制服狩り編1 話題に出てくることはフラグになることうけあい
「学生服狩り?」
昼休み、颯士は食後のコーヒー牛乳にささったストローをだるそうに咥えながら聞き返した。
なんでも最近、登下校中の高校生が着ている制服を無理矢理剥ぎ取られる事件が頻発しているらしい。
ちょっとした事件のかおりと非日常感にワクワクしながら雄二は語った。
「セーラー服好きなおっさんなんて紀元前とか原始時代からいるわい、目新しくもない」
と、意外につれない反応をする颯士にちょっと不満げな雄二であったが、何とか盛り上げようと続ける。
「いやいや、それが男の制服も狙われているらしいんだよ。抵抗したヤツは病院送りにされたって話もあるらしい」
大げさな、昭和のヤンキーじゃあるまいし。
内心、どうでもいいなぁと思いながら聞いていたが休み時間も間もなく終わりそう。
コーヒー牛乳のパックを折り畳んで教室のゴミ箱に捨てて、
「まぁお互い気を付けようぜ」
と締めくくった。
それから数日後、いつもの特訓を終え、灯里と一緒に帰っていた。
「しかしこのプロテクター、使えるわね」
なんだかんだと誕生日プレゼントで貰った、制服の下に着こんでいるプロテクターをポンポンと服の上から叩きながら灯里は言った。
軽量、通気性の良さ、制服の下に着ていても違和感のないスリムさ、それでいてちょっとした打撃くらいの威力なら吸収してくれる、素晴らしい性能であることを語ると、少し苦笑いをしながら
「ハハハ…」
とだけ返してくれた。
これで組み手など対人用の訓練も今まで以上に遠慮なくできるし、いざと言うときは戦いにも参戦できる!
今後の計画を色々と妄想していると、後ろからバイクの走る音が聞こえてくる。
マフラーを改造しているのか、ゴツい音が近づいてきた、と思ったらふと襟首の辺りを引っ張られ、一瞬体が浮いた。
バイクの男に制服の首筋辺りを引っ張られていたのに気付いたのは数瞬後だった。
灯里もいきなりの展開にあっけに取られている。
グイッ、と無理矢理引っ張られる学ランに、肩の関節を無理矢理曲げられバンザイのポーズで剥ぎ取られる。
咄嗟に顔面を腕でガードするが、すっぽ抜けた勢いとバイクの走る勢いで体が車道に放り出された。
ゴロゴロと転がり、腕が擦り傷だらけになる。
プロテクターが早速役にたった、体はノーダメージだったし、落ちた衝撃もかなり和らいでいる。
灯里が駆け寄り安否を確認してくれた。なんとか無事なことを伝えたが、灯里の目に怒りが宿っているのが見て取れた。
「なんなのあいつ?」
冷静を努めようとする灯里に、恐らくは今流行りという制服狩りであろうことを伝えた。
バイクは既に遠く、灯里の脚でも追い付けそうにはない。
「絶対逃がさないから…」
やられた本人よりも怒る辺りが正義感の強い灯里らしい。
そんな灯里に感心する反面、どこか置いていかれそうな気持ちを感じたことはあまり考えないようにした。
翌日、放課後に特訓をしている川原へ行こうとすると、スマホへ一通のメッセージが届いた。
『今日の特訓休む』
灯里からだった。
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