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第四話 初期山札①

 神符とは大別すると、六種類ある。

 勾玉、神降ろし、神具、加護、呪詛、禁厭である。


 神具とは、神降ろしを成功させた神へ装備させる神符である。

 攻撃力や防御力を増減させたり、特殊な効果を付与させたりする巫術となる。


 加護とは、自陣を強化させる神符である。


 呪詛とは、加護とは反対に敵陣を弱体化させる神符である。


 禁厭とは、敵の神具、加護、呪詛を打ち消す神符である。


 悠希は、自身が知らない神具の内容を何度も確認した。


 未知であることは、ある意味では当然でもある。

 神話の世界に馬車はともかく、自動車なんて絶対に登場するはずもない。


 絵柄がどう見ても、コンパクトタイプの自動車であるため、実は馬車だったいうような認識違いもあり得ない。


(電気自動車の神版なんだろうってことは大体分かる。便利機能が満載なのは嬉しい。世界観を無視してるけど、いいんだよな?俺のせいじゃないし)


 悠希は長いことこのカードゲームをプレイしているが、「【神具】神気自動車」というカード名も「種類《機具》」という言葉も初見だった。


 ここに来るまでの悠希の知識では、神具というものは武具・防具・装身具の三種類しか存在しない。しないはずだった。


 機具なんてものは見たことも聞いたこともない。


「ゲームの世界を完全再現ってわけではなく、オリジナル要素があるってことか……」


 彼に植え付けられた知識には神符に関するものがなかったため、漠然と同じ仕様なんだろうと考えていたが、そう思うのは危険なのかもしれない。

 ゲームの知識があるのは良いことのはずだが、先入観を持たないよう注意しなければならないようだ。


 悠希は何とか気を取り直して所持神符一覧に触れると、本が自動的にそのページを開いた。


(便利っちゃ便利だな。この怪奇現象には慣れてきた自分がいる)


 悠希は諦観を覚えながらも、物理法則を無視する現象を見つめる。


 本の中には八つの絵札が表示されていた。


 一ページに四枚の絵が記載されているため、左右合わせて八枚の神符が確認できる。


 悠希は三十枚の神符を確認した。


========================================

天属性

 【勾玉】黄玉 二枚

 【神降ろし】金鵄きんし

 【加護】電光石火

 【呪詛】感電


地属性

 【勾玉】翠玉 二枚

 【神降ろし】保食神うけもちのかみ

 【神降ろし】大屋都媛命おおやつひめのみこと

 【神具】銅剣


陽属性

 【勾玉】紅玉 二枚

 【神降ろし】奥津日子神おきつひこのかみ

 【呪詛】鬼火

 【禁厭】浄火


水属性

 【勾玉】蒼玉 二枚

 【神降ろし】少名毘古那神すくなびこなのかみ

 【神降ろし】泣沢女神なきさわめのかみ

 【禁厭】火伏せ


和魂属性

 【勾玉】白玉 二枚

 【神降ろし】道俣神ちまたのかみ

 【神降ろし】大口真神おおくちのまがみ

 【加護】癒しの霊薬


荒魂属性

 【勾玉】黒玉 二枚

 【神降ろし】八十神やそがみ

 【呪詛】常闇

 【禁厭】影武者

========================================


 神世大戦には六つの属性がある。天地陽水の四界と、和魂・荒魂の双璧である。


 天。風や雷を司る黄の属性。勾玉は黄玉。

 地。石や樹木を司る緑の属性。勾玉は翠玉。

 陽。火を司る赤の属性。勾玉は紅玉。

 水。水や氷を司る青の属性。勾玉は蒼玉。

 和魂にぎみたま。主に医術を司る白の属性。勾玉は白玉。

 荒魂あらみたま。主に幻術を司る黒の属性。勾玉は黒玉。


 陽属性の神の力を行使するためには紅玉がいる。

 水属性は蒼玉、地属性は翠玉、天属性は黄玉、和魂は白玉、荒魂は黒玉をそれぞれ使うことになるわけである。


 和魂と荒魂は分かりにくいかもしれないが、西洋ファンタジーでいうところの光属性、闇属性と捉えて問題ない。


 勾玉については、四界並びに双璧の六色を二つずつ手に入れたことになる。

 ただ、描かれている勾玉は一つずつであり、絵札の右下に所持数を示すと思われる「二」が記載されていた。

 重複するカードが何枚も記載されているとその度に捲らなければならないので、ゲームどおりのこの仕様は助かる。


 勾玉はイラストの中には色こそ違うが、学校の教科書で見たことのある形が描かれている。


 悠希は、ガチャで手に入れた機具を装備できる道の神から確認した。

 多少なりとも仕様が異なっていようとも、神の名を聞けば、それに該当する神格は把握している。


========================================

 【神降ろし】道俣神

 神格《道の神》

 属性《和魂》

 白玉《一》消費。

 攻撃力《一》。防御力《一》。

 大和の地形を網羅している。

 神降ろしを成功した場合、巫へ千里眼を付与する。

 道俣神が現世に存在しない場合、この効果は無効化される。

========================================


「いや、千里眼って……もはや、カードゲーム関係ないじゃん。そりゃ、あってよかったけど」


 悠希は呆れを隠せない。


(こりゃ、全部のカードを再確認する必要ありだな)


 やり込んでいるカードゲームであるから、全てのカードの効果を把握できている自信があると悠希は思い込んでいたが、やはり先入観に囚われていたようだった。


========================================

天属性

 【神降ろし】金鵄

 神格《鳥神》

 属性《天》

 黄玉《一》消費。

 攻撃力《一》。防御力《一》。

 十秒間、光で敵の視力を奪い、攻撃不能とする。


 【加護】電光石火

 属性《天》

 黄玉《一》消費。

 自陣に天属性がいる場合、その攻撃力を敵一柱に直撃させる。


 【呪詛】感電

 属性《天》

 黄玉《一》消費。

 自陣に雷神がいる場合、十秒間、感電させて攻撃不能とする。

========================================


 悠希は金鵄の説明文で流し読みが止まる。


 彼の知識では、金鵄の効果は「一ターンに一度、光で敵の視力を奪い、攻撃不能とする。」だった。


 【呪詛】感電も同様だ。

 一ターンに一度を見間違うはずもない。


 彼はこの金鵄や感電を山札に入れて、何度もオンライン対戦をした記憶がある。


「ターン制、ないかもな」


 固有能力を検証した際に立てた仮説が、真実味を帯びてしまった。


========================================

地属性

 【神降ろし】保食神

 神格《五穀の神》

 属性《地》

 翠玉《一》消費。

 攻撃力《一》。防御力《一》。

 食物を用意してくれる。


 【神降ろし】大屋都媛命

 神格《木製品の神》

 属性《地》

 翠玉《一》消費。

 攻撃力《一》。防御力《一》。

 木製品を加工してくれる。


 【神具】銅剣

 属性《地》

 翠玉《一》消費。

 攻撃力《一》。防御力《零》。

 自陣に地属性の神がいる場合、その攻撃力を上昇させる。

========================================


 地属性の神降ろしが悠希の生活を支える命綱となる。


(食物や木製品ね。ゲームじゃそんなのなくて、戦力にならない神の位置付けだったのに、まさかこんなことになるとは)


 彼は次の属性を確認することにした。

 

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