吉村灯里は非日常に困惑する
吉村灯里は女子高生である。
吉村灯里は困惑していた。
「何か白いのがでちゃってる…」
それはドライアイスのように、灯里の右手首のあたりから、ゆらゆらと白い気体が溢れて地面へと流れていく。
空いている左手で押さえるも、手の隙間、指の隙間から溢れ出す。
「何これ、ヤバい…」
マイブームの執事系アニメのキャラとラブラブする妄想ばかりしていたから現実と妄想の区別がつかなくなってしまったのか。なんだか頭もクラクラするし。
ついに幻覚が見え始めてしまったのか。いっそ推しとラブラブする幻覚が見えればいいのに。
そんな余裕のある焦り方をしていた矢先、溢れでるガスのような煙のような噴出物はみるみると形作り、固まってしまった。
「こ、これは…」
奇異の目で見られることを恐れた灯里は、近場の人気のない場所にそれを持って身を隠すことにした。
「美術室」
人が来る可能性は十分にあるが、とりあえず身を隠すには及第点。
木を隠すなら森の中。
石膏の像やらキャンバスやら、ごちゃごちゃしていて謎の噴出物もパッと見は目立たなそう。
しかしこの噴出物はどうしよう。
謎の噴出物は、「半裸の執事の上半身」になっていた。