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いきなり告白されても選べません

放課後の教室

クラスメイトたちは次々と帰っていく。

教室に残ったのは僕と2人の女子だけだった。

女子2人は帰ろうとした僕の目の前に立ち塞がり口を開いた。


「空くん。私ね空くんのことがずっと好きだったの。だから私と付き合ってくださいっ」


「あーしも空が好きだし。それにあーしの方が空のこと大好きだからっ。あーしと付き合ってよ。」


天空寺(てんくうじ) (そら)の人生初の告白は2人からだった。

そして初の告白で一気に2回のカウントになった。

正直頭の中は混乱していた。

僕にとって告白というものは自分からすることはあってもされることなど一生ないと思っていた。

そんな僕が告白されるという全くの予想外の出来事に僕は混乱してずっと黙っていた。


「空くん...どうかな...」

1番初めに告白した幼馴染の天上院(てんじょういん) 琴羽(ことは)が僕の顔を覗く。

琴羽の顔は既に振られるのを覚悟しているかのような強く寂しそうな目をしている。


琴羽とは長い付き合いだ。小中高ずっとクラスも同じだ。最近はそうでもないが昔はよく遊んでいた。僕にとって琴羽は女子の中での親友と思っていたし運命的なぐらい縁がある。


「あーしと琴羽どっち〜?」


2番目に告白してきたこの女子は神無月(かんなづき) 瑠花(るか)

僕と神無月は今までほとんど話したことがなかったが、最近席が近くになったこともあり神無月の方から話しかけてくることがあり会話の回数は増えたが、会話は授業関連しかしたことがない。神無月のようなコミ力の化身は僕みたいな人見知りとは住む世界が違うと思っている。


「空くん。」


「ねぇ〜空〜。」


琴羽は僕の右手を神無月は僕の左手を両手で握り顔を近づけて答えを求める。

授業で難しくて分からない問題を当てられた時以上に僕は緊張していた。


2人から告白されて答えを出さなければいけない。今までのことを考えると琴羽を選ぶがこれから付き合うことを考えると琴羽か神無月か迷いが生じる。

今の僕はすぐ答えを出すことができなかった。

2人が魅力的すぎるのだ。


「ごめん。2人とも僕には魅力的すぎて今には選べれない。優柔不断かもしれない。でも、それだけ2人は魅力的なんだ。」


僕は必死に喋った。

優柔不断な自分を心の中で責めていた。

2人の必死な告白に対して答えが出せないのは情けない話だ。


「空くん。必死に考えてくれたんだね。じゃあ今じゃなくてゆっくり決めてくれてもいいよ。」


「そうだね〜。よ〜し空が決めやすいようにあーしの方が琴羽より良いって思わせてあげるっ 」


「ち、ちょっと待ってよ。私の方が神無月さんより良いって空くんに思わせるんだから。」


目の前で2人の美女が俺を巡って争っている。まるで漫画の主人公なった気分だ。

でもどうしても気になっていたことがあった。何でこんなにも可愛い2人が他にもいる男子ではなく僕なのか。正直顔は平凡だし運動神経も平凡だし特別優しい訳でもない。


「1つ聞きたいんだけどいいか?」


「何?」

2人はにらみ合っていた状態から僕の一声で顔を同時に僕の方に向ける。


「2人が僕を好きになった理由を聞きたい。」


これは何としても聞きたいことだった。僕みたいな平凡すぎる男を好きになる理由が気になって仕方がない。


「じゃあ私が先に言うね。」


「待つし〜。あーしが琴羽より先に言う〜。」


琴羽と神無月はまた顔を合わせて睨み合っていた。どちらも一歩も引かない状態だった。

そこで僕はある提案を2人にした。


「じゃあさジャンケンで決めようそれなら正々堂々だろ?」


「空くんが言うなら。」


「仕方ないよね〜。」

2人は僕の提案に納得してくれた。

そして顔を見合わせてじゃんけんを始めた。

「最初はグーじゃんけんポンっ」


じゃんけんは琴羽が勝利した。

ニコニコして喜ぶ琴羽に対して神無月は唇を噛んで凄く悔しそうな顔をしていた。


「じゃあ私からだね。」

「私が空くんを好きになったきっかけは10年前のお祭りに行って迷子になった私を空くんが一生懸命探してくれたことかな。」


僕はその時の出来事をしっかりと覚えているがあの時から琴羽は今までずっと僕のことが好きだということは全く気づかなかった。


「空くんが私を見つけた時すごく嬉しかったの。私の手を握って家まで送ってくれて嬉しかった。あの時の空くんの温くて力強い手...今でも覚えてる...」


「そんなに前から好きだったのに何で今告白?」

神無月が琴羽に聞いた。


琴羽はモジモジしていた。

そんな琴羽を僕と神無月はじっと見ていた。

頬を赤く染めた琴羽がまた可愛い。

しばらくして琴羽は再び喋り始めた。


「それは....ずっと告白する勇気がなくて一歩踏み出せなかったの。でも最近、神無月さんの空くんを見る目が変わってることに気づいたの。私がずっと空くんを見ていると視界に神無月さんが入ることに気がついて...よく見ると空くんを見る目が女の目をしていたの!」


「えぇ〜琴羽あーしのこと見てたんだぁ〜ちょっと恥ずかしいし。」


「それで私思ったんだっ‼︎ 神無月さんが空くんに告白する前に告白しよって」


「で同じタイミングになったんだね。」

僕は納得した。でも、まさか琴羽がずっと一途に思ってくれていたことは凄く嬉しかった。

心がキュンとした。


「あーしの理由言っていい?」


神無月が僕の顔にグイグイ近づいてくる。そして胸を身体に押し付けてくる。


「か、神無月さん。流石に近すぎるって。」


「気にしちゃあダメだし。今はあーしのアピールタイムでもあるんだから。」

神無月と僕の唇が少し動いたら触れそうなぐらい近くなる。吐息が鼻にかかりドキドキする。


「あはっ。空の胸チョードキドキしてるし〜。 」


「で、理由は何なんだよ。」


「あっそーだった。えーっとね。空って結構頭いいじゃん?インテリ系って奴。」


「そうでもないけどな。 」


「空はいつもクラスの中で一番勉強できるしみんなが答えられない問題もいつも答えるし...空はあーしが持っていない物を持ってるからそこが魅力的だなって思って...だんだん惹かれちゃった 」


僕は勉強が出来ることで人に惚れられるとは思っていなかったので不思議な気持ちだった。


「ねぇ空くん今日遅いからそろそろ帰ろうよ。 」


琴羽が僕に提案する。僕たちの高校では放課後に大した用もなく教室に残り続けると先生にバレた時にうるさく言われるのだ。


「そうだな。帰ろうか。 」


「空。腕組んで帰ろ〜 」


神無月は僕の腕にしがみつく。

それを見た琴羽も対抗するように逆の腕にしがみつく。


「神無月さんがするなら私もするから。 」


二人が僕の腕にしがみつきそのままそれぞれの家の分かれ道までその状態が続いた。


家に帰った後、僕は今日のことを考えていた。琴羽と神無月が僕のことを好きな理由は分かった。

しかし今は決められない。いつ決められるかも分からない。

僕は二人が待ってくれる猶予の中で決めたいと思った。

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