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あの時に戻りたい

今回短編に挑戦してみました。

前作「ラブレターを抱いて眠った彼女を追いかけて」100話完結ものと

連載「間引き草」読んでみてくださいね。

 私は知ってしまった、いえ気がついてしまった。

 廃妃になられた前側妃様のご苦労を。

 人はその立場になってようやく理解が及ぶのだと。


 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


 私は処刑された側妃様の代わりとして側妃候補の一人となり、宮廷へ上ることとなった。

 私を含めて候補は四人。

 皆美しく何処に出しても恥ずかしくない教養の持ち主ばかりだ。


 陛下には既に王妃様がおられるがお子様が中々出来ない。

 陛下はそれでも王妃様を深く愛しておられる。

 おふたりの間柄はこの国にいる者なら知らぬ者が居ない程有名で、結婚してだいぶ経つがそれは今も変わらない。

 それで渋々前側妃様をお迎えになったのだが王妃様を愛していらした陛下の心がそちらに向くことなく嫉妬に身を焦がし、王妃様の殺害を計画した罪により廃妃の上処刑された。

 それが私が知る、事の顛末(てんまつ)だ。


 その後釜に据えられるのは気が進まないが父のたっての願いによって候補となったのだ。

 側妃は一人から多くとも二人を予定しているらしい。

 私としては婚約者がいたにも関わらず父の命令で破棄の憂き目に()いこうしてこの場にいるのだ。


 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


 なんと運の悪いことか、其れから数ヶ月をかけて競わされじっくり吟味された上で私が選ばれてしまった!

 こんな筈ではなかったのに、つい競争とかになると我を忘れて勝ちにいく。

 負けず嫌いのお馬鹿さんが顔を覗かせたのだ。


 適当にやっていれば選ばれなかったのに!

 後悔したが後の祭り、精々(せいぜい)王妃様のご機嫌を伺いつつ小さくなって過ごすのみだ。


 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎


 王妃様は他国から輿入れされて(はや)八年、十八歳で王妃となられて今は二十六歳。

 子供を産むこともまだ可能な筈だ、私は息を殺して離宮の片隅で過ごすのだろうと思っていた。

 側妃として慎ましく。

 思っていたのだ本当に。

 しかし此処(ここ)は戦場と同じ、女の戦場だ。

 そして予想外のこと、それが私に重くのしかかってきた。


 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎


「あーもう、いつになったら終わるのよ。おかしいでしょう、私側妃よ!」

 髪を振り乱し書類の山を掻き分ける。

「ご飯ご飯ご飯が食べたい!お腹すいたー!」

 側妃になってから(ほとん)ど毎日続くこの苦行(くぎょう)


 白魚の様だと言われた優美な指には不似合いなペンダコが出来、手の側面はインクで真っ黒だった。

 紙に指先の油分を持っていかれ指先は粉がふいている。


 側に控えていたメイドがサンドイッチの皿を無言で差し出す。

「ちゃんとテーブルで食べたいのよぉ!朝テーブルで食べたっきり昼もこの状態だったじゃないの!」

「側妃様、此方(こちら)をどうぞ」

「昼もサンドイッチだったじゃないの、て言うか今何時よ。ちょっと時計は?」

「今七時半で御座います」

 隠してたな、さては!

「そんな時間?今日も仕事で一日中缶詰めだったじゃないの。如何(どう)なってるのよ!」

「側妃様のお仕事ですので私には何とも」

「もう終わり!入浴して夕食を頂くわ。準備して頂戴」

 そう言うと部屋を後にする。


 全く冗談じゃない!こう言うからくりだったんだ。

 足をドスドス踏み鳴らし離宮へと戻っていった。


 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎


 私が王宮に来て知った真実。


 陛下と王妃は全くと言っていい程仕事が出来ない。

 いや、やらないのだ。自分達二人に関わること以外は無関心。

 国の事も貴族の事も平民達の事もなんも考えて無いのである。


 それでいてキャッキャウフフは無いでしょう。

 年幾つよアンタ()、うん無い!

 日がな一日お茶したりピクニックしたりパーティーしたりお出かけしたり買い物したりetc⋯⋯。

 似た者同士で頭にウジが()いてると思う。


 前側妃様のご苦労が手に取る様に分かる、私だって殴ってやりたい!

 宰相様もこの状態で家にもほとんど帰れないのだとか。

 お子なんてできる訳ないじゃん!

 私の堪忍袋の尾がキレるまで後⋯⋯5秒!

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