第2話
ブックマークをつけてくださり、ありがとうございます。
これからも投稿していきますので、よろしくお願いします。
日の沈みかけた帰り道、ユウマはバツ夫とメメに事の詳細を話した。
「緑の少年、なんだそりゃ?小説の読みすぎだ」
「僕も知りません。何でしょうか。巨大なカマキリとかですかね」
しかし二人は、ユウマの話を全く信じてはくれない。
「ほんとだって。見たんだよ。赤いバンダナを身に着けた男の子」
「お前なぁ、俺たちが探してるのは何かを忘れたのか?」
「え、あ、ゴメン。つい夢中になっちゃって」
「さっさと帰ろうぜ。もうお腹ペコペコだわ」
こうして三人は自分の家へと寄り道せずに帰った。
帰路に着いた後も、ユウマにはどうしてもあの子が気になっていた。
夕食時には父さんと母さんにも尋ねてみた。
緑色の皮膚の男の子を見たと。
「ユウちゃんはまだ11歳よ。そんな冗談が母さんと父さんに通じると思って?」
「そうだぞユウマ。なんだ、マズい物でも食べたのか?」
こちらも全く信じてもらえない。
ハンバーグ定食をムシャムシャ食べたあと風呂に入り、少しだけ勉強した。
でも、あの姿が気になって集中できなかった。
仕方なく床につくが、なかなか寝付くことができない。
(明日行けば、また会えるかな?)
それからユウマは毎日の学校帰り、町を飛び出し森に向かった。
バツ夫からは変な目で見られたが、お構いなしだった。
日が沈むまで何度も森を歩き、木に登り、辺りを探した。
時には門限を過ぎて玄関で立たされる日もあった。
それでもユウマは探した。何度も大声で叫んで。
探して6日、見つからなかった。
ただただ不気味な森の音だけがゆらゆらと響き渡る。
「いい加減でてきてくれよ、バカヤロウ!」
夕日に向かってユウマは木のてっぺんから叫んだ。
当然のようにあの子からの返事は聞こえない。
大きなため息をついた後、足を動かし木から降りようとした、その時だった。
「うるさいぞ。毎晩毎晩叫んでは、いい迷惑だ」
上空から野太い声が聞こえた。
同時に、茶色い大きな羽がひらひらと頭上に落ちてくる。
強い風が吹き荒れ、枝が上下に激しく動いた。
ユウマは幹をがっしりと掴んで離さない。
「き、君は?」
「思わず出てきてしまったぞ、小僧。この森になんの用だ」
ユウマの正面には一羽の大きな鷹が飛んでいた。
人間が背中に飛び乗れるほどの大きな鳥である。
「バツ夫が探していたのって、もしかして」
「子どもは嫌いだ。無邪気に大声上げて、癇に障る」
「君は一体、誰なんだよ」
「この森の主だ。日々森を見まわしては、悪党を懲らしめている」
と、鷹はくちばしに加えていたものを地面にペッと吐き出した。
大きなよだれが雨のように滴れ落ちる。
「お前もこの森にとっては害だ、喰ってやってもいいんだぞ」
「ま、待ってよ!僕はただ人を探してるんだよ」
「人だと、こんなところに。お前ひとりでか」
その時、ユウマの目の前をシュっと何かが勢いよく飛んでいった。
ドバっと赤いしぶきが飛び散る。
ユウマの右手が赤く染まった。
「うぐぅ!誰だ」
「た、鷹さん!大丈夫!?」
鷹の右翼に大きな矢が刺さっていた。
痛がる彼は羽を大きく動かし、大声をあげる。
強風が再びユウマを襲った。
「うわぁ。お、落ちるって!」
懸命にしがみついていると、眼下になにやら緑の小粒が見えた。
目を凝らしてよく見ると、なにかを引いてる姿がみえた。
「も、もしかして…。鷹さん危ない!」
叫んだ時には、すでに二発目の矢が上空へと飛んでいくのが見えた。