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制服狩り編3 共通の趣味や話題で盛り上がる仲間がいればそれはもうリア充と言えるのではないか

雑居ビルに入ると、30人あまりの男女がいた。

年齢は、下は高校生くらいだろうか?上は孫がいるような歳に見えるものもいる。


統一性はあまり感じないが、異様な空気を醸し出している。


「あら、新しいメンバーかしら?」


身なりのよさそうな婦人が灯里に話しかけてくる。


ストレートにここで何をしているのかを聞くと


「ここは暗黒の青春を葬るための会、『春葬会(しゅんそうかい)』よ」


と、微笑みながら言う。身なりの良さとは反して目には暗い光が宿っている。


「青春を台無しにされた人達が集まって、失ってしまった青春を供養しているの。」


隣にいた、スーツ姿で頭頂部の禿げ上がった中年が続ける。


「こうして、青春の象徴である制服を葬ることで光のなかった学生時代を供養しているのさ」



そう言うと近くに置いてある学生服を取り上げて、カッターで破き始めた。


中年は続ける。


「私の青春は、こっそりと好きな子の縦笛を舐めようとしたところを見つかってしまってから死んでしまったんだ…」


浪人生のような男も話に割り込む。


「僕は好きな子が忘れて帰った体操服を来ていたところを見つかった」


身なりの良さそうな婦人も話に参加する。


「私はバレンタインチョコに髪の毛と血を混ぜて渡したら居場所がなくなったわ」


そう言いながらセーラー服に火をつける。


全員、自業自得じゃないの…


とは突っ込みづらい雰囲気。



周りの人々も便乗して制服を取り上げてカッターで切りつけたり、ライターで火をつけたりし始める。


完全に狂気だ…


嫌な汗が流れる。


どう歪んだらこんな発想に至るのか、暗い笑い声と共に次々と制服が葬られていく。


どうやらこの、『青春の供養』とやらに使うために制服が集められていたのだろう。


早く止めないとこのままでは自分の制服も危ない、と言うのもあるが…


こいつらのくだらない儀式のせいで颯士が狙われたのが許せなかった。


狂気に満ちた空間を割くように声を上げる。


『首謀者を出せ!!』


ピタッ…


全員の手が止まる。まるで空洞のように闇に染まった視線が灯里へと集まる。


「なんて下品な子…」


「メシアに楯突く気かしら?」


「ここは充実した日を過ごしてる人がきていい場所ではない」


「この為にいくら払ってると思ってるの?」


ぞろぞろと亡者の群れのように集まってきて全員が灯里を追い出そうとしてきた。


いくら気が狂っている連中とはいえ、相手は普通の人達。


全然普通じゃないけど。


うっかり力加減を間違うと折れてしまうんじゃないかという老婆もいる。正直、傷つけるのは抵抗があった。


押し寄せてくる軍勢を、躱し、捌き、距離を取るも埒があかない。


多少手荒になるが仕方ないか…?


そう思った瞬間、奥の扉が開いた。


「なんだか騒がしいにゃあ~」


ふざけた語尾と共に現れたのは、黒い猫耳、黒で統一され胸元を強調したボンテージファッション、変態っぽく見える網タイツ、ムチでも持っていれば女王様と呼ばれそうな格好に、クマのように強調されたアイラインが悪魔のようにも見える女だった。


狂った連中が手を止め、口々に叫び始めた。


「綺羅々(きらら)さま!!」


「メシア!我らを解放したまえ!!」


「仇なすものに天罰を!」


どうやらこの変態女がここのトップらしい。

立ちはだかるのはいつも変態ばかりだ、と内心ため息をつきながら様子をみていると変態女は続けた。


「あなた、リア充っぽいにゃ。ここは青春を憎む人達の憩いの場なの。消えてくれないかにゃ?」


招き猫のような手で、しっし、とあっちいけのジェスチャーをされる。


しかし、こっちはそうはいかない。颯士の為、同じ被害を広げないため、ここでこの組織を潰すと決めた。


軍勢を躱し変態女へと近づくと、変態女は口を開いた。


「帰らないと言うなら…」


ペロッ、と手の甲をなめるジェスチャーをして続ける。


「痛い目にあってもらうかにゃ…」


間。


どう痛い目に遭わせようとしているのか、取り押さえるのが一番か、と、ほんの一瞬頭によぎった瞬間であった。


変態女…綺羅々様と呼ばれていたか、とにかくそいつの顔面が目の前にあった。


ギョッとしている間に、綺羅々様の振りかぶった腕が迫ってきている。

後ろに倒れ込むようにギリギリかわすも、フードに三本線の切り口が入る。


連想されたのは猫科の猛獣だった。

綺羅々様とやらの拳から巨大で黒い三本の爪が生えていた。

躱した体制からサマーソルトの原理で蹴りあげるが、こちらも猫のように反って躱される。


再び出来た距離で冷静に分析してみる。

あの武器、ベアクローって言うんだっけな?

まともに当たったら怪我では済まなそうだけど、見切れないスピードではない。

女の子を殴ったり蹴ったりするのは気が退けていたけどあっちもやる気ならこちらが容赦する道理もない。


先手必勝、今度はこちらから仕掛ける!


トップスピードを最初から出すイメージでエネルギーを爆発させる。


さっきのお返しと言わんばかりに綺羅々様の目の前に高速移動し、そのエネルギーを利用してそのまま双掌打を繰り出す。


腹部に衝撃を受けて軽く後方へ浮くところをさらに高速移動で背後に回り込み、背後に回し蹴りを叩き込む。


吹っ飛び壁に激突した綺羅々様にトドメを刺そうとさらに飛び込が、カウンター気味に綺羅々様のクローが顔へ伸びてきていた。


顔面に突き刺さる直前でなんとか回避するも頬を掠める。


このッ…!


体勢を崩しながらもそのまま前蹴りを繰り出し、綺羅々様から距離を取る。


普通の人なら最初の連撃でダウンしてもおかしくない威力を繰り出している。その状況で反撃までしてくるとは。


そんなことはお構い無しと言わんばかりに綺羅々様はユラリと立ち上がる。


「痛いのは嫌いじゃないにゃぁ~」


ニヤニヤと笑いながら立ち上がる。

ダメージなどなかったかのようにすら見える。


「けど、痛い目は、みて貰う方が好きにゃ」


にゅぅ、と伸びるように綺羅々様が飛びかかってくる。

異様な跳躍力、と思いきや


足から数メートルはあると思われる巨大な爪がグングン伸びて綺羅々様の身体を押し出している。


プツリと足から伸びきった爪を切り離したと思うと、そのまま飛び出した勢いで灯里の顔に蹴りを入れる。


頬が痛むがそれよりも、呆気に取られて油断してしまった。



まさか他にもいたとは。



「こいつも、能力者だ」

ここまで読んでくださってありがとうございます。


面白かったら「いいね」「ブックマーク」などしていただけたらありがたいです!


今後ともよろしくお願いします!!

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