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第1話 

「おい、鷹はいたかー!」

「いないよ、本当に鷹なんて見たの?」

「俺は見たんだよ、大きな羽を広げたでっかい鳥が空を飛んでたんだって」


少年ユウマは、友達2人となぜか鷹探しに協力していた。

言い出しっぺはバツ。頑固な男である。

急に呼び出しを食らったかと思えば、無理矢理この気味悪い森に連行されたのである。


「第一、なんで虫取りなんだよ。仕留めたいなら弓とかがあるでしょ」

「うるせぇ!貧乏なんだからこれしかねえんだよ。そんなこと言うなら、オマエが弓をもってこればいいだろ」


汗だくの白シャツを纏った男3人は、虫取り片手に何時間も鷹を探した。

心身が疲れたユウマは大きな岩に腰かけてべったり寝そべった。


「コラ、何サボってやがる!鷹が見つかるまで今日は帰さんぞ」

「ちょっと休憩だって、もう何時間経ったと思って…」

「バツ夫君、バツ夫君!」


垂れ下がった眼鏡を上にあげながら、メメは二人のもとへと駆け寄ってきた。

細々とした身体には到底合わないシャツを着ているせいで、ブカブカである。


「おお、見つかったか!!」

「うん、これ見てよ」


そう言うと、メメは虫取りからゴソゴソと何かを取り出して二人に見せてきた。

手のひらには、一匹の大きなカブトムシが仰向けで脚をバタバタ動かしている。


「バカ野郎、鷹だって言ってるだろ!今日で何度目だこの野郎!」

「ご、ごめん。つい捕ってまった…」


他人の虫取りを巧みに操るメメに説教するバツ夫。

その光景を、ユウマは黙って見ていた。

すると、ゴソゴソと何か大きな音が森から聞こえてきた。


「ねぇ、今なんか音しなかった?」

「しねぇよ、鷹でもいたのか!」


バツ夫とメメは首を横に振る。

不思議に感じたユウタは岩の上に立ち、辺りの森を見渡した。

風に揺れる森の音だけでそれらしき姿は何も見えない。


「おかしい、今日何回もこの音聞いてるんだよなぁ」

「さっさと探すぞ、鷹の巣が絶対この森にあるんだ。まずはそれを探してやる!」


暑苦しいほどに鷹探しに張り切るバツ夫とカブトムシ採集に力を注ぐメメ。

謎の音の正体を突き止めたいユウマ。

それぞれの目的はバラバラだった。


結局夕方になっても鷹は一向に見つからない。

それどころか鳥一羽すら空を飛んでいなかった。

これには流石のバツ夫もやる気の削がれた表情を浮かべていた。


「あ、この音は!」


帰り支度をしていた時、またゴソゴソと物音が聞こえてきた。

昼間の時と同じ音。


「おい、誰かいるの!」


ユウマは慌てて森の中を駆け出した。

どこに行くべきかもわからずひたすらに駆け回っていると、今度は右から音が聞こえた。


「返事してくれよ、誰かいるんでしょ!」


ユウマの声は森に響くが、姿を見せる気配はない。

それでもがむしゃらに走り回り続けた。


目の前に崖があることに気がつかないまま。


「あ…、落ちる!」


気がついたときは遅かった。

足元を滑らしたユウマはそのまま真っ逆さまに落ちようとしていた。


その時、ユウマの右手をぐっと掴む者がいた。彼は大声を上げてユウマを引っ張り上げた。


「た、たすかった。ありがとう。バツ夫…」


胸をなでおろしたユウマが目を開けると、そこにいたのは緑色の皮膚をした小さな男の子だった。

紅いバンダナを頭に巻き、細い目でじっとこちらを見つめている。


「き、君は?」


男は黙ってその場を跡にした。

バツ夫とメメが来たのは、それから間もなくのことであった。


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