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プラハのトラムで  作者: ピタピタ子
9/15

正体

夕方、ハンネが戻って来た。

「今日、妹とその家族とお昼食べたんだ?」

「どうして言ってくれなかったの?会いたかったわ。」

「いや、それは突然の連絡だったからな。」

彼女は隣に座った。

「今日はプラハにいたから、誘ってくれれば一緒にお昼食べたのに。」

「悪かったな。」

そっと彼女を抱きしめた。軽く頭にキスをした。一緒に寝室に行き、眠りについた。

次の日また目を覚ますと彼女はいなかった。

「また朝早いんだな。」

そう言っていつものトラムを待っていた。トラムに乗ると奥の席に一人の男性が座っていた。いつも座席にある小説の原稿がその男性の下敷きになっていた。彼はずっとスマホの画面に夢中でイヤホンをしていて原稿の上に座ってることすら気がついていない。原稿の扱い方に腹を立てイヤホンを無理矢理引っこ抜いた。

「おい、何すんだよ!!危ねーじゃんかよ。俺が何したって言うんだ。」 

「原稿の上に座ってますよ。これから持ち主に返すところなので。」

「何で俺がどかなきゃなんないわけ?ここは俺の席なんだ。そんな原稿お前以外の誰かが見つけて警察かなんなりに届けるだろ。どうせこんなしかれるような所にあるからただの紙きれでしかないけどな。」

その男性は原稿のことを酷く言った。それに対して、俺は男性の胸ぐらを掴んだ。

「今なんて言った?今すぐそこをどけ。」

鋭い目で彼をにらんだ。大きな声にビックリして、周りが俺達を見た。

「は?どかねーよ。そんな紙切れでムキになるなよ。」

彼を窓の方に押し倒した。俺は他の乗客におさえられた。

「クソ野郎。所詮、お前はスマホとイヤホンの世界しか見えてない可哀想な奴だ。お前が見てる世界なんて小説のネタにもならねーよ。分かったか?返事は?」

そうは言っても男性はどかなかったので、彼を説得するのをやめた。

「もしもし。今すぐ来て。」

電話してから数分して、チケットの刻印のチェックが入った。チェックは俺や原稿を下敷きにしてる男性の所まで来た。

「チケット出してくれますか?」

「はい。」

チケットがスキャンされた。

「ありがとうございます。お隣の方もチケットの提示をお願いします。」

彼は無効のチケットを出した。

「これ駄目です。期限が切れております。」

彼は無賃乗車で罰金を払わされた。しかし頑なに言い訳して払おうとしなかったので、トラムからつまみ出された。

「往生際が悪い。今すぐ降りろ。」

駅のホームで彼らが口論してる様子を窓から眺め、原稿をかかげながらニヤリと笑った。彼が視線をこっちに向けると、原稿を見せびらかした。トラムが再出発して彼の姿は見えなくなった。

「その原稿、そんなに大切なものなんですか?」

一人の旅行客らしき青年が質問した。

「俺の知り合いの大切な原稿なんだ。自分の小説の書いたことを忘れやすい奴だから、これがないと駄目なんだ。そのくせメモしたり、データに残さないからな。」

俺は青年に適当な嘘をついた。彼はその嘘に対してニコリと微笑んだ。

夜別荘に戻ると妻が帰っていた。

「今日もご機嫌ね。また続きの原稿拾ってきたの?」

「ああ、そうだ。危うく、原稿が受け取れなくなるところだったけどな。」

ことの経緯をハンネに話した。

「ケヴィン、原稿受け取ったじゃなくて、盗み読みしてるだけよ。それに相手の男性は態度の悪い人かもしれないけど、彼はあなたと小説の争奪戦なんてしてないわ。あなたもだいぶ小説にとりこになってるわ。もっと自分の作品のことに集中しないと。」

「集中してるさ。だけど誰か分からない人が書いた小説を読むことも今同じくらい大事なんだ。」

ハンネの言うことを受け流し、また小説を読み上げた。

「今日も読むからな。」

ハンネが俺から小説を奪い取った。

「今日は私が読むわ。「ある日の朝、エヴァと一緒に朝食を食べた。

「何だか、最近良いことでもあった?」

「何でもないよ。エヴァには関係ないだろ。」 「幸せそうで何よりね。今の私には幸せも何もないわ。」

複雑な表情を浮かべていた。

「なんでもないわ。」

「そう言えば、一つ聞きたいことあるんだ。」

「話して。」

「白い家のイレナ、どんな子なんだ?街の皆が惑星の大脱出した前もあんなふうに閉じこもってたのか?」

「ちょうど皆がこの街にいる時、この街には白い教団という宗教を大部分の人が信仰してたの。」

「エヴァもイレナも信者だったのか?」

「私は違うわ。私は何も信じていないわ。頭おかしいと思ってる?」

「いや、まだ何も言ってないけど。」

「イレナは?」

「彼女はただの信者では無かったみたいなの。」

「どういうことだ?」

エヴァの説明によると、イレナは白い教団で信じられている白女神と近い存在だった。2000年前イレナ先祖の女性エステルが街を襲う大洪水で溺れそうになっていた所を女神が救ったと白い教典に残っている。その後女神はエステルの身体に乗り移り、街の人々を全員救ったと記録されている。それから白い教団という宗教団体が出来上がり、街の多くの人に信仰された。エステルは女神に近い存在。イレナもその祖先で女神に近いので彼女も一緒に崇拝された。

「あの白い家は信者にとっての神聖な場所なのか?」

「そうよ。女神が現れる特別な場所と言われてるわ。」

「でも何でイレナは仮面なんてしてるんだ?」

「あの宗教の決まりよ。女神に近きものは仮面をしなきゃいけないの。もちろん最初からそうだったわけではないわ。あの仮面は女神がエステルに差し上げた特別な品と言われてるわ。」

「女神って本当にいたのかな?」

「いるわけないわ。女神がいたら私なんて幸せ三昧よ。それに洪水も仮面もただの偶然よ。心の弱った人達が極限まで落ちて心の拠り所を作っただけよ。」

エヴァは白い教団に対してすごい嫌悪感をあらわにしていた。

その日の夜、エヴァの部屋をのぞいた。何も手がかりが無かったので、部屋を出ようとしたらエヴァが部屋に戻った。

「何してるの?もしかして私の足を見ようとしていたの?気がついて無いとでも思った?」

エヴァがどんどんせまり、ベッドまで移動させられた。」」

「続きは俺が読み上げる。」

俺はハンネから原稿を取り上げた。

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