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異世界でチート武器と言えば銃だよね

 

 構想中に寝落ちはしたものの、構想自体は覚えていたので再度色々と考えて試行錯誤……途中の宿屋でやりました。


 題して、ライフル型の魔杖を作ってみよう。


 前世で見た、とあるアニメの主題歌が空耳のように聞こえたんだけど、アレは科学らしいがこれは魔法だからなぁ。

 銅貨を何枚か潰して針金を作成……金に余裕があるなら銀貨でやりたいところだけど、さすがに試作品にはもったいないからな。

これは土の才覚と火の才覚を活用してやれたけど、これって鍛治魔法とは違うのかな……熟練したら剣も作れそうだけど。


 それはともかく、魔石は以前拵えたのでそれを使った。


 家の奴隷にされたら生涯、これを作らされる為に軟禁されるらしいが、どういう訳か追い出される方向に話が進んだので、そんな目に遭わずに済んだ。

 まあなぁ、魔力が家の規定に満たないのに、魔力を大量に使う魔石作成とか、やれるはずがないからそもそも候補に上がらなかった可能性もあるが、廃嫡された存在とかオレでも追い出したい相手だし、そうなるのも当然と考えるだろうから、家の奴隷のコースの確率は元から少なかったけど、貧乏がもっと酷くて親が冷酷だと、そうなっていた可能性も無きにしもあらずだったろう。


 その点は助かったな。


 それでも魔石は魔杖の材料にもなるので製法は師匠が教えてくれて、リンゴぐらいの大きさの水晶球に日々魔力を流し込んで拵えたんだ。

 どうやら魔力が煮詰まると言うか、濃縮されていくと水晶を変化させるみたいで、あたかも星の終焉のように縮んでいくんだ。

 そうしてビリヤードの球ぐらいになると完成で、そうなった魔石はそれなりの価格で売買されているとか。

 ちなみに魔物の体内にあるのも魔石だけど、あれは厳密には獣魔石じゅうませきと呼ぶのだそうだ。

 今回はこれをエネルギー源にしての、コイルガンもどきを考えてみた。


 基本は木製だけど、要所要所に金属を配してある。


 ライフル型の魔杖の魔石は銃把のすぐ上に設置してあり、銃身は木の棒に銅の針金を巻いてにかわで固めてから抜いて後、内側にもにかわを流して固定した代物で、それが垂れないように下部に木の角棒を配して、下側の2角を面取りをして丸く削っておく。

 後はコイルと木の角棒もにかわで固定して、全体の形を調整する。


雷魔法でコイルガンのようにならないかと作成した代物だが、どうにも折れた杖を角棒で補強してあるようにしか見えないぞ。

 まあ、大体の形があれば、後はイメージで補正すれば大抵の魔法は発動するので、その補助の為の小道具と言ったところだ。


 馬車の休憩の時に遠くの木を狙って撃ってみた。


 イメージ作りの一環で、先日思い出したアニメのイントロを心に描く……デンデンデンドロ、デンデンデンドロ、デンデンデンドロ……おお、いけそう、よし。


 キュォン……という変な音は出たものの、かなり遠くの木の近くまでは飛んだ。


 命中率は無いに等しいな。


 イメージで誘導するしかないようだ。


「それは武器かね」


 さすがは商人、目ざといな。


「この鳥脅しが何か」


「鳥を脅す? どうしてだね」


 頑張って誤魔化しました。


 武器と思われないように、あくまでも生活雑貨のアイテムだと思わせ、何とかそれに成功したはずなのに、その権利を売ってくれなどと言われる始末。


 興味から拵えてみたけど、銃の形の杖とか怪しまれるだけだ。

 この世界に同類が到来したのなら、似たような物を拵えた可能性もあるし、それを知れば国が黙ってはいないだろう。

 良くて専属、悪くて飼い殺し、どちらにしても自由な行動は出来なくなり、特に他国への旅は不可能になるだろう。


 今回は単なる興味のようだったので、音が出れば魔物にも効果があるんじゃないかって話で、ハシブトガラスによく似た魔物を追い払う目的で拵えたと告げた。


 そうしたところが、その言い訳に興味を持ったのか、それを売る権利が欲しいと言われてしまう。

 確かに畑ではよく見る魔物であり、追い払ったり駆除したりする依頼書はギルドで見た事もある。

 

 確かマクロウって名だったけど、魔のクロウ(カラス)って意味じゃないよな。


 それでもその構想に興味を持ったのか、そのアイディアが欲しいと言われ、形がヤバいから渋っていたところ、どうやら他の商人からのアプローチがあると曲解したのか、オレが商品にして売らない事を条件に、金貨10枚というやたら高い額での契約術式が描かれた羊皮紙を使った本格的な契約になった。


 仕方が無いから鳥が驚く音が出る仕組みを即興で考えてつらつらと紙に書いて渡す羽目になったけど、それじゃ音は出ても攻撃には一切使えないからそのつもりで。


 うっかり他人がいる所で試射したのは失敗だったな。


 しまったな、こんな事ならハンディー掃除機みたいな形にしとけば良かったよ。

 これをライフルと呼んでしまえば世のミリオタ連中から猛抗議を受けそうなので、今後形を整えていけば別物として商品に出来る可能性は高いけどな。

 それにしても、試作品を寄越せと言われなくて良かったな。


 これを渡せと言うなら取引は無しにしたところだ。


 ちなみに、オレが売ったのはマクロウを追い払う為の、音の出る魔導具の売買権利だからな。

 後に世に出るかも知れない武器とはコンセプトからして全く異なる品なので、権利の侵害と言われても対応はしないからな。


 前世で畑の鳥脅しの仕組みとか、興味のままに調べておいて良かったな。

 もっとも、あれも畑に差して使えばそれなりの需要になるとは思うので、契約金の元も巧くいけば取れる可能性もある。

 だけどモラルが低い世界なので、領主辺りの貴族に売り込んで、彼らの畑とかじゃないと盗まれるかもな。


 ◇


 目に毒なので拡張カバンの中に入れておいた。


 他の商人の目に止まったらまたややこしい事になる。

 確かに商品にして売らないという契約だけなので、二股は禁止されてない。

 だから何人もの商人との契約も別に違反じゃないだろうが、良識を疑われるのは確かだろう。

 だけどオレは商人じゃないので、そんな商人の良識などは知らないのが普通だ。


 と、開き直ればいくらでも商売のネタになるだろうが、ただでさえ怪しい形の魔杖なのに、そこまで無理に売るつもりはない。

 もっとも、形を単に似せただけでは同じ効果にはならないのが安心だけど、かつて同類が似たような物を拵えていた時に、身辺がヤバくなるだけだ。


 オレが初なら問題無いが。


 これからは構想のみに留め、作るのは師匠の家に戻ってからだな。

 拘るのなら照門と照星は付けたいし、照準だって調整したい。

 となると人目に付かない場所での製作になるだろうから、師匠の家でやるしかない。


 やっぱり前世では銃器ご法度な環境だったし、憧れみたいなのはあるんだよ。


 人殺しの武器に憧れとか言うと不謹慎と言われそうだけど、この世界じゃ魔法で人が死ぬんだし、それが使える時点で人殺しの武器を持っているのと同じだ。


 だから今更なんだよ。


 ◇


「ただいま~……あれ、居ないの? 」


 おっかしいな、ゴブリンの間引きでも行ってるのかな。

 まあいいや、どうせだからライフル魔杖の改造でもしているかな。

 さすがに今の形には不満があるので、もうちょっとライフルと呼んでも差し支えないぐらいに似せようと試行錯誤をする。

 土から粘土を生成してコイルと台座の隙間を埋めて滑らかな形状を構成して、試作品臭い外見の修正をすると共に、照門と照星も付けてそれを微調整可能にしておいた。


 さて、いよいよ照準の調整だな。


 キュォン……。


 何処からこの音が出ているんだろう。


 とりあえず調整が終わってから考えようと、撃ちながらの微調整の果てに何とか狙った場所に当たるようになる。

 どうやら音はビールの栓を抜いた時に出る音と同じく、弾丸がコイルを抜ける時に出るみたいだ。


 となると射出元から空気が入れば音は小さくなると思い、少し削ってみると確かに音は小さくなりはしたが、なくなりはしないようだ。


 これ以上音を完全に消そうとすると威力が低下しそうなので諦めて、師匠が戻るまでそこいらを撃ちまくっていたところ、妙なうなり声のようなものが聞こえたと思ったら……。


 ドオオオン……。


 うおお、何だ何だ。


 慌てて音のするほうに走っていくと、師匠が何かと戦っている。

 あれは熊か……いや、魔獣の部類だとすると、ここら辺りには出ないタイプの代物だろう。

 何だかにらみ合いみたいになっているようなので、横から茶々を入れてやろうな。


 それで攻撃の切欠になるのなら……。


 フルオート、いっけぇぇ……キュン、キュン、キュン、キュン、キュン、キュン、キュン……あれ、倒れたぞ。


「何じゃそれは」


 新構想の魔杖。


「また変な物を拵えたようじゃが、とんでもない威力じゃの」


 あれ、何て魔物?


「火炎熊じゃ。わしがあらかた弱らせたとはいえ、倒してしまうとはの」


 そこでこれが出番……拡張カバン参上。


「おお、遂に手に入れたかの」


 大は売り切れだった。


「うむ。それはそうと、何時戻ったのじゃ」


 さっきだよ。留守だったからこれで遊んでた。


「実はの、蜂蜜漬けが切れたのじゃ。じゃから獲物を狩りに出たところが、このような化け物に出くわしての」


 これを漬けてみようか?


「そうじゃの。あのような臭くて硬くて不味い肉が美味くなるぐらいじゃ。これなれば極上になるやも知れぬの」


 それから旅の疲れも忘れたように、2人して解体に取り掛かる。

 オレは主に肉の担当で、切っては樽に漬け込んでいく。

 師匠はオリジナル魔法っぽいのを行使して、剥いだ皮をなめしていく。


 あれもそのうち教えてもらおうっと。

 

魔法版鳥脅し


周囲の魔素を活用して、微量の魔素を集めて規定量になったら火の魔法で爆発させて音を出す仕組み。

簡単な構造にして原価を下げた、薄利多売も可能な生活魔導具の一種。

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