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幼き夢は地獄直通定期券  作者: ルースティ
1/1

憂鬱な朝

 今日も携帯のアラームに早く起きろと言わんばかりの音量で起こされ、目覚めの悪い朝を迎えた。また憂鬱な1週間が始まるのかと気を重くしながら渋々と布団から出た後はいつものルーティンを終え、行ってきますの声が寂しく響き渡る部屋を後にし仕事に向かう姿は、道端や川にあるような石ころのような存在であることに変わりはないだろう。もうすでに景色が流れる風景には見飽きており、ウサギのように飛び跳ねていた眩しい心は、墨で塗られたかのような黒さで海深くに沈んでいた。

 「ゲームを作ることに携わりたい」と幼いころは憧れていたなんて、純粋で可愛かったことだろう。「自分ならもっとこうするのに」「どうしてここはこうしなかったんだろう」と制作意欲やアイデアの創造を膨らませることが好きだったあの頃は毎日のようにゲームを遊び、考え、笑い、泣いた。それでもそれほど好きだったのだ。ゲームという短い期間で達成感というものを味わうことのできるツールは物事が長続きさせることが難しく飽き性であった私に、夢という地獄を与えてくれた。その当時はまだ地獄とは気づいていなかったが。ゲームというツールを用いて友達はすぐにできた。流行っている作品をプレイしていれば自然と会話の輪に入ることができたからだ。毎日毎日進み具合を競い合い、容赦のないネタバレを食らったりもしたが何も気にならなかった。気にする必要がなかったからともいえるかもしれない。それくらい集中し没頭し染まっていた上にそれ以外のことが頭に入ってこなかった。ゲームを仕事にしたい。自分でもゲームを作ってみたいと思うようになったのはそこからだっただろう。的外れな夢を目標とした私はそこから勉学に励むのであった。

 夢というものは所詮夢であり、また、天国と地獄は表裏一体である。私の夢は地獄だった。無論、全ての企業が地獄というわけではないのは承知している。私はゲームが作りたかった。私のゲームが作りたかったのだ。言わずもがなその通りである。やりたくもないようなゲームを作ることに私は興味を抱けなかった。あの飽き性である私が情熱や努力を興味もない作品に対してやる気やモチベーションが長続きするわけもなく、死んだ魚の目をしながらプログラミングをするロボットと化した私は無心で会社の最寄駅のホームに足を着き、地獄直通定期券をかざし門をくぐるのだった。、

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