第15話
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リアル国は周囲の敵に襲われないよう、国全体が防御壁で囲まれている。
そして国の出入り口となる正門には、石造の監視塔がそびえ立つ。
ここから日夜、兵士たちが高所から監視しているというわけだ。
『なに、また遠征?』
『ここんとこ多いわね、物騒な世の中なこと』
大勢の国民が大通りの脇から第三番隊を見送る。
しかし歓迎はされていなかった。
「あんた。また、遠出ですか?」
「ああ、まだ見ぬ煙草を買いにな」
「冗談はよしなさいな、こんな大所帯引き連れて」
関所の監督が、大将に声をかけた。
何度も外に出るものだから、顔を覚えられたようだ。
「無茶はするなよ」
サトルは右手をあげて礼を言うと、そのまま手綱を引いた。
先頭の大将から、およそ500名の隊員が目的地へと向かう。
「よーし、特訓の成果を見せてやるでありますからして!」
「僕ら新米は最前線には出ず、後ろで護衛だよ、護衛」
今日のマカナイはいつにも増して張り切っていた。
これから残酷な戦いが始まろうというのに。
「もちろん承知。しかし少しでも戦況が動けば、すぐさまこの私が前にでて1つ大いに暴れるでありますからして!」
「ハァ、君の好戦的な性格も困ったものだ」
マカナイやササミのいる新米組は、隊列の後方にいた。
大将の護衛と負傷者の手当が主な任務として任されている。
「ハーイ、二人とも元気にしてる?」
「マサミさん。おはようございます」
初陣で気構える新米に気遣うためか、最後尾にいたマサミ少将が声をかけに来てくれた。
胸元の見える黒いワンピースに周囲の野郎の視線がくぎ付けである。
「ササミさん、大丈夫?顔色が悪いわ。お熱あるのかしら?」
彼女は赤くネイルされた5本の指をササミの額にそっとあてる。
野郎からの視線が急に痛々しくなる。
とくに、隣にいる男だ。
「あ、ずるいであります!私にもおでこを!」
彼は赤い軍帽子を取り、丸坊主のおでこをマサミさんにアピールした。
それに続けと、周りの新米の帽子を脱ぎだす。
「あなたたちはダメ。顔色良すぎよ」
「そんな、卑怯でありますからして!!」
「ヒヒン」と、彼女の乗る愛馬が野郎どもをあざ笑った。
真っ白で麗しい馬であり、『ユニコーン』と呼ばれている。
「あなた達も、ササミさんを見習いなさい。これからは大事な任務なの」
「そういえば、今日のターゲットって誰なんでありまして?」
「おい、何度も言ってるだろ。トガッタ族だよ」
派手な刺繍を施した衣装が特徴的な小さな民族、【トガッタ族】。
肌の色や髪の毛、その他外見は我々ニンゲンとなんら違いもない。
問題はある事件だった。
先代の王でありリアル国の創始者、『ヤーダⅠ世』はあらゆる民族を許容した。
その規模が多かれ少なかれ、我々は共に1つ同じ空の下で生活していた。
弱者を救い、誰もが安心した生活を送れるよう尽力した偉大な王である。
歴史の転機は彼の孫、『ヤーダⅡ世』にある。
先代の王の政策から一転、異民族弾圧政策を始めたのだ。
多くの異民族は彼の政策に抗ったが、その全てが虐殺・処刑への道へと進んだ。
結果、我々一族だけの国が出来上がり今に至っている。
【トガッタ族】もまた、この弾圧を食らった一族である。
彼らの我々に対する恨みは、海より深くて山よりも高い。
「最近は反乱が多いですね、少将」
「そうね、それもこれもこれが良くなかったのかもね…」
彼女は胸の谷間から小さな宝石を取り出すと、右手に着けていた黒い手袋にはめ込んだ。
ここにいる隊全員と同じ、紅い宝石である。
「あれこれ言っても今は仕方ないわ。まずはこの戦いに集中しましょ」
「そうですね」
「それに、あのおじさんは心が広い人よ」
「じゃあね」とマサミさんは元の配置に戻った。
黄土色の長髪を揺らす風の先には、立派な背中の大将がいた。
『紅虎』と筆で書かれた白いマントが大きく見える。
「マカナイ、今日は一緒に寝てくれないか?」
「な、なにを。いつからそういう趣味になったのでありまして!?」
「違うわ!ただ、今日の出来事がトラウマで寝れなくなったらって思うと」
これから進む方向の空には、無数の黒雲が。
なにか怪しげな雰囲気を感じずにはいられない。
「わかったでありますよ」
「ありがとう」
「でもな、ササミ」
マカナイは大将の方に熱い視線を送る。
「あの方なら、絶対俺たちを守ってくれるでして。その大きな手で」
「…、ああそうだな」
それぞれの戦いの火ぶたが、刻一刻と迫っていた。