神楽坂颯士は非日常に憧れる
少女は願った。
「想いを見ることができれば苦しくなくなるのに」
それは誰もが一度は願うことであり、何ら特別なものではなかった。
ただひとつだけ、少女の想いの強さだけは特別であったことを除けば…
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神楽坂颯士は男子高校生である。
クラスでは特に目立たない、至って普通の高校生。
いつもと変わらない朝の通学路を、いつもと変わらず欠伸をしながら気だるそうに登校する次第である。
通勤するサラリーマン、ベビーカーを押す主婦、なんの変哲もない日常の中で颯士は何気なく思った。
「刺激が欲しいなぁ」
と。
今も世界のどこかでは人が争い、命を落としている。
それに比べれば平和な日常がなんともありがたいことだと言うのは理解しているのだが、戦争も死も経験したことのない(あるわけもないが)身としては、そのありがたみもイマイチ薄め。
そんなことを考えている矢先、突然の強風が日常に吹き抜けた。
比喩ではなくリアル強風が吹き抜けた。
前方を歩くは女子高生。やや短めのスカートに強風は容赦なく吹き付ける。
「パンチラ(Panchira)」
漫画やアニメの世界では良く見かけるものの、人は一生において、果たして何回のパンチラを目にすることができるだろうか。
人によっては全く見ることもないままその一生を終えることもあるだろう。
さながらパンチラとは、雨上がりの虹、極寒の地のオーロラのように、見たい時に見れるものではないのである。
颯士も例に漏れず、人生においてパンチラを拝む機会など一度もなかった。
それどころか、多少は避けていたフシさえもある。
どちらかと言うと奥手気味な颯士は、高校生にもなって女子に興味を持つことは恥ずかしいことと言う認識が強く、パンチラを見たがるなんて助平とからかわれてしまうのではないかと言う心配の方が先行してしまうのである。
うーん、不健全。
そんな颯士の前に降ってわいたかのようなパンチラチャンス。
僅かに風に舞い上がりそうになるJKスカートを前にし、颯士の眠気は一瞬でぶっ飛び、脳ミソはフル回転し始めたのであった。
「パンチラしそう、しかしこれを見たらエロいと思われてしまう、しかし目を逸らすのも不自然だし、しかしこのチャンスを逃したら、いやいや別にパンチラなんか見たいわけじゃないよホントだよ」
心の中を誰に見られるでもないが、つい言い訳までしてしまった、その間わずか0.01秒。即座にスカートは女子高生本人の手により押さえられてしまった。
颯士の内心など毛ほどにも影響なく、パンチラは未遂に終わってしまったのである。
安堵しつつも少しガッカリ。言い訳までして損した気分。
そんなことを思いながらも変わらない日常を謳歌しに学校に向かうのであった。
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