二人からのアピられても難しい
翌日の朝、僕は学校へ行く準備を済ませて家を出ると琴羽と神無月が家の外で立っていたことに驚いた。
「え? 」
「おはよう空くん 」
「空おは〜 」
琴羽と神無月が笑顔で迎える。琴羽は未だしも神無月は僕の家を知らないはずなのだが...
「おはよう。びっくりしたよ。外に出たら二人が居るから。 」
「空くんと一緒に学校に行きたくてさ 」
「琴羽に抜け駆けされないように付いて来たし 」
「そうか。 」
二人の元へ歩むと昨日の帰り道の様に腕にしがみつかれた。流石に学校行く時はヤバイだろと思う。たくさんの生徒に見られるしいじられそうだ。
「流石に行きはやめよう。 」
「ダメだよ空くん。空くんにはドキドキしてもらわないと...」
「そーだしっ。あーしたちのアピールタイムでもあるしっ 」
二人の胸が腕に当たる。クッションのように柔らかい胸は気持ち良い。
そして二人の鼓動も聞こえる。ドキドキしていたのは僕だけではなかったことが分かった。
「僕の負けだよ。」
二人の硬い決意に負けて腕を組んで学校へと向かった。学校が近くなるにつれて生徒の数も増えていき大量の目線を感じた。
それから授業中以外の時間は二人が必ず僕の席にやって来て会話をしていた。話題は基本二人が出す。授業のことや日常のこと僕自身のことについて話すことが多かった。
特に神無月は僕の知らない部分を知って驚いても益々好きになったとか言われて僕の心は常にドキドキしていた。
僕が二人の戦場から離れられるのはトイレの時間しかない。トイレは最高だ。完全に一人の空間に居ることができるからだ。
トイレから戻ると二人は僕の所に寄ってくる。
「少し思ったんだけど二人は友達と話さなくてもいいのか? 」
「わ、私は空くんのことが好きだからっ...一緒に居たいの。 」
「あーしも空が好きだから一緒に居たいし。 」
二人の言葉に全クラスメイトが一斉に僕たちの方を見る。特に男子からの視線は痛かった。
僕は学校での一日が平和に終わるように祈っていた。
昼休みになると屋上に行ったがやはり二人は付いてきた。
「友達と弁当食べなくていいのか? 」
「空くん用に少しお弁当作ってきたから一緒に食べたいなーって 」
「あーしはお弁当は作れてないけど...一緒に食べたいし 」
僕は屋上で弁当を広げて三人で食べた。二人と人生初のあーんをした。昼食の時間でも常にドキドキしていた。
「空くん。お弁当おいしい? 」
「うん。美味しい。」
琴羽のお弁当は頬がトロトロにとろけ落ちるぐらい美味しい。味付けも程よくヘルシーでとても美味しい。
「美味いなー 」
「ちょっ!! 琴羽の方がポイントアップしてる〜。このままじゃ、あーしが負けるっ。」
神無月は負けじとたわわな胸を僕の腕にプレスする。柔らかい胸が中々いい心地だ。
「あーしは胸だったら琴羽に負けないよーっ」
「空くんは下品な女の子は嫌いなんだよ。ねー空くん。」
「僕は...」
神無月は目をウルウルさせて僕を見る。僕はそういう目で見られるのは苦手だ。
僕は黙って神無月を見る。
「うーーー。空は大きなおっぱい好きだよね? 」
嫌いな人の方が少ないだろう。僕は心の中で思った。
「ほら....どう? あーしのおっぱいの方が美味しいお弁当よりも良いでしょ? 」
「おっぱいとお弁当じゃ比べる対象が違うから優劣決められないよ。」
僕の言葉を聞いて神無月は腕からおっぱいを離した。
「あーしだって美味しいお弁当作れるからねっ!! 今から図書室行って料理本借りてくるしっ 」
神無月はダッシュでその場を去った。
僕と琴羽は屋上で二人っきりになっていた。思うように会話が出なく少し気まずいぐらいだったがそんな空気を琴羽が先に壊した。
「空くん。教室に戻ろっか。」
「うん。そうだね。」
僕と琴羽は横に並んで屋上の扉を開けて階段を降りて行く。
「琴羽。お弁当凄く美味しかった。今まで食べたお弁当の中で一番美味しかったよ。」
「空くん。ありがとう。また美味しいお弁当作れるように私も頑張るからねっ 」
琴羽は俺の顔を見ると優しく温かみのある笑顔を見せる。その笑顔は俺の心を簡単に撃ち抜く。
「空くんどうかした? 」
「い、いや、何でもないよ。」
可愛いなんて恥ずかしくて言えそうにもない。
結局この日二人と一緒に居てもどちらが好きか決めることはできなかった。