第十八話 神々之恩寵十連券
『四日目の特典として、【神降ろし】矢乃波波木神を獲得しました』
悠希は覚醒した。
四日目の朝を迎えた。
悠希は顔をしかめながら、起き上がる。
(……これが、二日酔いか)
重兵衛からもらった神酒は想像を絶する美味だった。
彼は昨日に現地人と不愉快な邂逅を果たしたが、帰還してからは不機嫌さが多少改善されることになった。
悠希は昨日の出来事を振り返る。
まず、リポップされたが、八雷神を一度倒したため、神符を獲得した。
神符は【勾玉】黄玉だった。
次に、位階が三に上がった。
位階上昇――レベルアップ――の報酬は、神貨一枚だった。
神貨とは何か?
神符と交換できる貨幣のことである。
通常は一枚で交換できるが、希少な神符は複数枚必要になってくる。
これは神世大戦でも実装されていたトレード機能だったため、悠希が混乱することはなかった。
悠希が大和から帰還してしばらくの間、彼の神書が使えなくなってしまった。
より正確には、神書の一、二ページと告知のページしか見られなくなっていた。
悠希としてはこちらの方が異常事態だったため、焦りまくった。
巫術が使えなくなってしまったのかとかなり動揺したのだが、告知のページを確認したら少し落ち着いた。
告知のページには「新機能を反映中です。しばらくお待ちください」の文字が書き込まれていた。
結局、神書の確認はそれから二時間ほど経過した後だった。
交換可能な神符はその時点では、六色の勾玉のみだったため、神貨は使わずに保持しておくことにした。
その後、彼は神託の確認をした。
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★
・≪完了≫荒狂河の地域を探索せよ
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ずっと実施中だった星一つの神託が完了した。
荒狂河の巫たちと接触したことが要因と思われる。
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★の神託を達成しました。≪報酬:神霊玉一つ≫
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完了したことは喜ぶべきことであるが、悠希の機嫌はこの程度で治るはずもない。
彼の機嫌が変化した理由は、星三つの神託の報酬にあった。
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★★★
・≪完了≫荒狂河の民を救済せよ
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報酬一覧を確認した時に、機嫌の良し悪しなど吹き飛んだ。
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★★★の神託を達成しました。
≪報酬:神々之恩寵十連券≫
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悠希は目を見開いて、思わず二度見してしまった。
星三つとはいえ、報酬の内容は破格過ぎたのだ。
神々は、人々を救済したいという現れだろうかと彼は推測する。
ともあれ、悠希は神々之恩寵十連券を即座に使用した。
十連で獲得した神符は、以下のとおりである。
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天属性
【神降ろし】建御雷之男神
神格《剣神》
属性《天》
黄玉《二》消費。
攻撃力《二》。防御力《二》。
地属性
【勾玉】翠玉 一枚
【加護】鉄壁
属性《地》
翠玉《二》消費。
地属性の神一柱に対する攻撃を「二」回無効化する。
陽属性
【勾玉】紅玉 一枚
【神降ろし】奥津比売神
神格《竈神》
属性《陽》
紅玉《一》消費。
奥津日子神が場に存在する場合、その能力を二倍にする。
水属性
【神具】水鏡
属性《水》
蒼玉《二》消費。
攻撃力《零》。防御力《零》。
水属性の神のみ装備可能。呪詛を一度のみ、任意の一体に反射する。
【禁厭】解毒薬
属性《水》
蒼玉《一》消費。白玉《一》消費。
神毒を無効化する。白玉を消費しない場合、通常の毒を無効化する。
和魂属性
【神具】道標の杖
属性《和魂》
白玉《一》消費。
攻撃力《零》。防御力《零》。
道の神のみ装備可能。道の神が使うと、道標となる。
【加護】陽炎稲妻水の月
属性《和魂》
黄玉《一》消費。紅玉《一》消費。蒼玉《一》消費。白玉《一》消費。
この神符が場に存在する限り、巫への攻撃は無効となる。
この神符に対する勾玉消費数が三以下の禁厭を無効化する。
荒魂属性
【勾玉】黒玉 一枚
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悠希は「陽炎稲妻水の月」を獲得して大いに喜んだ。
消費コストは高いが、神世大戦では正真正銘のレアカードだったためである。
ただ、彼は道標の杖を見て首をひねる。
この神符を彼は知らなかった。
杖というからには神具の中の武具であると思われる。
しかし、攻撃力が《零》である点が不可解だった。
武具なら攻撃力が、防具なら防御力が上がるのが普通である。
装身具はどちらも上がらないことが多いが、装備している間は特殊な効果を付与されることが絶対である。
検証してみる他ないと判断し、最後に重兵衛からもらった神酒を味見してみた。
美味しすぎて、徳利の中身を全ていただいた後、二日酔いとなってしまった。
そして、現在に至る。
図らずも解毒薬を使い、その効果を確かめることに成功してしまった。
二日酔いは感知したが、次からは適量を把握しようと誓うのであった。
(位階が上がるタイミングが帰還時ってのは、相応の理由があったわけだ。戦闘中に位階が上がって神書が、巫術が使えなくなったとしたら洒落にならないし)
悠希は心の中で感想を述べる。
朝食を食べ終わった悠希は、所持神符一覧を再確認した。
悠希は所持神符一覧のページへ移動させる。
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天属性
【勾玉】黄玉 四枚
【神降ろし】金鵄
【神降ろし】建御雷之男神
【加護】電光石火
【呪詛】感電
地属性
【勾玉】翠玉 四枚
【神降ろし】保食神
【神降ろし】大屋都媛命
【神降ろし】矢乃波波木神
※神格《箒神》、屋敷神の二柱
【神降ろし】萬幡豊秋津師比売命
【神降ろし】緑之小鬼
【神具】銅剣
【加護】鉄壁
陽属性
【勾玉】紅玉 四枚
【神降ろし】奥津日子神
【神降ろし】奥津比売神
【呪詛】鬼火
【禁厭】浄火
水属性
【勾玉】蒼玉 四枚
【神降ろし】少名毘古那神
【神降ろし】泣沢女神
【神降ろし】夜刀神
【神具】水鏡
【禁厭】火伏せ
【禁厭】解毒薬
和魂属性
【勾玉】白玉 四枚
【神降ろし】道俣神
【神降ろし】大口真神
【神具】道標の杖
【加護】癒しの霊薬
【加護】陽炎稲妻水の月
荒魂属性
【勾玉】黒玉 四枚
【神降ろし】八十神
【呪詛】常闇
【禁厭】影武者
全属性
【神具】神気自動車
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「戦闘するには、まだまだ足りないな」
手札はどんどん増やすべきと改めて決意した
なお、本日のログイン報酬である矢乃波波木神の神格は屋敷神である。
その効果は屋敷に不要な穢れは取り除く。
ゴミを自動的に捨ててくれる。
悠希には大変ありがたかった。特にトイレに関して。
その後、神託を確認する。
無論、生産系の神々には物作りをお願い中である。
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★
・【加護】を五枚獲得せよ
・【神具】を五枚獲得せよ
・【呪詛】を五枚獲得せよ
・【禁厭】を五枚獲得せよ
・所持神符数につき八十枚を超過せよ
・瑞流波の地域を探索せよ
★★★★★
・荒狂河の災禍を鎮めよ
・八雷神を討伐せよ
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彼の顔が徐々に険しくなる。
(八雷神を倒すにはまだ手札が全然足りないな。それに、災禍を鎮めよ、か。俺にやってほしいと。にしても星五つか。さすがに、きついんじゃないか?)
悠希は一度八雷神を退けることに成功したが、運に助けられたことも事実だった。
一度できたのだから、二度目も当然できるなどと楽観的には考えられなかった。
悠希はひとまず重兵衛と会話することにした。