトに照らされた。
「やい!堕悪帝国!!」
逆光でしっかりは見えないが、猫耳のようなシルエットがみえる。
「お前たちの悪事もここまでニャ!!怪我したくなかったら土下座して謝るニャ!!!」
そこには猫耳フードにしっぽをつけた綺羅々様が堂々と陣取っていた。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
面白かったら「いいね」「ブックマーク」などしていただけたらありがたいです!
今後ともよろしくお願いします!!





