制服狩り編7 精神は身体に与える影響も大いにある
格好よく登場し、ようやく活躍ができそうと思った矢先にコレである。
有り体に言うと決め手がない。
そもそも女を殴る、と言うのはさすがに抵抗がある。
こんなことなら合気道でも習っておけば良かったか?とか思ったりもしたが、思ってもどうしようもない。
かくなる上は…
ちょっとタイム。
そう言って引き下がると意外にも追撃がこない。
「…はやくするニャ」
恐らく相手も休む間が欲しかったのだろう。
そして2つ、気付いたことがある。
1つ目は、能力での強力な攻撃は恐らくもう、ないと言うこと。
そこら中に転がっている巨大爪、ここに到着した時より数が減っていることから、能力で生み出したものか霧散して消えていったと考えるのが自然である。
これを使わず、小さい爪の矢やクローでの攻撃ばかりをしてくると言うことは恐らくエネルギーの残量が少ない、ひいては疲れてきているのだろう。
さらに生み出した物体を回収していないと言うことは、そもそもエネルギーを回収する概念もない。
あれだけの量を生み出せること自体が驚きではあるが、イメージして生み出せるのは爪のようなものばかりなことからも、強く明確にイメージする力も灯里ほどではなく、応用力も少ないはず。
そしてもう1つは、不死身ではないと言うこと。
もちろん、元々不死身ではないことは承知の上だが、痛みを感じていない(或いは気持ちよく感じている変態)だけで、身体へのダメージが消えてなくなっているわけではないのであろう。
先程から足を引きずっているように感じる。
灯里とやりあった時に既に大きなダメージを受けていたのだろう。
最初から直接攻撃せず、飛び道具に頼っていたことや、飛び込みを能力でサポートしていたことも、うまく身体が動かない状態になっていたからと考えられる。
こうなったら…
吉村さん、吉村さんや
「な、何よ?」
ごにょごにょ…
灯里に作戦を伝える。
「なるほど、悪くないかも。けどできればデザインが…」
それも確かに、とポケットからメモ帳とペンを出しサササッと描き上げる。
「えー、これはちょっと…と言うかこんなの何で描けるのよ…」
ジトーっとした目で批難してくる。
サラサラサラ…
それならこんなのは?
「それならまだ、まぁ…ちょっとイメージの時間貰えれば…」
それではよろしく。と伝えて作戦開始だ。
「話はまとまったかにゃ?」
残りのエネルギーを注いだのか、クローが両手についており、長さも伸びている。
ちょっと不安もなくはないが、いけるはず。
いくぞ!と普通の文化系男子高校生の足で走って向かう。
灯里のブーストダッシュに比べるとハエが止まるような速度に感じたのか、両手のクローを大振りでクロスさせてくる。
「飛んで火に入るなんとかにゃ!!」
咄嗟にヘッドスライディングで爪の一撃を避けながら、猫女の足の間に頭を突っ込む。
そのまま両腕でがっちり足首をホールド。指で握るよりは抜けにくいはず。
「な、何するにゃ変態!!」
ベタンッ!
咄嗟に座りこまれて太ももに頭を挟まれるが、モゴモゴと苦しみながらなんとかホールドを維持する。
そこに灯里が時間差で走ってくる。
「颯士、あとで説教ね!このスケベ!」
不可抗力です!との魂の叫びは無視して、猫女を蹴り上げようと足を振り上げた。
咄嗟に両手のクローを十字にクロスさせガードするが、そのまま強引に押し上げる。
「颯士から離れろ!この、へんっ…たいっ!!」
プスンッ…
ブーストをかけようとした蹴りがガス欠を起こすがほんの少しだけ威力が上乗せされる。
猫女の太ももが颯士から離れ、僅かに浮く。
そのまま灯里は身を翻し、尾行用に具現化していたパーカーを『回収』した。
プロテクター&スパッツ姿になった灯里は、パーカー1枚分のエネルギーで新たなイメージの具現化を始める。
「やめろニャ、このブス!!」
「誰がブスよ変態!!」
ムカッとしながら灯里のイメージしたものが完成する。
「鉄の処女!!!」
女性の形を模した棺が具現化され、猫女を中に閉じ込めた。
エネルギー不足でところどころ穴が空いているが弱っている猫女を行動不能にするには十分だった。
「つっかれたぁ~!!」
灯里が大の字に倒れ込む。
本当に限界まで絞り出したようだ。
その光景を見て信者もざわめきだした。
「まさか綺羅々様が…」
「神が捕まってしまった…」
信者達の様子を見ても、どうやら戦う意思はないようで安心した。
あとは…こっちか。
拘束された綺羅々様とやらに詰めよった。