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プラハのトラムで  作者: ピタピタ子
13/15

衝撃

「ここで終わりか。早く続きが読みたくなるね。」

読み終わった原稿を机の上に置いた。

「イレナは少し悪魔的な要素を感じるわね。」

「それより一つ分かったことがあるんだ。」

「何?小説の内容のこと?」

「いや、これを書いた人のことだ。座席にある原稿を回収しようとしたら長い髪の毛が一本のってたんだ。どう見ても女性の髪の毛だ。原稿の作者が女性だって分かった。」

「それで肝心の作者は分かったの?作者が分かってないなら意味ないわ。」

妻はすぐに寝たが、俺は作者とあの小説が気になって眠れなかった。

そしてハンネは仕事に復帰するため俺より先にロンドンに戻った。俺はプラハの住民に原稿のことを調査した。中にはフランス語、オランダ語、ドイツ語と英語で話せるもいた。

「ちょっとすみません。」

「あれ、ケヴィンさんじゃないですか。」

振り向いた相手はハンスだった。

「ハンスか。後ろ姿で分からなかった。大学の方は順調か?」

「最近、発表とか終わったのでましになりましたよ。」

「それより、カフェで話せないか?」

彼をカフェまで連れ出した。席に座り、トラムで拾った原稿をテーブルに置いた。

「この原稿、ハンスだったら誰が書いたと思う?」

「そんなこと言われましても、ケヴィンさんじゃないですし。」

「例え話だよ。仮にハンスが俺だったら、作者はどんな人だと思う?」

「内容自体は読んでませんが、きっとケヴィンさんをよく知ってる人で、その人も小説をよく書く人だと思います。誰にも小説を読んでもらえなくて、成功してるケヴィンさんにその小説を読ませたのかと。」

「成功してる小説家ならいくらでもいるだろ。それにプラハ出身じゃない俺だし。」

「元々プラハ在住のあなたのファンがあなたに一番読んで欲しくて、わざと置いたのかもしれないです。きっと読んでもらうなら小説家に読んで欲しいって思ってるんですよ。」

原稿を持って、ハンスと別れた。

「また何かあったら、お話しましょう。」

あれから何度も同じ駅、同じトラム、同じ時間に乗ったが、いつもの座席には原稿がまったく登場しない。続きが気になって仕方ないのに、原稿がまったく現れない。突然原稿を書かないのはわけがあると思い、すぐにハンネに電話した。

「もしもし、ヴァカンスはまだ楽しんでる。」

「昨日はブラチスラヴァに行ってきた。それより、聞きたいことがあるんだ。正直に答えて欲しい。」 

「いいわ。用件は何?」

「あの原稿の作者が分かったんだ。作者について聞きたいんだ。」

「分かったのに、何で何も分からない私に聞くの?」

「君が「白い家の仮面」の作者でしょ?」

「違うわ。」

「いつも俺がトラムに乗る日、俺より早く起きる。それに君とどこかに旅行する日は原稿なんて座席にない。例えいつも原稿を回収する時間でもね。」

「私じゃないわ。よく読み直して。小説家なら分かるでしょ。それに私の作品あなた全部読んでるのよ。分かるでしょ?私があんな文章書かないってことくらい。」

「それ以外にも気になることがある。君が仕事に復帰してから、トラムで原稿を見かけなくなったんだ。どういうことか説明してくれるか?」

「待って。私、本当に何も知らないわ。どれもこれも偶然よ。決定的な証拠はあるの?」

「特にないけど、女性であることは確かだ。」

「女性なんていくらでもいるわ。とにかく私じゃないわ。」

ハンネは疑われたことに対して怒って、電話を切ってしまった。妹とかにも電話したが、何も手がかりがつかめず1週間が経った。

机に座り作業に入ろうとした。新しい小説のプロットが出来上がったが、アイデアはあるのにトラムの小説で頭いっぱいだった。突然消えたモヤモヤ感に襲われた。思わずベッドに横たわる。


「あなたは誰?」

「俺はベルギー出身のケヴィン・デ・スメットだ。」

「ベルギー?どこなの?」

一人の青年が突然目の前にいた。

「ヨーロッパにある国だよ。それより君は?」

「カレルだよ。違う惑星から来たんだ。」

「カレルか。いい名前だな。それより彼女とはどうするんだ?裏切られたままで終わるのか?誰もお前を助けられるやつはいないぞ。」

「何でそのことを知ってるんですか?」

「俺は君の見ているものが分かる。彼女だと思ってた人は既に恋人がいて邪険に扱われたんだろ。1ヶ月も暗闇の中に閉じこもってどうするんだ?早く行動しないと何も産み出されないぞ。早く早く。」

カレルの周りに色んな影が現れた。

「早く行動しろよ。」

「これからどうするんだ?」

影も俺と同じようにカレルに行動するように促す。

「うるさい。」

カレルはペンと紙を俺の飛ばした。鉛筆は口の中に入り俺は倒れた。

目が覚めて、夢だと気がついた。

ハンネに電話をした。

「あら、元気にしてた?」

「なんとかね。仕事の方は順調か?」

「大したことないわ。休んだくらいで仕事を忘れるわけないわ。」

「大事な話があるんだ。」

「今度は何?また私のことを小説の作者だと言いたいの?」

「そうじゃない。今度小説を発表するんだ。最高な傑作になりそうなんだ。」

「スランプから脱出出来たのね。おめでとう。それでどんな作品かしら?」

「トラムで拾った「白い家の仮面」を俺の言葉でアレンジして、自分の作品にするんだ。」

「何言ってるか分かってるの?盗作は駄目よ。そんなことして許されないわ。」

「いや、あれは今の俺に必然だったんだ。続きがないのは続きを俺にたくしたからなんだよ。」

「自分の都合の良いように解釈してるのね。それでお金を貰うなんて小説家としてのプライドはどこに行ったのよ?」

「続きは俺が作り出す。あの世界は俺を求めてる。」

「どうなっても知らないからね。」

ハンネは心配そうな声で電話を切った。


ロンドンに戻り、原稿を出版社に送った。その後の続きは白い家でイレナと会い、イレナに乱暴なラファエルに逃れるのに、カレルと付き合った。ラファエルとカレルが対面した時に作り話をしたのはラファエルからの暴力から逃れるためだった。イレナはラファエルからカレルに乗り換えたいと告白した。カレルは葛藤しながらもイレナと共に人生を歩みたいと考えた。何回かイレナと口論になりながらも、お互い分かり合って行く。ある日、カレルがエメラルドの指輪を箱に入れてイレナにプロポーズする時、ラファエルがそれを盗んだ。二人は殴り合いをした。イレナが止めてもお互い止まることは無かった。しばらくすると足が滑り、カレルは誤ってラファエルにキスをしてしまい、ラファエルは気絶した。そしてイレナの手にエメラルドの指輪をはめた。エメラルドの指輪はカレルやラファエルの指輪と同じように外れ無かった。二人は結婚式を挙げて幸せに暮らす。その頃、ラファエルは黒い家の近くに住んでる女性ソフィアと結婚した。その女性がいながらも双眼鏡でイレナのことを毎日見たり、手紙を毎日書いたりしたが彼女は全く振り向かない。未練がましいラファエルは彼の妻と黒い家でずっとイレナを待った。白い家とつなぐトンネルで白い家に向かう場面で物語の幕を閉じた。


「白い家の仮面」を発表するとかなり大ヒットした。待望の新作にファンが感激したり、取材などが殺到した。

ある日、サイン会が行われた。

「待ってました。今回はいつもとまた違うミステリー小説ですね。ここにサインしてください。」

一人の青年にサインをする。色んな人にサインしていく。

「また会いましたね。新作楽しみにしてました。覚えてますか?プラハでたまたま会った写真家です。」

青年は小説を目の前に出した。

「あの時のか。名前は?」

「パトリックです。」

サインを書くとパトリックは喜んで帰った。それからもしばらくサインの嵐だった。しばらくして終わった。会場を抜けると妹から電話が来た。

「こんなにヒットするなんて、意味のある休暇だったのね。」

「プラハが作品作りに俺を読んでた気がしたからな。」

あれから1週間後新しい小説作りに挑んでいた。スーパーに寄ってミネラルウォーターなどを買った。家に戻ると電気は消えていた。俺が留守の間にハンネは出かけてしまったのだろうか?

「ハンネ。何で電気消してるんだ?いるなら返事しろ。」

何も反応がない。

「出かけたのか?」

書斎に入ると何者かに襲われて、目隠しされてどこか分からない所に連れて行かれた。解釈を誤った俺をトラムの小説の作者が恨んだのだと自分の中で悟った。

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