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第6話

いつもより朝の目覚めが早かった。

今日は王より大事な報告があるとのことで重要な集会がある。

寝坊するわけにはいかない。


「おはよう、母さん」

「あなた、ごめんなさい。まだ朝食の支度がだきてないの」

「ここにあるパンで大丈夫だ。昨日はシチューを食べすぎたな」


コップを片手に新聞に目を通す。

強盗や戦争、物騒な話題で枚挙にいとまがない。

呆れた眼差しで熱いコーヒーを飲み干した。


「ユウマはどうだ。昨日はちゃんと帰ってきたのか?」

「ええ。あの子、最近どうしちゃったのかしら。毎日うきうきで帰ってくるのよ」

「若いうちは思いっきり遊べばいいさ。いい友達ができたのだろう」


母さんが焼きたてのパンをテーブルに置いた。

一人でジャムを塗りながら二、三口で頂く。


「今日は遅くなるかもしれん。大事な集会があってな」

「また、ですか?」

「ああ、最近はやたらと忙しくてな。上のせいだ」

「あまり無理はなさらないでください」

「わかってるよ」


身支度をした後、玄関で肌に合わないブーツを履いた。

見送る母さんの左頬に優しくキスをする。


「では、いってくる」


この日は小雨が降っていた。

傘にはじく雨音がなんとも心地がよい。

この時間は人通りが少なく、早めに仕事場に着いた。


「皆の者、せいれーつ!!」

「おはようございます。サトル大将!!」

「朝からうるさいぞ。皆の者って、まだお前ら二人しかいないじゃねぇか」


鞄を床に置き、いつもの作業場に腰を下ろす。

机に置かれた大量の資料におそるおそる手を伸ばした。


「なんだこりゃ。仕事が山積みじゃねぇか」

「はは!今日の大将の予定としましては、軍部集会に部下の訓練、地域のパトロールに住民による苦情対応と大忙しであるからして!」

「だから朝からうるさいぞ!まったく、耳にたこが出来そうだ」

「耳にはたこは出来ないのでありますからして!」


朝のキスの温もりが、一人の部下の吐き出す唾と大声で消された。

白い顎ひげをかきむしりながら、サトルはキツイ目を向けた。


彼らの右手には黒い手袋が装着されている。


「おまえたち。特訓熱心なのは感心するが、たまには休みたまえ」

「は!早くあなたのような一人前になるためには、努力しかないのでありますからして!」

「もうすぐの、あれに備えてか?」

「これが私たちの初陣になります。恥をかくためにはいけません」

「そうなのであります!」


やれやれとサトルはため息を漏らす。

資料に軽く目を通しながら、自前のタバコに火をふかした


「こんな新米まで、戦争に駆り出される世の中かよ」


その日の緊急集会は定刻通り王の宮殿にて行われた。


内容は異民族殺戮作戦の最終確認。

ターゲットはこの【リアル王国】の北に位置する村に暮らす一族。

王国に向けての度重なる抵抗が、今回の殺戮の原因だという。


その討伐部隊に、サトル率いる三番隊が選出されたのだ。


王の口からは例の一言だけ。


『身の程知らずのバカ共に、神からの天罰を』


これがこの国の君主、【ヤーダⅡ世】のポリシーである。


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