関係
いつも相変わらず夜の時間に原稿を読み上げていた。
「続きはここからだな。「エヴァが俺を抱きしめる。彼女の香水の匂いが広がる。
「こういうの初めてかしら?」
「1回位はあるけどな。」
年上すぎる女性とは初めてだった。ゆっくりお互いが全身で触れ合う。彼女は俺にキスした。
「旦那は良いのか?」
「もう私の心の中にはいないわ。そんなことはどうでもいい。今が楽しければ良いのよ。」
毎晩、部屋の扉が空いてたのは俺に気を引かせるためだった。床には服が転げ落ちていた。俺とエヴァは激しく動いた勢いでベッドから落ちる。お互いの声が響き渡る。俺の叫び声で夜の情事は終った。服を着終わるとシュテファンが部屋に入った。
「何してるの?」
「お前こそもう寝る時間だろ。子供は早く寝ろ。」
「トイレに行ってたの。部屋が空いてたから何があったか確認して来たんだ。カレルも大人じゃないのに、ガキ扱いしないで。」
眠そうにしながら話した。そんな彼をエヴァは部屋に戻した。
「危なかったわね。」
「隠すきないじゃないか?」
朝目を覚ますと、エヴァとシュテファンはもう起きていた。
「二人とも早いな。何でいつもより早く起きてるんだ。」
「一年に一度日の出がキレイな日があるの。」
「教えてくれても良いのに。」
二人と距離を感じた。俺は白い家に行った。
「イレナ、今日もご飯届けに来たよ。」
「ありがとう。ご飯食べ終わったら1時間くらい話せない?」
「良いよ。」
俺は白い家を出て、適当に時間を潰した。
「入って良いか?」
「良いよ。」
「イレナは女神の存在信じてる?」
「信じるも何も、私は女神に近い存在なの。女神そのものと言ってもおかしくない。」
「自分の一族を誇りに思ってるんだな。」
もしかして、あの絵に描かれているのは白い教団の女神に違いない。
「これ見て。キレイでしょ?」
彼女は突然箱を取り出しイヤリングを見せてきた。
「これはね。もう顔も覚えてないお母さんのかたみなの。」
「身につけたことはないのか?」
「ないよ。」
俺はイヤリングの箱を閉じて、窓を開けて外に投げた。
「何すんの?母から貰った唯一のものなの。どうしてくれるの!!」
イレナはすごい剣幕で怒った。
「落ち着いて。怒らないで。」
「怒るに決まってるじゃないの。もうどうすれば良いの。」
イレナは呆然としていた。
「外に探しに行くぞ。」
イレナの手を引っ張り、外に連れ出した。
「ちょっと、どこに行くの?そんなことして見つかると思ってるの?外は危険なのよ。」
「必ず見つけ出す。約束する。だから心配するな。俺についてこい。」
ずっとイレナの細い手を離さなかった。
「こんな所、探しても見つからないわ。」
「イレナの中ではそうかもしれないが俺は見つけ出すからな。」
森の中をくまなく探した。草の中にあるかも確認した。だが中々見つからない。俺は土まみれになっていた。イレナはがっかりしていた。街の方に出てベンチに座ると、その下にイヤリングの箱があった。
「見つけた。ほら、見つけたぞ。」
「良かった。ありがとう。本当に見つけるなんてね。」
「外の空気ほとんど吸ったことないだろ?どうだ?心地良いだろ。」
「思ったより空気が良いね。白い家以外は汚れた所だと思ってたわ。外は邪悪な空気に包まれている所だってずっと聞かされてた。」
それからもイレナはクローバーをつんで、花かんむりを作ろとしていた。中々上手く作れずにいたので、しょうがなく俺が代わりに作った。
「似合うじゃん。」
そう言われると、イレナは笑った。仮面をつけているのに、笑顔が伝わった。
飲める温泉が湧き出る所に連れて行った。お湯は透き通っていてきれいだった。水面に映る俺達を見ながら話した。
「これ飲みな。美味しいから。」
「温かい。身体の芯まで暖まるわ。外にこんなキレイな水があると思ってなかったわ。」
白に鳥の文様のあるお湯のカップを彼女にプレゼントした。そして彼女を家にかえした。
「こんなこと言うのは変かもしれないけど、今日が人生で一番楽しいときだったわ。じゃあね。」
イレナの家から離たあと、数メートル先に何が光りだした。大きな木で何が一瞬だけ光る。登ってみると、3つの指輪があった。一つはダイヤモンド、2つ目はエメラルド、3つ目はアメジストだった。俺はダイヤモンドとエメラルドだけ手にとった。ダイヤモンドの指輪を試しにつけたが、外せなくなってしまった。指輪を外すのを諦めて、いつも歩かない道を散策した。しばらく歩くと黒い家が見えた。黒い家を見ると中に人影があった。恐る恐る近づくと人影がなくなってしまった。また背後に人影を感じたが、後ろを向くと誰もいなかった。
帰宅くるとエヴァが庭の掃除をしていた。
「あら、おかえり。」
エヴァは指輪を見た。
「その指輪どうしたの?」
「森で拾ったんだ。」
「そう。」
彼女はすぐにどこかに行ってしまった。後ろからシュテファンが叩いてきた。
「痛いよ。何するんだ。」
「ごめん。それより指輪なんてして、誰かにあげるのか?」
「ああ。もう一つはあの白い家のイレナにあげようと思ってる。」
「そういう関係だったんだ。じゃあ、僕はもうあの家に行けないね。」
彼はくすりと笑いながら俺をからかった。部屋でイレナの所でとった本を解読したがまだまだ読めなかった。諦めて本を閉じた。」」
「カレルとエヴァは一線を踏んでしまったのね。でも一度だけの関係な感じね。イレナの心情の変化を感じるわ。カレルが殻を破ったのよ。」
「イレナにどんどん引き込まれてく感じだな。強引な所多いけど、よく言えばイレナへの気持ちは正直だな。」
「そう言えば、プロポーズしてくれたのあなたの方からだったわよね。いつもより改まった格好で、高級なレストランなんて連れてくもんだから、バレバレだったけどね。」
「プロポーズくらいそうでも良いだろ。そう言えばこの指輪、君の方はアメジストで俺の方はエメラルドだね。」
「私の好きな色あの時話したことないのに、紫に輝くアメジストの指輪をくれて嬉しかったわ。」
結構当初の話をして一日はすぐに終った。