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四十四話 後始末③

 ナインの登場により、場は一気に困惑していた。

 何より、先ほどまで話の中心にいたジェダルは、意味が分からないと言わんばかりの表情をしている。


「き、貴様は誰だっ!? ここをどこだと思っている!! ええい、衛兵は何をやって―――」

「控えよ、ジェダル」


 刹那、重く厳しい一言が発せられる。

 威圧。まさしく、その一言につきる代物。

 それにより、ジェダルだけではなく、ざわついていた他の臣下達も一斉に静まり返った。


「へ、陛下……?」

「衛兵を呼んだところで無駄だ。いや、それどころか、この城にいる騎士や兵士全てを集めたところで、彼女相手では、一分も持たずに全滅させられる。貴様は、わが国の大事な兵士を無駄死にさせたいのか」

「そんな……っ」


 何を馬鹿な、と言いたげなジェダル。当然だ。城にいる騎士や兵士たちは屈強な者が多い。それこそ、国一番の戦力とも言っても過言ではない。加えて言うのなら、魔術師だって存在する。

 それらを全て投入しても一分も持たないなど、冗談にしか聞こえない。


「信じられないか。だが、考えてもみろ。この城には厳重な警備がしてある。それは物理的、魔術的、どちらもだ。しかし、彼女はそれらを簡単にかいくぐりここにこうしている。それが何を意味するのか、最早言うまでもあるまい?」

「……っ!?」


 その言葉で、ジェダルもようやくナインがここにいる異常性、その真の意味を理解する。

 衛兵、騎士、兵士、魔術師……それら全ての目をかいくぐり、彼女はここにいる。それだけで、ナインの実力が桁外れであることを証明していた。


「臣下が失礼をした。それで、今回はどんな要件かな、『楔の魔女』殿」

「何。別に大した要件じゃあない。先日、新しい聖女殿と共にとある事件を解決した。その折、妙な女と出会ってな。そいつは聖女を狙っていたんだが……どうにも後ろ盾があったらしい。確証はないが、十中八九、聖女のことをよく思っていない連中だろう」

「ふむ。それで?」

「ここに来るまでにも聖女の妙な噂を耳にした。恐らく、聖女を陥れるために誰かがわざと流しているのだろう。それに気づかない連中は、どいつもこいつも言いたい放題言っているらしいが。まぁ、噂とは一種の娯楽。何の責任もなく、他人の悪口を言うことで、色々と発散することができるのだろう。それを一々とやかく言うのは、馬鹿らしいとは思わんか?」


 ナインの言葉に、ジェダルは眉間にしわをよせながら口を開く。


「……つまり、聖女殿の査問会を開くなど、ありえないと『楔の魔女』殿は言いたいわけですかな」

「直球に言うと、そうなるな」

「確かに。本来ならば、噂程度で査問会を開くことなどありえないこと。ですが……」

「ですが―――?」


 刹那、場の空気が一変する。

 この場にいる者が全員、まるで唐突に巨大な岩を頭上からたたきつけられかのような、そんな重圧に襲われた。

 たった一人の少女の、たった一言。

 それは、先ほどの国王の言葉とは比べ物にならない程の覇気であった。


「聖女のことが繊細な問題ではあることは認めよう。だが、噂程度で査問会など開けば、その内容の真偽にかかわらず、聖女が噂通りの人間だと言っているようなものだとは思わんのか」

「……、」

「加えて言うのなら、これまで聖女が行ってきた業績を一応調べてはみたものの、何も問題ないと思うが? 魔獣退治ばかりしていると言われているが、それによって助かっている者たちも確かに存在する。それも、聖女の行動を逸脱したものではない」

「だ、だが……!!」

「単騎で行動するのが問題だと? 阿呆が。アレの実力は、既に相当なものだ。下手な騎士だの兵士だのがいたところで、邪魔にしかならん」


 手柄がどうだのという前に、セシリアの実力はかなりのものである。故に、一緒に戦う者たちがそれと同等の力を持っているならまだしも、あまりにも実力がかけ離れていれば、ただの足手まといにしかならない。そして、不幸なことに、彼女の周りにはその肩に並ぶほどの実力者は誰もいなかった。だからこそ、彼女は一人で戦う他なかった。


「他にも妙な噂があるが、どれもこれも下らんものばかりだ。ま、恐らくはあの聖女のことを快く思わん連中が流しているんだろう。そんなものを相手にしてしまえば、それこそそんな阿呆な連中の思う壺ではないか?」

「そ、それは……」

「ま、噂に関しては何かしらの対処が必要、というのは理解できる。オレとしても、交流のある聖女があらぬ噂で色々と言われるのはあまり良い気がしないのでな。その方法はそちらに任せよう」


 ただし。


「あまりに馬鹿げた方法であれば、口出しさせてもらうことにはなるだろうが」


 その言葉と同時に、臣下達の背中に、怖気が走った。

 口出し、というのが言葉通りの意味でないのは馬鹿でも理解できる。そして、もしもこの少女を怒らせるようなことをすれば、きっとただでは済まない。

 ただ言葉を発するだけで、それを理解させられてしまっていた。


「……忠告、痛み入る。今後はそちらに手間を取らせないよう、努力しよう」

「そうしれくれると助かる。オレとて、数十年前のように、王城を半壊・・させたくはないのでな」


 その言葉を聞いた瞬間、何人かの臣下が汗をかきつつ、生唾を飲んでいた。それを見たナインはというと、鼻をならし、踵を返す。


「ではな国王。先の言葉、努々忘れぬことだ」


 短い言葉。

 それを言い終えると同時に、常識外の少女は、一瞬にしてその姿を消したのだった。

四十七話目投稿です!!

面白い・続きが読みたいと思った方は、恐れ入りますが、感想・評価の方、よろしくお願い致します。

それだけで、作者に元気が湧きます。励みになります。そして、もっと構ってほしい愚かな作者が続きを書こうとします。

なので、みんなで馬鹿な作者に餌をやりましょう!!


今後とも、何卒よろしくお願いいたします。

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