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プラハのトラムで  作者: ピタピタ子
8/15

原稿を手にとり、続きを読んだ。

「ここからよ。」

「分かった。「エヴァの所に帰ると、エヴァとシュテファンがいた。

「カレル、どこ行ってたの?」

「白い家さ。イレナに会いに行ってた。」

「あの子に会いに行ったの?」

「ああ。」

エヴァは黙っていた。

「どうしたんだ?何で話さないんだ。」

「あの子に会ってどんな目にあっても知らないわ。関わるべきじゃないわ。」

エヴァはすぐに荷物をまとめて外に出た。

3日後、また白い家に行った。

「元気だったか?」

「うん。何とかね。」

「もっと君のことを知りたい。仮面外してくれないか?君を知りたいんだ。」

「嫌よ。仮面を外したら私じゃないの。」

イレナに飛びつき、彼女を押し倒した。彼女は悲鳴をあげた。

「何すんの?離してよ。」

「仮面を外せよ。」

「嫌よ。」

彼女は必死に抵抗した。

「見せろ。」

シュテファンが扉を開けて止めに入った。

「カレル!!」

大声で呼ばれてイレナから離れた。

「すまなかった。」

俺はシュテファンと一緒に家を出た。彼女は俺が離れていく様子を窓辺でずっと見ていた。しばらく白い家にご飯を持ってくのはシュテファンだけになった。俺は双眼鏡で白い家を見ようとしたが、緑で見ることが出来ない。

ある日、もうあの一件を忘れたかと思い白い家に行った。鍵を開けたがそこにはイレナはいなかった。部屋の電気は消えていた。本棚からある一枚の絵が出てきた。一人の女性の周りに民衆が集まる様子を描いた絵だった。女性からは神聖なる雰囲気を感じた。この街で信じられてる女神なのだろうか?その絵をカバンに入れた。部屋の中をくまなく見ると、小物を入れるような小さな隠し扉があった。中を恐る恐る開けた。すると一冊の辞書が入っていた。ペラペラめくると、イレナの読んでいる本と同じ言語の本だった。その言葉は書き言葉だけなのか発音記号がなかった。イレナはどうやってこの本を読めるようになったのかますます気になった。辞書も一緒にカバンにしまった。エヴァの所に戻るって絵を自分の部屋に飾った。

「本当に美しい女神だ。あなたの名前は?」

ひたすら絵に話しかけていた。当然だが何も答えることはなかった。辞書を手にとり、ひたすら単語を書いていた。

「何やってるの?面白そう!」

「シュテファンには難しいことだぞ。もっと大人になったら分かるかもな。」

俺は元の惑星で両親が多国籍で出張とかも多かったので、小さい頃から色んな言葉を知っていた。言葉を知っていないとおいてかれるような環境にいつでもいた。しかし今回の言葉は習得するのが難しそうだ。辞書に発音記号も何も表記されてない未知の言語だ。ひたすら書き出した。部屋にあるもの全てにイレナの本の言葉を付箋に書いて貼った。その言葉は「イレナ語」と名付けることにした。

イレナのいない間に部屋に入ってはイレナのことをひたすら調べていた。あの一件から3週間後、久しぶりにイレナに朝ご飯を持っていった。

「カレル、どうして突然消えたの?」

「君があのことで俺を嫌いになったと思ったから。」

「怒ってなんかない。仮面の下は見せられないだけなの。」

「そう言えば、外に出ないのか?ずっとここにいると暗くならないのか?」

「平気よ。小さい頃から外に出たことないから今も一歩も外に出てないわ。」

彼女は嘘をついていた。家にいない時間もあるから。それを聞くと家に勝手に入って辞書などをとったことがバレてしまう。だからそのことについて聞かなかった。

「突然消えたりしないで。どこかで死んだかと思ったわ。」

「シュテファンから何も聞いてないのか?」

「あの子は自分の話しかしないわ。」

「そう言えば、彼氏はいるのか?」

「生まれてからずっといないわ。欲しいとも、いらないとも思ったことないわ。初恋が来たかもどうかも分からないわ。いなきゃいけないかしら?」

彼女は笑った。

「そんなことは言ってないけどな。」

帰宅して、今日の出来事を日記に書いた。」今回はここで終わりだな。」

「カレルはイレナに夢中ね。彼の行動は時には彼女を傷つけそうね。彼女みたいなタイプは触れられたくない部分に踏み込まれると、とても感情的になるわ。」

「カレルは良い意味で言えば自分に正直な青年だな。悪く言えば自分をコントロール出来ない部分もあるな。」

その日はひたすらハンネと小説について議論した。それにしても作者の手がかりがつかめない。ただ一つ分かるのはあの小説の作者は俺より早い時間にトラムに乗ることだ。俺より早起きをする人物だ。

「そう言えば、今日私の紅茶勝手に飲んだ?一つ無くなってるわ。」

「外に出てたから、飲んでないよ。そんなに紅茶が気になるなら一緒に新しいの買いに見に行かないか?」

「外に出る前に飲んだんじゃないの?とにかく飲むなら先に言って。」

次の日起きるとハンネはもう出かけていた。窓から光がさしていた。スマートフォンが振動した。妹からだ。

「もしもし、お兄ちゃん?」

「おはよう。どうした?」

「良かったら一緒にお昼食べない?」

「良いよ。俺の別荘で食べないか?」

「もしかして作ってくれるの?」

「もちろん。簡単なものだけどな。」

「ありがとう。またね。」

妹からの誘いに乗ると。キッチンなどを掃除した。適当に料理を作りながら、昨日読んだ小説の原稿をチラチラ読んでいた。続きがないか楽しみにしていた。

お昼になると妹とその旦那と子供が押しかけた。

「お兄ちゃん、好き嫌いとか無くなったね。子供の時は好き嫌い多かったのに。」

「もう子供じゃないからな。そう言うマリーはブロッコリー苦手だよな。まだ食えないの知ってるよ。」

「食べれないわ。」

「ママ、ブロッコリー食べれないの?何だ、ママも苦手なものあるんじゃん。私には好き嫌いするなと言うのにね。」

マリーはからかわれた。その様子を見て俺とマリーの旦那は笑った。

「お兄ちゃん、声が大きいよ。子供に聞こえたじゃないの。」

「そういうつもりじゃなかったんだよ。」

俺はある話をあげた。

「そう言えば、最近トラムで面白い小説の原稿拾ったんだよ。毎回同じ時間に同じトラムで続きの原稿が置いてあるんだ。」

「人の原稿勝手に見てるのね。私だったら秘密にしてるもの見られる感覚だわ。」

「いや、毎回同じ時間同じトラムの同じ席に置いてあるから、作者は誰かに発信したいだよ。」

「何だか分からないけど、その小説の世界に入り込み過ぎじゃない?自分が自分でいなくなるような感じよ。お兄ちゃんが自分じゃない何かに引き込まれてる感じがするわ。」

俺は妹に心配しすぎだと言って話を流した。そして妹たちを駅までおくって、カフェで原稿をひたすら読んだ。

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